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湧き出した魔境 1

 ミラルテの街を出て6日は大した問題なく過ぎた。

 移動中ゴブリンの群れが2度程襲ってきたが弓と魔術であっさり方が付いて、野営中は特に何も起きる事は無く6日目の夜が明けた。

 野営の片付けをして荷物を俺のポーチに仕舞いティアと馬に二人乗りをして商隊の出発を待つ。

 商人達の馬車が隊列を組み護衛のリーダー役の討伐者の号令で商隊が動き出し、後半日退屈な時間を我慢すれば依頼が終わると思っていたら事態が急変した。

 

 商隊が動き出して暫くすると空気の感じが魔境のものに代わり、全く感じなかった魔物達の気配が今は感じ取れる範囲の中に10以上の魔物の群れがいるようだ。

 商人の人達はこの変化が感じ取れないようだが、護衛の討伐者達は敏感に感じ取れたようでリーダー役の討伐者が全体停止の号令をかけ、商隊の主だった者達に集合を命じているので馬を下りティアに任せてリーダー役の元に向う。

 リーダー役の掛けた集合に商人達は明らかに不機嫌な表情で、討伐者達は緊張感に満ちた表情で集まって来て、商人の一人が表情そのままの声でリーダー役に噛みついた。

「こんな所で隊を止めてどういうつもりだ!」

「商人方達はお気づきではないようですが、この辺り一帯が魔境化しているようです。どう対応するか意思統一を図るために集合を掛けました。」

「馬鹿な!魔境はダレンの街のもっと南から始まっている筈だ!」

「俺もそう記憶していますが、現にこの空気の感じは魔境のものですし、近くに幾つもの魔物の群れの気配を感じます。ですからこの辺りが魔境化しているのは間違いありません。早く対応を決めなければ遅れた分だけ魔物が集まって来るでしょうから状況が悪くなります。少しでも早い意思決定にご協力下さい。」

「分かった。腹案を教えてくれ。」


 そこからは真剣に議論が始まり、ダレンの街に救援を求める案が出たが街の近くも同じ様な状況だろうから救援を出してくれる可能性は低いという話になり商隊の戦力だけで対処する事になった。

 具体的には討伐者を遊撃と護衛の二手に分け遊撃担当が進路上の魔物を排除し護衛担当と商隊本体が全速でダレンの街に逃げ込み遊撃担当が少しでも殿をするという段取りになった。

 遊撃担当の危険が増すので倒した魔物の素材を自分達の物にしていい事になり俺とティアはパーティーの人数が少ないので遊撃担当になる。


 担当が決まった所で散会となり俺もティアの所に戻って馬に二人乗りし商隊を離れると他の遊撃担当の討伐者達も商隊を離れていった。

 商人お抱えの10人位のパーティーが街道上の魔物を排除する担当でどんどん進んで行くなか街道脇からの襲撃防止の担当になった俺達は街道から少し離れた所で馬を下り、街道と平行に街へと進みながら進路上の魔物を倒していく。

 襲って来る魔物の群れは殆どゴブリンとオークの群れで一回だけハウンドウルフの群れが襲ってきたが問題なく片付けていきもう少しでダレンの街に着くと言う所で商隊本体に追い抜かれたので馬に二人乗りして最後尾に追いついた。

 ダレンの街までの少しの間にゴブリンの襲撃を受けそうになるが護衛担当と協力して問題なく片付け、先行していた遊撃担当が上手く話を付けてくれたようで門の前で止められることなく街の中に入ることが出来た。

 門を潜ってすぐに在る広場に商隊全員が留め置かれて身元の確認が街の警備の者達により行われていき確認が終わった所で商隊が解散になり、護衛のリーダー役に依頼の完了証を貰ってその場を離れた。


 手に入れた素材と依頼の完了証を換金する為ギルドに向かい、ギルドの中にゼス教団の騎士がいない事を確認しティアに馬を任せて中に入る。

 真っ直ぐ受付に向かい素材の換金と依頼の清算を頼むとすぐに対応してくれ報酬も手早く用意してくれたが受け取ると礼を言う前に話しかけられた。

「完了証を見せて頂きましたが今日この街に着かれた討伐者の方で間違いありませんね?」

「そうですけど、何かあるんですか?」

「はい、今この街では滞在している全ての討伐者に強制呼集を掛けていて当ギルドもそれに賛同しておりお受け頂けない場合素材を引き取れなくなりますしこの街からの退去を勧告されるかもしれません。」

