使いと精霊 1
ミラルテの門を潜りすぐ傍にあった広場で商隊は解散になった。
護衛のリーダーを務めた討伐者に報酬の受け取り方を聞くとこの街のギルドで受け取るように言われ、依頼の完了証とギルドの場所を教えてくれた。
ギルドを目指して大通りをティアと二人乗りで馬を進めながらミラルテに着くまでの1週間程を思い返してみる。
昼間は気配探知や瘴気探知で辺りを警戒しながら馬に二人乗りをしてティアの大陸共通語を確認していった。
夜は二人共か交互に見張りへ参加し三回ほど魔物の襲撃があったがその内二回は俺達が手を出す前に他の討伐者が片付け、残る一回もティアが精霊武技でゴブリンの頭を射抜いて見せてくれて俺の出番は無かった。
ギルドに着くとティアに馬を任せて中に入り受付で護衛依頼の完了証を処理して貰い報酬を受け取る。
ついでに馬を預かってくれる討伐者用の宿を紹介して貰いデジレさんの工房の位置を確認してギルドを出た。
ティアを連れてまず紹介して貰った宿に向かい二人部屋に取り敢えず1週間泊まる事にして宿代を先払いし馬を預かって貰った。
一旦借りた部屋に入り部屋の様子を確認して今度はデジレさんの工房に向かう為に宿を出た。
ジャンナさんに教えて貰いギルドで確認した場所を目指して大通りから何回か角を曲がった先の路地に入り、教えて貰った場所にある工房のドアを叩いた。
暫く間を置きながら追加で2〜3回ドアを叩くと中から4〜50代の如何にも職人というがっしりした体型の男性が出て来た。
「家に何か用か?」
「ここは付与術師のデジレさんの工房でしょうか?」
「そうだがお前さん達は?」
「俺は討伐者をしているセイジという者です。ダレンの街のアルバン魔法薬店から前回の取引の清算金とデジレさんへの依頼状に手付金を預かって来ています。清算金と手付金の領収書を頂き依頼状を読んで頂けませんか。」
「分かった、入れ。」
返答をしながら鑑定をしてみて間違いないようなので中に入り続いてティアが入るとデジレさんは扉を閉め作業テーブルの一角を片付けそこにお金を出すよう言ってきたのでジャンナさんから預かったお金を全て出し、デジレさんに依頼状を手渡した。
依頼状の封を切ったデジレさんは作業テーブル傍の椅子に座って依頼状を一読した。
「劣化防止を付与した薬瓶の発注は確かに受けた。お前さん達がこの街を立つ時まで出来ただけというのも構わないが恐らくジャンナが期待してるほどの数は揃えられないぞ。」
「どうしてですか?」
「ジャンナの所だけじゃなく他所からも魔法薬用の薬瓶の注文が結構来てな。それでも瓶そのものを作る材料はきちんと流れて来ているんだが、劣化防止を付与する為の触媒がこの街全体で不足して来てるんだ。だから金を出せば材料を買えるって状況でもなくてな。どうしても製作数が頭打ちになる。」
「そうなんですか、ちなみに不足している触媒って如何いう物で何処で取れるかご存知ですか?」
「触媒は邪霊の灰っていう物で近くの魔境に倒した後素材として落とす魔物がいると聞いているが具体的に何処かまでは知らんな。」
「どこの魔境でどんな魔物が落とすか具体的な情報は何処に行ったら手に入りますかね?」
「ギルドとミルネ教会に行けば手に入ると思うがお前たちで取りに行くつもりか?」
「情報を集めて俺達で余裕を持って倒せそうな魔物ならそうするつもりです。この使い以外他に依頼は受けていませんし持ち帰る瓶の数が増えれば俺達の評価や報酬の上昇に繋がるでしょうから。邪霊の灰を持ち帰って来てデジレさんに直接納めれば持ち帰れる瓶の数を増やして貰えますか?」
「そういう事なら持ち込んだ素材で瓶を造って持ち帰らせてやる。ついでに魔核石も集めて持って来い。この依頼状にあったお前達用の亜空間ポーチを造るのに必要な魔核石も不足気味なんでな。集めてくればその分早く作ってやれる。因みにお前たちの適正は如何なんだ?」
「俺もティアも亜空間ポーチを使えます。デジレさんは自己補充型、魔核石補充型、両方作る事が出来るんですか?」
