使いと精霊 2
ティアに起こして貰いミラルテの宿屋で目を覚ます。
装備を身に着けベッドに入る前に展開した結界を解除して部屋を出た。
そのままティアと宿で朝食を食べ女将さんに2〜3日魔境で魔物を狩って来る事を告げ馬の事を頼んで宿を出た。
大通りに出ていた屋台で今日の昼と夜の分のサンドイッチやホットドッグを買いミラルテの街を出て街道を歩いて行く。
暫く街道を歩き教えて貰った場所から獣道のような脇道に入り森の中を進んで行く事になったので気配探知と瘴気探知を強め魔眼で獣道やその周辺を確認しながら進んで行く。
半日ほどは何もなく進む事が出来て遠くにゴブリンだろう群れを一つ、二つ感じるだけだったがある場所を境に急に瘴気の濃度が上がり、感じる魔物の群れの数が跳ね上がったので魔境に入ったようだ。
もう昼に近い時間だったので一旦魔境から出てティアと昼食を取ってからもう一度魔境に入った。
魔境に入ってからの魔物の気配は昼までとは全く違い、感じ取れる範囲には常に十個以上魔物の群れを感じ大半が初見の気配だった。
洞窟に向かう道に近づいてくる群れもあるようなので初見の魔物の群れとは今後の為にも戦っておく事にしよう。
最初に獣道へ近づいて来たゴブリンの群れを俺の魔術とティアの精霊術で仕留めて素材を回収していると初見の魔物の群れが近づいて来た。
オークと呼ばれる2m位の人型で豚の顔に肥満体をした魔物で4匹の群れを作っている。
ゴブリンに対してと同じように魔術と精霊術で先制攻撃するが顔を狙い撃った1匹を仕留めたが腹や手足を撃った他の3匹は此方に向かってくる。
俺は錬鎧装弾でティアにも顔を精霊武技で射抜かせて2匹仕留め近接戦闘も試す為剣と盾を構えて最後の1匹と向き合う。
力任せに振り下ろされる棍棒を盾で受け止め武技を使わず腹を引き裂くが傷口から瘴気が噴き出すだけでまだ戦えるようだ。
止めを刺す為魔術アーツ水刃を剣の長さ以上に伸ばし水刃一閃で縦に引き裂くとオークは魔核石とブロック肉に変わった。
オークの素材をポーチに納めしばらく行くと獣道を横切った魔物の群れが方向を急転換しこちらに向かってくる。
姿を魔眼で確認すると体高が1m強ある猪型の魔物チャージボアで3匹が群れを作りこちらに突っ込んでくる。
ティアに精霊武技で迎撃を指示し魔術アーツロックジャベリンで俺も迎撃して2匹仕留めるが最後の1匹に間合いに飛び込まれてしまう。
とっさに盾を構えティアの前に出てチャージボアを受け止めそのまま抑え込み剣を抜いて背中に岩刃瞬突を撃ち込んで仕留めた。
チャージボアが落とした牙に毛皮と肉に魔核石を回収した所で瘴気探知スキルに反応があり魔物に囲まれている事に気付いた。
俺とティアを中心に円陣を組んでその輪を少しずつ狭めて来ているようで円陣を組んでいる魔物の1体を魔眼で見ると狼型の魔物ハウンドウルフのようだった。
ティアとすぐ背中合わせになり互いに武器を構えた所でハウンドウルフが飛び掛かってくる。
俺は魔術ウォーターアローでティアは弓で飛び掛かって来るハウンドウルフの額を撃ち抜き仕留めて行くが少し大柄な1匹がウォーターアローを僅かに避けて肩に食らいながらも倒せず残った。
残った1匹はバックスステップをして下がり全速でもう一度飛び掛かってきたので今度は剣に噛みつかせて動きを止めて喉元に鎧装拳を打ち込んで仕留めた。
ハウンドウルフの毛皮と魔核石を回収した後もゴブリンを含め10回位魔物の群れに襲撃されたが何とか完全に日が落ちる前に目的の洞窟に辿り着いた。
どういう訳か洞窟の入り口部分は魔物が寄ってこないのでここを野営地にした。
