出会い 5
店に入った俺の目は対応に出てくる彼女に釘付けになる。
肩より下まで伸びる金髪に尖った耳と綺麗な顔立ちに凹凸のはっきりした肉感的な体つきをしている彼女の姿に見惚れて自失してるところで話掛けられた。
「どのような御用件でしょうか?」
声を掛けられ我に返ったが返事をせずに彼女を鑑定していた。
ティア Lv3
クラス 法術師 Lv3
筋力 9
耐力 6
知性 20
精神 12
敏捷 20
感性 16
アビリティ
光エルフの貴種
精霊の盟主
千里眼の射手
スキル
3個
「あの、聞こえていますか?」
「すいません。アルバン魔法薬店から魔法薬の納品に来ました。取り次いで貰えますか?」
「分かりました。お待ちください。」
彼女は一旦奥に向かいすぐに出て来て奥に案内してくれ、通された部屋には机に向かって仕事をしている中年の男性が待っていた。
「ティア、もう下がっていいよ。」
彼女はお辞儀をして部屋を出て行き、その後ろ姿を目で追いそうになるが何とか前を向き中年の男性の前に出た。
「今の子にも言いましたが、アルバン魔法薬店から魔法薬の納品に来ました。何処に出せばいいですか?」
「この机の上に出して貰えるか。」
「分かりました。」
机の上に亜空間ポーチからポーションを出していると声を掛けられた。
「もしかして君はこの前の商隊でジャンナの護衛をしていた討伐者じゃないか?」
「そうですけど、如何してそれを知ってるんですか?」
「私の名前はクージン、この店の主人で先の商隊にも奴隷の仕入れで参加していて、君がゴブリンや盗賊相手に戦う所を見ている。如何だろう討伐者として私の依頼を受けてみる気はないか?」
「今俺はアルバンさん達に雇われているんですけど?」
「勿論アルバンとジャンナの許可が出なければ依頼の事は忘れてくれていい。話だけでも聞いてくれないか?もちろん疑問にも答える。」
「分かりましたが、お話を伺う前に納品を済ませていいですか?」
「そうだな、先に終わらせてしまおう。」
全てのポーションを机の上に出しクージンさんに検品をして貰った後受け取りを貰い机の前にある応接セットで向かい合って座った。
「そういえば名乗ってませんでしたね。俺の名前はセイジです。」
「セイジ君だな、早速だが依頼の話をさせて貰おう。セイジ君にはここの迷宮でミスリルゴーレムを討伐し、魔核石と落とす素材を私の所に持って来て欲しい。」
「ミスリルゴーレムは9層で稀に出現する魔物で武技や魔術の利きが悪くて倒しにくいが倒せれば貴重なミスリルを手に入れる事が出来る。ギルドで見た資料の受け売りですけどこの魔物の事ですよね。」
「その魔物だ。付け加えると出来るならゼス教団の騎士達に先んじて欲しい。」
「すいません。経緯や背後関係が全く分からないのでそこも教えて頂けますか?」
クージンさんは頷いてこの街の事から話始めてくれた。
このダレンの街はギルドと街の有力者が作る評議会が収める自治都市のような街だそうだ。
西側と東側どちらに対しても中立的な立ち位置で街を運営してきたがゼス教団の一部の騎士が街の運営に干渉して来ているそうだ。
具体的には西と東双方にとって重要な素材の供給地になっているダレンの迷宮をこの街のギルドが上手く運営出来ていないと難癖をつけて、ゼス教団の騎士が迷宮の運営権の一部を譲れと迫って来ているそうだ。
「具体的な方法としてゼス教団の騎士達は、自分達の実力とギルドの能力不足を自分達でミスリルゴーレムを討つことで証明し、それを口実に迷宮の運営に口を出すつもりなんですね。」
「その上ギルドに所属しているミスリルゴーレムを討てる討伐者を護衛として雇いギルドが対処出来ないようにしている。」
