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湧き出した魔境 5

 最初に案内して貰った家はテーベイさんの家の近くにあるそこそこの大きさの家で寝泊まりするだけには広すぎたのでパスし、次の家も少し離れているだけで似たような家だったのでパスし歩き回るのを避ける為ファナに問いかけた。

「ファナ、もう少し小さめの家が候補の中にあるか?」

「もしかして大きすぎたから今の2軒はパスした?」

「ああ、俺とティアが眠れるだけの広さがあれば十分なんだ。昼は魔境を探索するつもりだし、休む時はダレンの街に戻るつもりだから。」

「そう、確か門の近くにあるのが一番小さかったはず、そこに行ってみる?」

「頼むよ。」

 頷くファナに続いて歩いて行った先にあったのは門の傍にあるこじんまりした家で、中に入ってみると少し汚れていたが丁度良い大きさだった。

「ここだけど、どう?」

「丁度良い大きさだし、門も近いからここを貸して貰う事にするよ、ファナ。」

「なら早速掃除をする。」

「お手伝いします。ファナ。」

 

 二人が向かい合って気合を入れお互いに自分の掃除道具を出そうとしているがここは水を差させて貰おう。

「二人ともちょっと待った。夕方までまだ時間があるからお互いの力量の確認に里の周りで魔物を狩ろう。掃除は俺が魔術で灯りを作るから夜にして欲しい。」

 二人とも残念そうに俺を見上げてくるがそれでも頷いてくれる。

「確認するけど、ファナは覚醒石に触ったばかりなんだよね?」

「その通り、1週間くらい前に里の周りが急に魔境化したから、最低限の護身用に戦士役の人に護衛をして貰ってまだの子皆でダレンの街に行って触ってきた。」

「なるほど、じゃあ、里の外ではこうしよう、移動時はファナ、俺、ティアの順に隊列を組んで移動する。それで魔物を見付けたら俺とファナの順番を入れ替えてファナにはティアの邪魔にならないように傍で護衛役をして貰う。取り敢えず今日はこのやり方を試してみる。二人ともいいね。」

 頷いてくれる二人に頷き返して借りると決めた借家を出る。


 門衛に声を掛けて里を出ると確認した隊列を組んで魔物狩りを始めた。

 この前も見せて貰ったがファナの感知能力は素晴らしくスペルディアにさえ先手を取られる事は無く、擬態しているウォークウッドさえ簡単に発見してくれた。

 ファナは戦闘が始まっても暴走する事無くこちらの頼み通りにティアの傍で護衛役に徹してくれたのでやり易かった。

 夕方までに3~4個の魔物の群れと遭遇出来れば十分と思っていたが里周辺の魔物の密度が思ったよりも高く、結局里へ戻るまでに10程の魔物の群れと連戦をする事になった。

 ほとんどがキラーアントの群れで他にスペルディアにチャージボアとウォークウッドの群れと当たり、オークの群れとも当たった時に僅かな違和感がした。

 他の魔物達は最後の1匹になっても戦闘をやめなかったが、オークだけが6匹の群れが2匹になった時点で武器まで捨てて逃げ出した。

 勿論逃がす事無く残りの2匹も仕留めたが、ミラルテ近郊の魔境でオークと戦った時は逃げる事など一度もなかったのでファナ達を助けた時の事と併せて酷く印象に残った。


 空が大分赤色に染まった所で狩り打ち切って借家に戻り、生活魔術で家の中を明るくしティアとファナが掃除を始めたそうなのでさっさと話を済ませておく事にした。

「二人ともお疲れ様。早速だけど今日試してみた移動時と戦闘時の隊形、俺は問題ないと感じたけど二人は如何だった?」

「この役回りなら今の私でも十分役に立てそう。問題ない。」

「ファナの索敵は凄いと思いましたし、戦闘時も近くで警戒してくれていたので精霊術と射撃に集中できました。私も問題ありません。」

 二人とも迷いなくすぐにそう答えてくれた。

「みんな問題ないようだから、明日からも魔境探索時は今日の隊形で行こう。ついでにファナに聞いておきたいんだけど、索敵をしながら魔法薬用の薬草を探す事って出来る?」

「全然問題ない。魔法薬用の薬草は独特の匂いがするからすぐ分かる。だから索敵への負荷になんてならない。索敵も薬草探しも両方きちんと出来る。」

「分かった。そういう事なら明日からは薬草探しも索敵と並列してやってくれ。後はファナへの分け前だけど、何か希望がある?」

「倒した魔物の素材を分けてくれるの?」

「勿論、俺達が雇ってるんだから報酬を渡さないと、さすがに3分の1は渡せないけどその代りファナの希望をなるべく優先するから。」

「じゃあ、肉を分けてくれる?」

「肉ってオークとかが落とす肉の事?」

 ファナはかなり熱意の籠った眼差しで俺を見上げて頷いてきた。

「ならファナには魔物の落とす肉を優先して渡す事にするし、希望が変わったらいつでも言って欲しい検討するから、ここですぐに魔物の肉を渡そうか?」

「それは待って欲しい。ここじゃなくて肉を保存食に加工している人がいるから、そこで肉を出して欲しい。」

「なるほど、ティア、ファナと保存食を作っている人の所に行って来るから、好きにしていていいよ。」

「では掃除をして、夕食の準備を進めておきますね。」

 そう言って早速自分の道具をポーチから取り出して掃除を始めるティアを残して、ファナと目的の人の家に向かう。

 家について中の人を呼び出してみるとすぐに対応してくれ、ファナの分け前分の魔物の肉を渡すと過剰なほどに喜んで感謝してくれる。

 そのおかげで周囲の人も集まってしまいその人達からも感謝される事になってしまった。

 その人達への対応に思いの外時間が掛かってしまい解放して貰った時にはもう暗くなっていた。

 

 借家に戻るとティアが掃除を終え夕食の準備も済ませていてくれた。

「遅くなってごめん。ティア。」

「謝る必要なんてありませんよ。セイジ様。この里の人達が喜ぶ声がここまで聞こえていましたから、朝買った物を温め直しただけですが夕食の用意をしたのでお召し上がり下さい。」

「ありがと、ティア、じゃあ三人一緒に夕食にしよう。」

 ティアの用意してくれた夕食は俺とティアには十分な量だったがファナには量的に少し物足りなかったようで追加を出してやった。

 夕食を片付けた後は追加で掃除をしようとする二人を宥めて俺が生活魔術で清浄化する事で我慢して貰いそのまま休む事にした。

 魔道具と法術で寝室へ二重に結界を展開した所でファナが自分の荷物の中から毛布を取り出してきた。

「ファナ、もしかして自分の家に帰らず俺達と一緒に寝るつもりか?」

「?ちゃんと言ったはず、私が無用になるまで一緒に行動すると。」

「俺は男なんだがファナは気にしないのか?」

「その辺りは大丈夫。子供の頃から大人の狩りを見せて貰う為に遠出について行って、よく男子達とも一つのテントで雑魚寝をしていた。それに寝室はこの部屋しかない。」

「ファナが大丈夫っていうんなら一緒に寝ようか、お休み、ティア、ファナ、」

「お休みなさいませ、セイジ様。」

「二人ともお休み。」

 ティアと一緒に大きめの毛布を被って横になると、ファナも自分の毛布を被って横になった。

 管理を面倒に思い大きな家を借りなかった事を多少後悔しながらティアを抱き枕に眠りに落ちた。


お読み頂き有難う御座います。

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