入り口部分と少し奥に入った所に法術と魔道具で二重に結界を展開し毛布を出した。
たき火を焚いて朝買った食事をティアにも渡して一緒に食べると後は朝まで見張りを交替しながら休むだけだがティアと話がしたくなって、後ろから抱きしめ洞窟の壁に背を預けて一緒に座り込んだ。
「あ、あの、セイジ様、お相手をするのは嫌ではありませんが魔境の中でというのは危険すぎませんか?」
「へ、ああ、勘違いさせてごめん。少しティアと話がしたかったんだ。」
「話しですか?」
「そう、俺のせいだけどティアと二人きりになるとどうしても猛って話をするって雰囲気を作れなかったから野営の暇つぶしを兼ねて話をしたいんだ。そうだな、まずはティアの事を聞かせて、如何いった経緯でクージンさんの所に来る事になったの?」
「面白い話にはなりませんよ。」
「ティアの事を知っておきたいんだよ。教えてくれる?」
「分かりました。お話しします。」
それからティアはゆっくりと自分の生い立ちを話してくれた。
ティアは東ヴァルノムにある光エルフ集落の族長の娘として生まれ兄が一人いるそうだ。
厳格に育てられたが十分可愛がってもくれ、いずれ集落の有力者の家に嫁に行く事になる筈が、ゼス教団と王国連合の戦争で状況が一変する。
ティアの暮らしていた集落があった国はゼス教団に敗れ戦闘奴隷の確保と奴隷売却の利益を見込んでティアのいた集落を襲撃してきたそうだ。
光エルフ達は散り散りに逃げる事で大半は難を逃れる事が出来たらしいが運悪くティアは捕まってしまい戦闘奴隷には向かないと思われたらしく終身奴隷として売られたそうだ。
それからは何人かの奴隷商の間を転売されコリレスの街でクージンさんに売られたそうだ。
「私の話はこれ位です。」
「話してくれてありがと、ティア。そうだ、ティアも俺に聞いてみたい事ある?出来るだけ答えるようにするから聞きたい事が在るなら言ってみて。」
「えっと、あの、一つだけ宜しいですか?」
「うん、言ってみて」
「どうしてセイジ様はこんなに優しく扱ってくれるのですか?」
「優しいかな?」
「はい、とても。」
「う〜ん、俺としてはティアを愛人として扱うって言った自分の言葉通りにしているだけなんだけどな。」
「それなら本当にセイジ様は優しいんですね。答えて頂き有難う御座います。見張りを受け持ちますからセイジ様はもうお休みください。」
「いや、見張りは俺が先にやるよ。そのほうが俺にとっては辛くないから。付け加えるとこのまま眠ってくれたら俺がうれしいんだけど。」
「分かりました。お先に休ませて頂きます。お休みなさい、セイジ様。」
俺の肩に頭を預けてティアが体の力を抜いたので毛布を一緒に被る。
ティアが規則正しい寝息を立て始めたので暇つぶしと明日の探索を楽にするため魔眼で洞窟内を調べて行く。
洞窟内には球形に近い不定形の魔物が幾つも漂っているのでこの魔物がカーズドエレメントなんだろう。
魔眼を三種並列発動出来るようになったおかげで拡縮の遠視眼の視野内の物はすべて鑑定出来るようになったので確認の為鑑定してみる。
間違いなかったが属性が火と土の二種類いるようなので攻撃に使う魔法武技は属性を気にしないといけないようだ。
ざっと数えても50以上はいそうなので全部狩るには一日仕事になりそうだ。
迷わないように道を覚えていると突き当りの一つに小さな溶岩の池があり魔物が一切いない場所があった。
ミルネ教会で教えて貰った場所のようなので様子を見には行ってみよう。
粗方道を覚えると丁度いい時間になったのでティアを起こして解放し見張りを代って貰う。
毛布を被って横になりそのまま眠った。
お読み頂き有難う御座います。