「もしかして、街の外が魔境化している事に関係していますか?」

「そうです、強制呼集の依頼内容がまさに街のすぐ外まで広がった魔境の減衰です。具体的には魔境に入り魔物を狩る事と瘴気泉を発見する事です。素材の買取には報酬を上乗せしますし瘴気泉を発見すれば特別報酬が出るのでよろしくお願いします。」

「幾つか質問してもいいですか?」

「はい、お聞きします。」

「魔境で狩った素材と迷宮で狩った素材、どうやって見分けるんですか?」

「今、ダレンの迷宮はギルドの権限で閉鎖していますので迷宮から素材が持ち出される事はありません。ですから素材買取り時に見分けは必要ないと思っています。」

「なるほど、もう一つ聞きます。魔境拡大の原因を新たな瘴気泉に絞っているみたいですけど、たしか強力な魔物には自身の周囲に魔境を発生させる者もいると資料で読んだことがあります。それを原因から排除しているのは何故ですか?」

「魔境が拡大してすぐ街の周囲を斥候系の討伐者の人達に索敵して貰いましたが、魔境を周囲に発生させるほどの個体は発見されませんでした。なので今は瘴気泉の探索を中心にしています。」

「納得しました。護衛の依頼が終わったばかりなので少し休むかもしれませんが、準備が出来たら魔境に向かいます。」

「分かりました。御武運を。」

「有難う御座います。」


 受付を離れギルドを出てティアと合流してアルバンさんの魔法薬店を目指す。

 店の脇から裏庭に出て裏から店に入るとアルバンさん達は昼食後のようでダイニングに全員集まっていた。

「ただいま帰りました。」

「おや、よく帰ったね、二人とも。怪我もしてないようだし何よりだよ。もう昼は取ったのかい?」

「いえ、まだです。さっき商隊の護衛で街に着いてギルドで報酬を受け取った後は真っ直ぐ帰ってきましたから。」

「なら、離れで装備を脱いでおいで、その間に食事の用意をしておくよ。ティアも気にしないで良いからね。」

「そうさせて貰います。ティア行こう。」

「ジャンナ様、失礼します。」

 

 ティアを連れて離れに入り二階の寝室にしている部屋で装備を脱いで店に戻ると昼食の準備は終わっており有り難く頂いた。

 俺達が昼食を食べ終わりキャミーちゃんが片付けてくれた所で預かっていた亜空間ポーチをダイニングに残っていてくれたアルバンさんに差し出した。

「俺とティアも亜空間ポーチを作って貰ったのでお借りしていたポーチを返します。俺達の私物を抜いてデジレさんに造って貰った薬瓶とその納品書が入っていまから確認してください。」

「確かに返して貰った。後で確認しておこう。本当によく無事で帰って来てくれた。」

「心配してくれた理由は街道の魔境化ですよね。何時こうなったんですか?」

「1週間程前急にな。何の前触れも無かったんで一時期街も混乱したが評議会とギルドが討伐者を集めて定期商隊だけは維持すると宣言を出してだいぶ落ち着いて来た。」

「評議会とギルドですか。ゼス教団の連中はどうしたんですか?」

「クージンに聞いた話だが魔境が発生したらすぐに街から引き揚げていったそうだ。名目はこの街で調達した物資の輸送だそうだが間違いなく逃げ帰ったんだろうと言っていた。」

「迷宮や街の運営に口を出したいなら今活躍して実績を積めば後々有利になると思いますけどね、俺としては邪魔な連中がいないなら動き易くなっていいですね。」

「その口ぶりだとセイジ達も魔境に入るのか?」

「そうなります。実は護衛の報酬をギルドで受け取った時、強制呼集を掛けられてその依頼内容が街の周囲の魔境についてなんです。きょうは休んで明日から魔境に入ろうと思っています。」

「セイジ、魔境に入るつもりならついでに魔法薬の材料を少しでもいいから取って来ておくれ。迷宮をギルドが閉めてるせいで材料の入荷がさらに不安定になってね。魔法薬造りの時に教えた素材の見分け方はまだ覚えているだろ、よろしく頼むよ。」

「分かりました、気に掛けておきます。ジャンナさん。」

後はミラルテの街での事を少し話して離れに引き上げた。

 夕食までの間は転移法術用のマーキングを裏庭にさせて貰い後は昼寝をして、みんなで夕食を取った後は久しぶりにティアと風呂に入り、ティアを抱いて眠った。


お読み頂き有難う御座います。

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