湧き出した魔境 3
逃げたオークソルジャーの魔核石とブロック肉を回収して獣人たちの所に戻ってくるとティアもこっちに来て獣人たちの様子を確認してくれていたのでそちらは任せて素材を回収していく。
もう一体のオークソルジャーは魔核石の他に牙を残していて他のオークは魔核石とブロック肉だけだった。
素材を回収し終わるとティアの方も確認が終わったようだ。
「容態の確認終わりました。全員気絶していて骨折した者が数名いますが後は打撲が殆どで命に別状はありません。」
「そっか、なら怪我を治癒法術で治療して気が付くまで待とう。俺達二人じゃこの人数を運べないからな。終わったら昼食でもして時間を潰そう。」
ティアが頷いてくれたので早速作業に掛かると他の子が青黒い毛をしている中で一人だけ透ける様な白い毛をしていてティアやアリア嬢並の綺麗な子がいて思わず鑑定した。
ファナ Lv2
クラス 獣戦士
筋力 13
体力 13
知性 4
精神 4
敏捷 13
感性 13
アビリティ
獣王の系譜
幻獣の女王
戦技を統べる者
スキル
2個
思わず見とれたが治癒法術での治療を続けていき終わっても目覚める者はいなかったのでそのまま昼食を取る事にした。
ポーチから調理道具と保存食を出しティアに手を加えて貰っていると食事の匂いに反応してかさっきの白毛の子が顔を上げ俺達を見た後、周りにいる仲間を見ると守るように俺達に対して構えた。
「あなた達、誰?」
「気が付いてよかった。俺はセイジ。こっちはティア。近くを通りかかったらオークに運ばれてる君達を見付けて助けたんだけど、俺達二人でじゃ運べなくてな、それで気が付くまで待ってたんだ。」
「助けたというなら他の子たちはどこ?」
「他の子?オークから助けたのは君達だけだけど?」
「そんなはずない。他に4人いた筈。」
「嘘は言ってない。助けたのは君達だけで運んでいたオークも全滅させてる。本当に君達以外いなかったんだ。」
「なら探しに行く。」
「待った、君が一人で探しに行ってもこの魔境の中じゃ魔物の餌食になるか、逃げまわる事しか出来ないだろうから、やめておいた方が良い。」
「それでも仲間は見捨てられない。」
「なら他の子たちの気が付くまで待て、全員が意識を取り戻して動けるようになってからみんなで探しに行こう。俺達も手を貸してやるから。」
「恐らくあなた達は討伐者、報酬なんて払えないけどいいの?」
「報酬だけを目的に討伐者をしてたなら君たちの事も助けていない。どうしても気になるというなら君達への貸しにしておく。」
「分かった。待つ事にする。・・・そういえば助けて貰ったのに名乗りもせず礼も言ってなかった。私はファナ、助けてくれて本当に有難う。」
「こっちが好きでやった事だから礼はいいよ。丁度昼飯にしようと思ってたんだ、君も腹が減ってるだろう、分けるから一緒に食べよう。」
遠慮がちにファナ嬢は頷いてこっちに近づいてきて、ティアの隣に座る。
ティアが用意いてくれた昼食を一緒に食べていると他の子たちも起き出して来たので手持ちも保存食を全員に振舞ってやった。
まだ食べ足りなそうにしている子もいたが全員動けるようになったので出発する事にした。
どうやってはぐれた仲間を探すつもりだったかファナ嬢たちに聞いてみると、自分たちの匂いを辿って襲われた場所まで戻りそこから仲間の匂いを辿って探すつもりだというので任せる事にした。
特に鼻が利くというファナ嬢を含んだ三人に先導を頼んで進みながらどうして攫われる事になったのかその経緯を訪ねてみる。
最初は渋っていたがそれでも話してくれたことを要約すると、初めは突然魔境に囲まれ生活が厳しくなった自分たちの里を少しでも助けようと若い連中でパーティーを組み里の周辺で魔物狩りをしていたらしい。
主に少数のキラーアントの群れを相手にしていたらしいがその狩りが上手く行き過ぎてしまい一部の者が調子に乗ってオークの群れに手を出してしまったらしい。
そのオークの群れにはかなり強い個体がいて、その個体相手に苦戦している内に他のオークに包囲されてしまい殴られたところで記憶が途切れていると話してくれた。
話を聞きながら魔物が近寄って来たなら俺とティアで対処しながら暫く進んで行くと激しく争った跡が残る場所に出る。
どうやら此処が襲われた場所のようで草がなぎ倒され周囲の木の幹に傷が残りあちこちに血の跡が残っているが幸い死体は何処にも無かった。
死体が無かった事でほっとしているとファナ達はすぐに仲間達の匂いが続いて行く方を割り出したのでそちらに向かって進んで行く。