「自分で原因を作っておいてそれを理由に口を出してきているんですか。あざといですね。いっそ要求を突っ撥ねる事は出来ないんですか?」
「東との貿易を生業にしている評議員もいる以上ゼス教団と絶縁する訳にはいかないんだ。そこで最初の話に戻る。ゼス教団の騎士より先にミスリルゴーレムを倒して貰いその素材で教団側を黙らせたいんだ。」
「なるほど、大体の事は分かりました。最後に俺に依頼を出すのはなぜですか?」
「気を悪くしないで欲しいんだが、今評議会はこの街に居る教団の息の掛かっていないミスリルゴーレムを討てる可能性がある全ての討伐者に声を掛けているんだ。その協力要請が私の所にも来ていてね、それが理由だ。」
「そうだったんですね。確かに護衛中魔法武技を使いましたからそれでですか。」
「そういう事だ。事情や背景はこんな所だ。セイジ君、まだ何か確認したい事はあるか?」
これからも事を考えると奴隷商と繋がりを持っておきたいが未見の魔物の討伐依頼である以上保険が欲しいし、ゼス教団とは接触したくない。
これらの条件を飲めるか確認しよう。
「幾つか引き受けるには条件があります。」
「分かった、聞こう。」
「まず依頼が失敗しても損害を請求しないで下さい。」
「それは当然だ。他の討伐者にも同様の依頼が出ている以上そんなことはしない。」
「では依頼が成功した場合ゼス教団に対して俺の情報を秘匿してください。街と教団の争いに巻き込まれたくないんで。」
「それも問題ない。ゼス教団の奴らに同じ手を使われないように協力してくれる討伐者の情報を伝えるつもりはない。」
「俺の条件はこれくらいです。」
「なら後は報酬をどうするかだな。」
クージンさんは一度ソファーに背を埋めて考えてから切り出した。
「報酬はさっきセイジ君を案内した子を無償で譲るということで如何だろう。あの子は今家にいる奴隷の中で一番の器量をしているし、セイジ君も気に入ってくれていたようだし、どうだろう?」
「奴隷の正確な値段は知りませんが、あの子の器量を考えると白金貨じゃあ足りませんよね、報酬の方が多くなり過ぎませんか?」
「確かにあの子なら聖銀貨3〜5枚位の値が付くだろうがミスリルゴーレムの素材も十分聖銀貨に届く。それに上手く行けば評議会に恩も売れるから、私に損は無いよ。」
「そういう事なら俺の方も問題はありませんから、今の条件で依頼を受けます。アルバンさんとジャンナさんに許可を貰えたらミスリルゴーレムを狙ってみます。期限は何時までになりますか?」
「ゼス教団がミスリルゴーレムを仕留めるまでにしよう。期限が過ぎてもミスリルゴーレムの素材は適正値で買い取るけど、アルバンやジャンナの許可が出なかった時や失敗したり断念した時は連絡して来なくていい。勿論奴隷を買いに来てくれるのは大歓迎だ。」
「分かりました。必ずあの子を貰いに来ますよ。」
「そうしてくれ。」
握手をしてクージンさんの前を辞して奴隷商を出る。
大通りに出てアルバンさんの魔法薬店まで戻って来て、店の脇を通り裏から店に入った。
アゼル君の相手をしていたキャミーちゃんにアルバンさんとジャンナさんは作業を続けていると聞いたので作業をしている部屋に入り受け取りを渡してクージンさんからの依頼の話をすると二つ返事で達成しろと命令された。
許可してくれた理由を聞いてみると迷宮運営へ干渉されるとなし崩し的に町の自治にまで干渉してくるだろうからそれは見過ごせないそうだ。
今日はもう昼をだいぶ回っているのでミスリルゴーレムを追うのは明日からにして夕食まで100本分のライフポーションを造った。
キャミーちゃんの作ってくれた夕食を食べ離れに戻り風呂を沸かして入ってこの日はそのまま眠った。
お読み頂き有難う御座います。




