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湧き出した魔境 4

 ティアに起こされて目を覚まし何時ものように身嗜みを整えて、みんなで朝食を取った後席を立とうとしたらジャンナさんに話掛けられた。

「セイジ、昨日夕食後に言ってきた魔境探索の為に寝泊まりする事にした獣人の里の長はテーベイって名前であってるかい?」

「はい、そう名乗っていました。」

「そうかい、なら装備を身に付けたらもう一度店の方に顔を出しておくれ、その獣人の里に持って行ってテーベイに渡してほしい魔法薬と手紙があるからね。」

「使いをするのは構いませんがあの里との関係を教えて貰えますか?」

「あの里からはねギルドとは別口で魔法薬の素材になる薬草を買ってたんだよ。魔境が急に発生したこの状況だからね、ゼスの連中の注文が無くなって宙に浮いた在庫を差し入れしてやろうと思ってね。ま、ついでに今度戻って来るとき里に薬草が貯まってたらそれを持ち帰って欲しいんだけどね。ああ勿論代金を払うしこの辺りの事は手紙に書いといたからセイジが説明する必要は無いよ。」

「なるほど、そういう事ですか。薬草を持ち帰って来る件も覚えておきます。」

「頼んだよ、それともう一つ手紙にはあんた達が亜空間ポーチを持ってる討伐者であたし達と懇意にしているって書いといたから街から里への荷の輸送を頼まれたら引き受けてやっておくれ。送る荷を集めるのはあたし達が引き受けるからさ。」

「向こうが依頼してきたら引き受ける事にします。他に付け加える事がなかったら装備を身に着けてこようと思うんですけど?」

「そうしておくれ、その間に魔法薬の準備を終わらせておくからね。」

 ジャンナさんに頷き返し装備を身に着けて戻ってくると作業場に通され用意されていた魔法薬と手紙を受け取って店を出た。


 大通りに出るとあちこちの屋台で俺とティアの食事を1週間分ほど買い込み、保存食も2週間分程買い込んでダレンの街を出る。

 街から出た後は門の守衛から見えなくなるまで歩きもう一度獣人の里に転移出来ないか試してみるがまだ無理そうなのでこのまま歩いて向かう事にした。

 魔眼で里の位置を確認しそちらに向かって行くと森の中に獣道のような物を見付ける。

 この獣道は里の方に続いているようなので恐らく獣人達が街と里との行き来に使っている道だろうから俺達も使わせて貰う事にした。

 森を突っ切るより格段に歩き易くなって歩くペースも上がったが魔物の群れとの戦闘も在ったりしたので途中昼食休憩を一回挟み暫くすると獣人の里に着いた。


 近づいて行く時、門を守っていた獣人の門衛に若干警戒されたが、カードを見せて昨日子供を助けた討伐者だと告げると快く門を開けてくれ門衛の一人がテーベイさんの所へ案内してくれる事になった。

 門を潜ると見える範囲だけでも3〜40件の木造の家が建っていて、前を歩く門衛について行くと里の中心付近にある他より少し大きな家の扉を叩いた。

 中から獣人の女性が出て来て一言二言言葉を交わすと門衛は仕事に戻ると言って門の方に歩いて行き俺達はこの女性に家の中に招いて貰った。

 家の中に入るとこちらへと言う女性の後を付いて行きそのまま部屋に通されると中にはテーベイさんがいた。

 テーベイさんは案内してくれた女性に人を呼びに行かせ絨毯の床に座るよう促されたのでテーベイさんの向かい合って座ると徐に頭を下げてきた。

「改めて礼を言わせて貰う。里の者を助けてくれて本当に感謝する。昨日の要望についても貸し出してよい空き家をいつでも選んでもらえるし、希望していた案内役も今呼びに行かせたからすぐに顔を出すだろう。」

「要望に応えて頂き改めて有難う御座います。実は今の話とは別にこの里に届けて欲しいと預かっている物が在ります。お受け取りください。」

 亜空間ポーチからジャンナさんの手紙を取り出して手渡し、テーベイさんが読んでいる内に魔法薬も取り出していくと全て出し終わった所でテーベイさんも手紙を読み終えたようだ。

「あなた達はジャンナ殿の知り合いでもあったのだな、この魔法薬の件、礼状を認めて渡すのでジャンナ殿に届けて欲しいし、あなた達の口からも礼を伝えて欲しい。」

「分かりました。ダレンの街に戻った時に必ず届けます。」

「有り難い、ではこの手紙に書いてある薬草買取りの件だが、こちらとしても有り難い話だ。しかもあなた達が運んでくれるというなら人手不足の里にとってなおさら有り難い。ダレンの街に一旦戻るのは何時になるだろうか?」

「3〜4日後位で考えています。」

「ならそれまでの間に薬草の準備を終わらせておくので取りに来て欲しい。もう一つ手紙に書いてあったあなた達に里へ物資を運んで貰ったら如何かという提案についてもその時に回答出来るよう今日明日中に里の意見を纏めておこう。」

「分かりました。」

 そう言う俺の言葉に少し被るように扉が叩かれテーベイさんが入室を許可するとファナ嬢が部屋に入って来て床に座って深々と頭を下げた。

「父様、お呼びと伺い参りました。」

「良く来たファナ、もうご存知だろうが私の娘の一人でファナだ。あなた方に預ける案内役はこの子になる。身贔屓に聞こえるかもしれないが里では一番耳と鼻が利き目も悪くない。周辺が魔境化する前は里の外での薬草採取にも参加していて周囲の地理に明るいし、先日ダレンの街で覚醒石にも触らせたので最低自分で逃げれる。この子で構わないだろうか?」

 人手不足と言っていたので男手を割く訳にはいかなかったのだろうし、昨日見た感じでは十分な索敵能力を持っていそうなので文句をつける必要は無いだろう。

「歓迎させて貰います。俺達がこの魔境に慣れるかこの魔境が消えるまで身柄をお預かりします。」

「よろしく頼む。」

「では寝泊まりする空き家を決めようと思うので、これで失礼します。今度はダレンの街に戻る前に顔を出します。」

「貸し出せる空家の事はファナに教えてあるので、好きな家を選んでくれ。薬草の件と物資輸送の件は今度あなた方が訪れるまでに必ず準備を終え、意見を纏めておく。では武運を祈る。」

「有難う御座います。」

 もう一度頭を下げるとテーベイさんも頷き返してくれ部屋を出るとファナも俺達について部屋を出て来た。

「これからはあなた達がもう用は無いと言うまで一緒に行動する。だから空き家を案内する前に装備と準備した物を取ってきたい。少し待ってて欲しい。」

「分かった。この家を出て外で待ってるから。」

「急いで準備してくる。」

 そう言って背を向けて走って行くファナ嬢と別れて家を出て暫く待っていると、背中に両手持ちの大剣を担ぎ、革鎧を身に着け背負い袋を背負ったファナ嬢が出て来た。

「待たせてしまってごめんなさい。」

「気にしなくていいよ。ファナさん。」

「私の事は単にファナと呼んでくれればいい。」

「じゃあ、俺の事も単にセイジと呼んでくれ。ティアは如何する?」

「では私もティアと呼んでください、ファナ。」

「分かった。セイジにティア、一番近い空き家に案内するから付いて来て。」

 先導するように歩き出したファナに続いてテーベイさんの家を後にした。


お読み頂き有難う御座います。

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