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出会い 10

「セイジ様、起きてください朝食の用意が終わりました。」

 一緒に眠っていた筈のティアがベッドの横に立って起こしてくれる。

「ティア、先に起きてたのか。」

「はい、キャミーさんの朝食の準備を手伝ってきました。」

「そっか、じゃあ、さっさと身嗜みを整えて店の方に行こうか。」

 ベッドから起きティアに手伝ってもらって身嗜みを整えて生活魔術で身を清めて離れを出る。

 みんなで朝食を取った後今日は迷宮に入る事を伝えて店を出た。

 離れに戻って装備を身に着けティアも胸当て以外の装備を身に付けて離れを出る。

 迷宮に向かう前に昨日訪ねた防具屋に行くとまだ早い時間だが店を開けて対応してくれた。

 約束通りティアの胸当ては仕上がっていて、その場で装備して防具屋にお礼を言って店を出た。

 大通りを歩きながらティアにギルドへ登録していたり詳しく知っているか聞くと、登録はしていないし詳しくは知らないと答えてくれたので登録がいるかの確認とギルドの説明が必要そうだ。


 ギルドの前まで来て二人分の昼食を買い念の為ゼス教団の騎士達がいないか魔眼で中を見渡し姿が無いのを確認してギルドに入る。

 迷宮に入るためにティアにもカードが必要か確認する為受付に声を掛けた。

「すみません、後ろにいる子は新しく手に入れた奴隷なんですが一緒に迷宮に入るのに彼女もカードが必要になるんですか?」

「はい、必要になります。今すぐ登録をなさいますか?」

「お願いします。登録時の説明は俺がするんで必要ありません。」

「分かりました。ついでにチーム登録をなさいますか?」

「チーム登録の説明を受けてないんで教えてくれますか?」

「分かりました。基本的な物は素材の換金や依頼の報酬を受け取る時の手続きの簡略化です。ランク上昇の基準になる累積金額に加算分が自動で頭割りに分配されます。勿論申し出てくれれば個人に集中して加算する事も出来ます。後は登録者の平均ランクが上がるごとに特典が増えて行きます。」

「なるほど、チーム登録をしておきます。」

「では、カードをお出しください。リーダーはあなたで登録しますがよろしいですか?」

「それでお願いします。」

 俺のカードを受け取って受付嬢は一旦奥に下がり二枚のカードを持って戻ってきた。

 ティアに新しいカードへの登録作業をさせ渡された二枚のカードの表はそれほど変わりなくティアのカードには5000ヘルクの借財の表示が出ていた。

 裏にはチームについての記載が増えていた。

 

 受付にお礼を言って離れ迷宮へ歩きながらギルドの説明をしていく。

 ギルドを出て迷宮に入り螺旋階段の前まで来て説明が終わった。

「ティア、今日の目標はお互いの戦闘力と連携の確認にティアのギルドへの借金の返済それとアルバンさん達に渡す魔法薬の素材の収集にする。少しでも多く達成できるよう頑張ろう。」

「はい、全力でお手伝いします。」

「じゃまずは一層のゴブリン相手にお互いの戦力と連携の確認から始めよう。」

 一層の最外縁部に新しい壁一面に草が生えている場所を見付けたのでそこに向かいながらルート上のゴブリンと戦っていこう。

 最初に出会った三匹のゴブリンの群れを俺が武技アーツだけで倒して見せて次に出会った三匹の群れはティアにまず弓だけで攻撃させてみた。

 ティアも弓の武技アーツを使って一矢ずつでゴブリンを仕留めてみせてくれて、回収した矢も十分再利用可能だった。

 武器の腕前はお互いに確認出来たと思うので魔術と精霊術の腕前を確認する事にした。

 先に俺が魔術の腕を見せる事にして4匹のゴブリンの群れをウィンドボールで仕留めて見せてティアには次の群れに対して風の精霊術を使って先制攻撃するよう頼んだ。

 ティアの見せてくれた風の精霊術はウィンドボールのような術で先制攻撃だけで3匹の群れを全滅させて見せてくれた。

 ティアの術は俺のウィンドボールと大差ないよう感じたので能力値の差を考えると威力では魔術より精霊術の方が高そうだ。

 最後に魔法武技の代わりに精霊術と弓と武技アーツを組み合わせて使えるか聞いてみると見た事はあるが試した事は無いと答えてくれたので試してみるよう言った。

 手本代わりに風刃一閃でゴブリンの群れを倒して見せ、ティアに風の精霊術と弓の武技アーツの組み合わせを次の群れに対して試させてみると問題なく使って見せてくれゴブリンの群れに気付かれる事無く全滅させてくれた。


 これで大体の戦力の確認が出来て最外縁部も近かったので無理にゴブリンの群れを追わず草が生えている場所を目指す事にした。

 移動に専念してからはゴブリンの群れとは合わず目的の場所に着いた後は二人で草を採取していく。

 採取中ティアのスキルに変化がないか鑑定してみたが採取スキルは取得出来ていないようなのでスキル取得率上昇の効果まではティアに及んでいないようだ。

採取を終えてカードを確認すると経過時間から考えて昼時になっているようなので昼食にする。

 食事にする事をティアに告げ二人分のサンドイッチと水筒をポーチから取り出し壁に背を預けて座るがティアは立ったまま周囲を警戒しているので声を掛けた。

「ティアも一緒に昼食にしよう。」

「え、あの、魔物への警戒をどうされるのですか。」

「そこは大丈夫、俺が瘴気探知のスキルを持っているし必要になれば結界法術も使えるから、ゴブリンが近くに来たら近づかれる前に分かるから如何とでもなる。」

「一緒に食事を取ってもよろしいのですか?」

「きちんと食事を取って貰わないと困るよ。空腹と脱水は集中力の低下と疲労の増加につながる。集中力の低下と疲労は戦闘でのミスを招き怪我の原因になる。俺は怪我をしたくないしティアにもさせたくない。だから俺の隣に座って一緒に昼食にしよう。」

