使いと精霊 3
ティアに起こして貰い目を覚ます。
約束していた通り日の出の時間のようで辺りの明るさが増して行く。
野営で強張った体を解しポーチの中から保存食や水を出してティアに少し手を加えて貰い一緒に朝食を食べた。
野営地の片付けをし、装備に問題が無い事を確認して結界を解除し洞窟の奥に向かう事にした。
生活魔術で灯りを作り暫く進んで行くと昨日の夜、魔眼で確認したカーズドエレメントが漂っている。
土属性3匹の群れで12〜13m離れているが様子に変化はなくゆっくり漂っているだけのようだ。
調べた情報では魔法武技の効果が高いとなっていたのでまずはその情報に従ってみる事にする。
俺は錬鎧装弾でティアには精霊武技を使うよう頼んでタイミングを合わせて攻撃すると二匹は簡単に仕留めることが出来たが残りの一体は岩で周囲に防壁を展開し閉じこもってしまった。
閉じこもったまま動く様子もないので岩の防壁の防御力を確認する為ウィンドアローを撃ち込んでみると防壁を破壊する事は出来たが本体にダメージは与えられず防壁もすぐに元通りになった。
ダメージは与えられなかったがウィンドアローで防壁の破壊自体は出来たので今度はティアと連携して防壁を壊した瞬間に精霊武技を撃ち込むよう指示して試してみるとティアが上手く合わせてくれて俺のウィンドアローが防壁を壊した瞬間に精霊武技を撃ち込んでくれて倒すことが出来た。
カーズドエレメントが漂っていた場所の下には魔核石と灰色をした小石代の立方体落ちていて、鑑定してみるとこの立方体が邪霊の灰のようだ。
手で持ってみると力を入れれば簡単に砕けて粉になりそうなので準備して置いた壺に入れてその場を後にした。
次は近接戦闘を試してみる為魔眼で近くにいる群れを探して一番近くにいた火属性1に土属性2の群れの元に向かった。
ティアにもしもの時の援護射撃を頼んで剣と盾を構えて15m位の距離から突っ込んでいくと10mを切った所でカーズドエレメント達が炎の矢や岩の矢を俺に撃ち込んで来て防御に手を取られて前に進めなくなる。
ティアが精霊武技で1匹仕留めてくれたお蔭で攻撃の手が薄くなり防御しながら後退すると10mほど離れた所でカーズドエレメント達は攻撃をやめ防壁に閉じこもった。
さっきと同じ手順で攻撃すれば2匹とも問題なく倒せそうだが試しに俺が錬鎧装弾投槍でティアには土の防壁を展開する個体へ風の精霊武技を使うよう指示して攻撃してみた。
攻撃は上手く行き2匹とも倒すことが出来たが回収したティアの矢が壊れて再利用出来なくなっていた。
二回カーズドエレメントと戦ってみてこの魔物は10m以内に近づかれるか攻撃されると敵を感知し10m以内に敵が留まれば魔術に似た矢で攻撃し10m以上離れれば自身の属性の防御壁に閉じこもってしまうようだ。
効率よく倒していくには10m以上離れた場所から錬鎧装弾や精霊武技で先制して数を減らし、防壁に閉じこもられたら錬鎧装弾投槍や魔術と精霊武技の連続攻撃で仕留めるのが良さそうだ。
そうなるとプラーナやマナの消費が激しくなりそうなので死蔵しているプラーナポーションやマナポーションの使用も考えておいた方がいいかもしれない。
倒し方をティアと確認し合い近くの群れから順番に倒していく。
攻撃を受ける事無くカーズドエレメントを倒していけて、心配したプラーナやマナの消費も移動中に思い他、自然回復してくれたのでポーションを飲んで回復させるところまで消耗する事は無かった。
カーズエレメントの群れを八つ程潰した所で昼前の時間になり自然回復の時間を取る事もかねてどこかで昼食を取ろうと良さそうな場所を魔眼で探すと丁度近くに昨日魔眼で確認した溶岩の池がある突き当りがあった。
調べようと思っていたし魔物も近づかない場所のようなので調査を兼ねてそこで昼食を取る事にした。
生活魔術の明りが必要なくなるほど溶岩からの光が強くなる場所まで来るとティアが教えてくれた。
「セイジ様、この先には精霊がいるようです。」
「精霊ってティアが精霊術を使う時に力を貸してくれてる奴だよね。分かるの?」
「はい、私が暮らしていた集落にも属性が違いますが精霊が集う場所がありましたから。それでお願いがあります。この先にある精霊の場を荒らさないでください。」
「具体的にはどんな事をすれば荒らした事になるの?で、もし荒らしたらどんな不味い事が起きるの?」
「その場にいる精霊を害したり消滅させたりすることが荒らす事になります。もし精霊の場が荒れれば地脈に影響し、魔境の拡大を促す事になりかねません。」
「それは不味いね、もしかして精霊がいる事を教えてくれたのもその所為?」
「はい、セイジ様が精霊を魔物と間違えて危害を加える事を心配しました。差し出がましい真似をして申し訳ありません。」