「両方作れるが、ああ、どっちのポーチを作れば特になるか知りたいんだな?お前達は魔術師や法術師のクラスを持ってるか?」
「はい、俺もティアも持ってます。」
「なら自己補充型にしとけ、俺の作る魔核石補充型のやつはレベル20位の法術師が持つ自己補充型のやつと同じくらいの固定した格納量をしてるんだが自己補充型のやつは持ち主しか補充出来ないが持ち主の能力値の上昇で格納量が増えるんだ。当然レベル20以上の討伐者になるつもりなんだろう?」
「そのつもりですから俺達の亜空間ポーチは自己補充型でお願いします。」
「分かった。瓶とポーチの準備をしておくから素材が手に入ったらいつでも持って来い。」
「分かりましたけど、帰る前に領収書をお願い出来ますか?」
「おっとそうだ、忘れる所だったちょっと待ってろ。」
デジレさんに書いて貰った領収書をポーチに仕舞い別れを言って工房を出る。
情報を集める為まず場所が分かっているギルドに向かい、受付で邪霊の灰を落とす魔物の情報とその魔物が出る魔境の情報の合わせて質問すると情報料を取られるかと思ったが快く教えてくれた。
邪霊の灰を落とす魔物はカーズドエレメントという霊体型の魔物で物理攻撃の効果が無く、プラーナやマナ単系統の攻撃も利きが悪く、魔法武技での攻撃が効果的だそうだ。
ミラルテの街を出て半日ほど中央山脈方面に歩いた場所から始まる魔境をさらに半日ほど歩いた場所に口を開けている洞窟にカーズドエレメントは出現するそうだ。
その魔境の情報も教えて貰い出現する魔物はゴブリンにオークとハウンドウルフにチャージボアなどで洞窟までの道順も教えて貰った。
情報を補完する為ミルネ教会の場所を尋ねると斜向かいにある教会がそうだと答えてくれたが営業スマイルが引きつっていた。
受付に礼を言ってギルドを出て斜向かいの教会に向かう。
ティアを連れて敷地に入った所で声を掛けられた。
「当教会に何か御用ですか?」
声を掛けて来たのは修道女の服を着たティア並の器量をした普人族の少女で思わず鑑定していた。
アリア Lv12
クラス 聖女 Lv12
筋力 36
体力 48
知性 94
精神 94
敏捷 60
感性 94
アビリティ
女神達の愛娘
地脈接続
魔導具操者
スキル
2個
「あの、聞こえていますか?」
「セイジ様?」
「すいません。カーズエレメントが出る魔境の情報を教えて欲しいのとアーツブックを読ませて貰うには如何すればいいですか?」
「魔境の情報をお教えするのは問題ありませんが当教会が所蔵するアーツブックを開示するには条件があるんですが貴方達は討伐者ですよね?」
「はい、そうです。」
「討伐者の方についてはランクDからが一般のアーツブックを開示する条件になっているんですがランクを満たしていますか?」
「いえ、残念ながら。」
「そうですか、なら魔境の情報をお教えする事しか出来ませんがそれでも構いませんか?」
「構いません、お願いします。」
「では、私に付いて来て下さい。資料棟に案内します。」
少女は俺達を先導して歩き始めその後を付いて行く。
「すみません。自己紹介が遅れました。私は当教会に所属している者でアリアと申します。」
「俺はセイジ、後ろの彼女はティアって言います。」
「セイジさんとティアさんですね。」
自己紹介が終わった後アリア嬢に案内された資料棟で教えて貰った魔境の情報はギルドとほぼ同じものだったが1点だけ追加情報がありカーズドエレメントが出る洞窟の奥に魔物の出ない不思議な場所があるらしいという情報を得た。
情報の礼をアリア嬢に言いミルネ教会を出た後は一旦部屋を取った宿屋に戻り、宿の女将さんに保存食を扱っている食料品店を教えて貰い5日分の保存食を買い通りで見つけた雑貨屋で邪霊の灰を入れておく壺も買って宿に戻った。
宿で夕食を食べ風呂は無いそうなので生活魔術を使って身を清めた。
念の為結界を張り商隊の護衛で1週間出来なくて明日からも2〜3日出来そうにないのでつい猛ってしまいもう一回生活魔術で身を清めてからティアと一緒に眠った。
お読み頂き有難う御座います。