「有難う御座います。」

 ティアはぎこちなく俺の隣に座って一緒に昼食を取ってくれた。

 

 サンドイッチを食べ終わった後微妙な間が出来たがティアの手を引いて立ち上がり螺旋階段へ戻る事にした。

 戻る途中も積極的にゴブリンの群れに仕掛け今度は連携を確認していく。

 二人で並んで魔術と精霊術の斉射をしたり、ティアの弓でゴブリン引き着けて俺が横手から斬り込んだり、俺の突撃をティアの精霊術の曲射で援護して貰ったり、いろいろな連携を実際試しながら確認して行った。

 思いついたものを一通り試し終えた所で時間を確認すると夕方近くになっていたので切り上げる事にした。

 出口の扉の前まで来てギルド内にゼス教団の騎士達がいない事を確認して迷宮を出た。

 ポーチ維持用の魔核石を残しギルドの受付でゴブリンの素材を換金して得た報酬でティアのギルドに対する借金を完済してギルドを出た。

 大通りを歩きアルバン魔法薬店まで帰ってきて店の脇を通り裏庭側から店の中に入るとアルバンさんとジャンナさんの姿はあったがキャミーちゃんとアゼル君の代わりにクージンさんがいた。

「帰って来たね、二人とも、怪我は無いかい?」

「はい、怪我はありませんけど、如何してクージンさんがここにいるんですか?」

「教団に動きがあったので薬の注文のついでに忠告に来た。」

「まあ、お座りよ。それから詳しい話をしようじゃないか。」

 頷いて席に着きティアも席に着くよう視線で促すが俺の後ろに立っているつもりのようなので好きにさせてクージンさんの方を向いた。

「今日ミスリルゴーレムに返り討ちにあったゼス教団の幹部連中が目を覚ましてセイジ君の事を本格的に探し始めた。」

「今日迷宮に入ってきましたけどゼス教団の連中は見かけませんでしたよ?」

「そうだろうな、連中はギルドにミスリルゴーレムの素材が流れて無い事を聞き出しているから既に評議員の手に渡ったと考えて今は街の評議員が飼っている小飼の討伐者を調べていてギルドはノーマークだからな。」

「素材が評議員に渡っていると気付いているのに討った討伐者に何の用があるんですか?」

「討った討伐者を抱き込んで評議員は素材を買っただけで討ったのは自分たちの手の者だと言いたいんだろう。」

「面子を捨ててそこまでやるつもりなんですか?」

「評議員がミスリルゴーレムの素材を持てば引くかとも思っていたんだがどうやらそのようだ。今は評議員小飼の討伐者を調べるのに集中しているがいずれいないと分かればギルドに出入りする討伐者や街中で仕事をしている討伐者にも捜索の範囲を広げて来るだろう。そこでセイジ君に暫く大人しくしていて欲しいと頼みに来たんだ。」

「その話を聞いてね、いい事を閃いたんだよ。セイジ、ミラルテの街まで使いに行ってくれないかい?」

「ミラルテの街って言えばここから西ヴァルノムに入ってすぐ位にある大きなミルネ教会のある街ですよね。」

「そうさ、その町にいるデジレっていう付与術師を尋ねて魔法薬用の劣化防止の付与の付いた薬瓶を仕入れて来ておくれ。ここ最近の大量注文で薬瓶の在庫が減ってきているからね、教団の連中から隠れる事を兼ねてこっちに戻って来るのを一か月後位にして向こうにいる間出来るだけたくさん仕入れて来ておくれ。代金は心配いらないよ、手付を払えば清算は次回の注文時だし前回の精算分は用意が出来てる。如何だい行ってくれるかい?」

「分かりました。何時出発すればいいですか?」

「クージンが明日の昼前にミラルテに向かう商隊に護衛として同行出来るよう手配しているようだよ。そうだ、デジレに会ったらあんた達用の亜空間ポーチを造って貰うといいよ。代金はうちで持つ、ここ4〜5日のセイジの集めた素材や魔法薬造りの報酬代わりだから気にしなくていいよ。」

「有難う御座います。今お借りしている亜空間ポーチこのまま借りて行っていいですか?」

「ああ構わないよ。そこに薬瓶を入れて帰って来ておくれ。後の細かい所はあした確認する事にして夕食にしようかね。」

 ジャンナさんがそう話を閉めるとクージンさんは店に帰ると席を立って出て行った。

 クージンさんと入れ替わるように夕食に準備の為キャミーちゃんが部屋に入って来てティアも手伝って準備を終わらせると何時もの様に全員で食事を取った。

 食事の後は離れに引き上げ装備を脱いでティアと風呂に入った。

 明日からはテントで野営になりそうなので満足するまでティアに相手をして貰い抱き枕にして眠った。


 ティアに起こして貰ってここでの何時もの様に朝食を取った後は商隊護衛の準備に動き回った。

 ティアの野営道具を買い、護衛の予定日数より多めの保存食を用意し、預けてあった馬の馬具を調整して貰うと時間になったので商隊の集合場所に向かった。

 集合場所でジャンナさんからデジレさんへの依頼状とお金を預かり挨拶をし、商隊に随伴してダレンの街を後にした。


お読み頂き有難う御座います。

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