「謝る必要は無いよ、教えてくれ有難う。因みにここの精霊の場にはどの属性の精霊がいてティアが暮らしていた集落にある精霊の場はどうだったの?」
「ここの場からは火と土の精霊を感じます。集落にあった精霊の場の属性は水と風です。」
「確かティアは火と土の精霊術は使えなかったよね?」
「はい、そうです。」
「ここの精霊の場で火と土の精霊と契約出来たら火と土の精霊術が使えるようになる?」
「そうですが契約できるかどうかは分かりません。」
「なら奥まで行って試してみればいい。失敗したらもう二度と契約できないって訳じゃないんだろう?成功するまで試してみればいい。」
「はい、頑張ります。」
ティアに頷き返して奥に進み溶岩の池の畔まで来る。
気鎧と魔装衣を重ね掛けしていないと耐えられないほどの熱を放つ溶岩の池以外俺には何も感じられないが、ティアには何か見えているようでその何かを視線で追っている。
暫くするとその何かは近くに来たようで胸の前で広げた両掌の上でティアの視線は止まった。
「ティア、もしかして掌の上に何かいる?」
「はい、火と土の精霊がいます。契約も上手く行きました。有難う御座います、セイジ様。本当は上手く行くか自信が無かったんです。試すよう勧めてくださって本当に有難う御座います。」
ティアのお礼はなんだかむず痒いが悪い気はしない。
精霊を実感する為俺も精霊を視たいがティアの掌の上には何も無いように見え、せめて鑑定だけでも出来ないかと万象の鑑定眼を発動すると掌の上に赤色の球体と土色の球体が急に見えるようになった。
赤色の球体が火の精霊で土色の球体が土の精霊のようで同じような球体が幾つも溶岩の池の上や中で見えるようになり池の中にいる球体には溶岩の精霊となっているものもいた。
蛍が舞っているような風景に目を奪われていると赤色と土色の球体が一つずつ俺の前に飛んできた。
「お前急に俺達の事が見えるようになったな、変わった目をした奴だ。」
「もしかして俺の目の前にいる精霊か?」
「そうだけど俺達との意思疎通は言葉じゃなく念じてくれその方が俺達には分かり易いし、横のエルフの娘のようにしてくれるとなお有り難い。」
頷いて掌を差し出すと精霊が左右に一体ずつ下りてきた。
「俺達と契約してみるか?」
「単刀直入だな、普通の人間の俺が契約できるか?それと契約したら不都合が出るなんて事はないのか?」
「俺達を感じて意思疎通ができ能力値が十分なら誰とでも契約できるぞ。んで俺達と契約して不都合が出るのなんて魔物位だぞ。」
「契約に問題は無いんだな。じゃあ契約すれば俺も精霊術を使えるようになるのか?」
「いや、精霊術は無理だ。あれはエルフ達特有の物なんだ。お前の場合は俺達を直接召喚して使い倒したり、武器や防具にして酷使したり出来るぞ。」
「そんな扱いでいいのか?」
「全く使ってくれないよりはそっちの方が良いな。」
「そうか、なら契約させて貰いたいが、契約の代償とか対価はどんなものがいるんだ?」
「そんなもの必要ないぞ、強いて言うならどんどん俺達を使ってくれ。」
「本当にそれでいいのか?」
「お前が俺達を使う時消費するプラーナとマナが俺達の成長を促す糧になる。だから俺達と契約してどんどん使ってくれれば十分なんだ。」
「なるほど、なら契約しよう、俺は如何すればいい?」
「このままでいてくれ、契約は俺達でやるよ。」
掌の上にいた両方の球体から小さな球体が分裂し掌に吸収されるように消えると火と土の精霊と両方と確かな絆を感じるようになった。
「上手く行ったか?」
「ああ、お前たちとは繋がった感じがする、後欲張りかもしれないがあの池の中にいる溶岩の精霊はどうして声を掛けてきてくれなかったんだ?」
「おお、彼奴の事も見えてるのか。それならたぶん能力値が足りないか精霊を扱う技能が足りないんだ。彼奴は俺達より扱うのが難しいからな。」
「ならお前たちで精霊の扱いを鍛えレベルを上げて能力値を伸ばせば契約が可能になるか?」
「その通りだ、技能や能力値が十分なら彼奴の方から声を掛けてくるはずだ。」
「教えてくれて有難う、鍛えて出直して来るよ。」
「おう、俺達も使って頑張れよ。」
俺の掌の上から火と土の精霊は離れ溶岩の池の上を舞う群れの中に戻って行った。
戻って行く精霊を目で追っているとティアが傍に寄ってくる。
「おめでとう御座います、セイジ様も精霊と契約できたのですね。」
「ティアのお零れに預かっただけだけどね。さあ昼食の準備をしてくれ。で昼食が済んだらまたカーズドエレメント狩りだ。」
「はい、頑張ります。」
ティアが手を入れてくれた保存食を二人で食べプラーナとマナが十分回復してからカーズドエレメントの狩りに戻った。
夕方近くまで狩りを続けて入り口部分で野営をした。
お読み頂き有難う御座います。