先程と同じように進んで行くと気配探知スキルで前方に魔物以外の気配を捉えたので魔眼で確認すると武装した10人ほどの獣人が此方に向かってくる。
先導をしてくれていたファナ達も気付いたようで後ろの子達にも声を掛けて一斉に走り出した。
俺とティアも歩く速さを上げてついて行くと合流した獣人たちは喜びを分かち合っていたが、後から来た俺とティアの姿を見た武装した獣人達が一斉に構えを取る。
どうやら疑われたようだがファナ達が仲裁に入ってくれた。
「この二人が私達を助けてくれた。だから武器を納めて。」
「間違いないのか?」
「そう言っている。早くして。」
「分かった。そちらの方々勘違いをして武器を向けてしまったことを詫びる。それから里の者を助けてくれた事深く感謝する。」
武装した獣人達が構えを解いて皆で頭を下げてきた。
「その子達にも言いましたけれど礼はいいですよ、それよりこの子達の他にまだ仲間が4人いるって聞いているんですけど何かご存知ですか?」
「その4人の事なら心配ない。重傷を負ってはいるが命に別状はなく、里まで逃げ帰って来たので彼等から襲撃の事を聞いて我々がこの子達を探しに来たんだ。」
「なるほど、じゃあ後の事はお任せします。俺達はこれで失礼しますね。」
「待ってくれ。里の者を助けて貰っておいて礼もしないなど我らの矜持が廃る、せめて里まで同行してくれないか。」
その言葉に続いて獣人達が全員頭を下げるので断りきれず里について行く事にした。
武装した獣人達に前後を挟まれる形で隊列を組み暫く進んで行くと木の塀で囲まれた集落が見えてくる。
隊列を崩さず門に近づいて行くと門番達は喜んで門を開け集落の中に入ることが出来て、門の周辺に集まって来ていた人垣に向かって助けた子達が駆け寄って行った。
武装している獣人の一人も人垣に中に入ると一人の壮年の獣人を連れて俺達の所へ来た。
「私はこの里の長をしているテーベイという者だ。里の者を救ってくれた事、感謝する。少額ではあるが謝礼を払わせて貰おう、付いて来て欲しい。」
金を貰えるのは有難いが、それよりも魔境の奥を調べる為ここに寝泊まりさせて貰えないかと、索敵に便利そうなので鼻の利く子を貸して貰えないかダメもとで頼んでみよう。
「お金はいいので、要望を聞いて貰えませんか?」
「分かった、取り敢えず言ってみてくれ。」
「この里で寝泊まりする許可とこの辺りの地理に明るくて鼻の利く人を貸して貰えませんか?ご存知かもしれませんがダレンのギルドから瘴気泉を探す依頼が出ていて街からよりもこの里から探した方が効率が良さそうですし、この辺に来るのは初めてなんで索敵役も兼ねてさっき言った人を紹介して欲しいんです。」
「ふむ、それくらいならば問題ない。寝泊りについては空き家を使ってくれればいいし、君たちの手助けについては里の者に声を掛けてみよう。では空き家を何軒か案内させよう。」
「ちょっと待って下さい。すぐにこちらの要望を聞いて頂いて有難いんですが、今日は一旦ダレンの街へすぐに戻ります。完全に日が落ちる前に戻りたいし保存食の手持ちが心許ないんで補充したいんですよ。魔境に囲まれた現状じゃこの里にとって食料は貴重でしょう。それをよそ者の俺達が消費するのは心苦しいですから。明日又来るんでその時に俺達が借りていい家を教えてください。」
「配慮に感謝する。明日訪ねて来るまでには手助けをする者を決めておこう。ダレンまでの道は分かるだろうか?」
「ここまでの道を覚えているのでそれを逆にたどって帰りますよ。ではまた明日。」
「また明日会おう。」
テーベイさんと握手を交わして周りの獣人達に感謝されて里を出た。
里から離れながら魔眼を使ってダレンの街との位置確認を済ませ、門番からの視線が切れた所で転移法術を試してみる。
周りの瘴気が濃い所には今の俺の技量じゃ転移できないので獣人の里へは無理そうだが魔核石に力を込めた目印を置いて来たアルバン魔法薬店の裏庭ならいけそうなのでそのまま転移した。
転移は成功したが裏庭で水やりをしていたキャミーちゃんを驚かせてしまったようでかなり拗ねられてしまう。
何とか宥めてギルドに向かい今日得た素材を魔道具の使用分の魔核石を残して売り払った後戻るとキャミーちゃんは何時もどうり相手をしてくれた。
それからは何時ものようにみんなで食事をして終わった後獣人の里に寝泊まりして魔境を探索しギルドに素材を売る時だけ戻ってくる事を伝えた。
離れの戻りティアと風呂に入った後、何時ものように眠った。
お読み頂き有難う御座います。




