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始まりの日 1

 窓からの朝日を感じて目が覚める。

 息苦しさのない目覚めが異世界に来たんだということを再認識させてくれた。

 昨日の夜の事を思い出していると眠気は直ぐに晴れたのでベッドから起き上がる。

 昨日の夜に考えた思いつきを実行するため部屋の前に居るはずの騎士に声を掛けた。

 食堂に案内しようとする騎士にヴァルデルさんと話をしたいと告げると、問題ないと案内を始めてくれた。

 簡単に要望が通ったことについて質問するとヴァルデルさんへの質問や要望は必ず取り次ぐよう命令されていた様だ。

 

 騎士の後ろを歩いていると外の景色が目に留まる。

 昨日は夜でよく分からなかったが、かなりの高さの山脈が地平線まで続いているようだ。

 その景色に目を奪われていると案内の騎士がある扉の前に立ち止まり中に声を掛けた。

 中にはヴァルデルさんが居る様で部屋に通すように返事が返って来る。

 案内の騎士が扉を開けてくれて中に入るとヴァルデルさんは机で書類整理をしていた。

 ソファーを進められ俺が座ると、ヴァルデルさんも机から俺の正面に移動して腰を掛けた。

「話が在ると言う事だが、どの様な事だろう?」

「単刀直入に尋ねます、常時戦闘の初心者を受け入れて鍛えている、そんな場所や組織を紹介してもらえませんか?」

「必要があるとは思えないな。昨夜も言ったが魔物との戦いが不安ならそこに居る騎士を護衛に連れて行けばいい。装備を渡す時に話すつもりだったが君たちが望む武器に対応するスキルをBPできちんと取得すれば、君の素養の高さなら二〜三日護衛の騎士と一緒に魔物を倒せば、以降は一人でもやっていけるはずだ。」

「いえ、紹介をしてほしい理由を厳密にいうと納得するまで走り込みや武器の素振りなんかの基礎訓練をやりたいからなんです。ここでそれをやって目立たないなら問題は無いんですが?」

「確かに此処でそのような事をやれば目立つが、本当にそんな事がしたいのか?」

「ええ、実は此処に呼び出されるまで病気で臥せっていまして。」

「待て、病気だと?それは移るものか?」

「いえ、家族が年単位で看病してくれましたが誰にも移らなかったし、ここに呼ばれてから症状はきれいに無くなってます。」

「なるほど、話を遮って悪かった続きを聞かせてくれ。」

「分かりました。病気の症状は息がうまく出来なくなるというもので、病状が酷くなったここ一年程は真面に体を動かせていません。だからまず走り込みや素振りで体を動かすという感覚をきちんと取り戻したいんです。」

「それで目立たないように初心者を訓練している所を紹介してほしい、と。」

 頷く俺を見て、ヴァルデルはソファーに身を沈めて考え込んでから口を開いた。

「迷宮ギルドという組織が在る。」

「迷宮ギルドですか?」

「そうだ。元は各地にある迷宮間で討伐者、魔物を狩る者をこう呼ぶのだがその者達を有事の際に融通しあう互助組織として始まったのだが、今では迷宮から持ち出される様々の物品の流通や迷宮周辺住民から討伐者への依頼の斡旋、未熟な討伐者への訓練も行っている。」

「そこを紹介してもらえると?」

「そうだが、迷宮ギルドは手配のまわっている犯罪者のような者以外ほとんどの者が登録できる。紹介は必要ないが守ってほしい事が在る。」

「分かりました。条件を行ってください。」

「まず身元を偽ってほしい。」

「召喚された事を隠して、出身を誤魔化せばいいんですね。」

「ああ、次にギルドの人員とパーティを組まないでほしい。」

「それも情報を隠すためという理由でいいですか?」

「そうだ、最後に此方が引き揚げを命じたらギルドを脱退してほしい。」

「分かりましたけど、脱退を命じるまでどれ位の時間が在りますか?」

「悪いが君の体が完治していると確信を持つための時間がほしい、その間此処の者達との接触を減らしたい。昨夜話した訓練の期間と同じ三か月という事でどうだろう?」

「こちらの要望を飲んでもらった以上文句はないです。なら出身を聞かれたときの答えを考えとかないといけませんね。」

 どんな出自にすれば不自然にならないか考えていると、不意にさっき見た山脈が思い浮かぶ。

「こんなのは如何でしょう、さっき見えた大きな山脈にある名前もついて無い様な小さな農村から口減らしのために行商人についてこの町に来た、です。如何ですか?」

「そのくらいが一番不自然にならないだろうな、渡す装備も新品という訳ではないから村に在った物を餞別として貰った事にすればいい。金も行商人相手に少しずつ貯めていた、でいいだろう。」

「お金を貸してくれるんですか?」

「無一文で旅をするなどあり得ないからな。」

「助かります、なら寝食もその金でどこかに宿を取った方がいいですか?」

「いや、泊まって貰った部屋をそのまま使ってくれ、食事もここの食堂でとってくれていい。」

「駆け出しの討伐者がこの教会でうろうろしていてもいいんですか?」

「ああ、教団の慈善活動として怪我をしたりまだうまく稼げない討伐者に宿を提供しているのでな。」

「分かりました。ああそういえば名前はどうしたらいいですか?偽名を考えたほうがいいですかね?」

「いや、下手な偽名をつける必要はない。家名を持っているようだからそれだけ外してくれればいい。」

「なるほど、ならただセイジとだけ名乗ることにします。最後に装備の事で相談させてください、武器は槍か剣と盾どちらかにしようと思っているんですが、迷宮にはどちらが向きますか?」

「剣と盾だろうな。迷宮には狭所もある、そこでは槍は使いづらいだろう。」

「アドバイス感謝します。食事をして装備を受け取った後、迷宮ギルドに行こうと思いますけど誰にギルドまでの道を聞けばいいですか?」

「ギルドの場所は皆知っているが、扉の外に立つ騎士に聞けばいい。此処の敷地を出るまで護衛として君につけておく。」

 頷いて俺が立ち上がると少し待てと声を掛けヴァルデルさんも立ち上がり机の方に移動し、一掴みほどの袋を差し出してきたので受け取った。

「それは先ほど貸すと言った金だ。後で中を確認しておいてくれ。」

「不躾ですが、これでどれ位の事が出来できますか?」

「討伐者用の宿屋に十日程泊まれるくらいだ。」

「有難う御座います、なるべく早く返済しますよ。」

「期待していよう。」

 これで話は終わったがいずれ試さなければいけない事なので、対面でヴァルデルさんに万象の鑑定眼を使ってみる事にした。


ヴァルデル・カーマン Lv41

クラス 騎士Lv40

筋力 205

体力 164

知性 82

精神 123

敏捷 82

感性 164

アビリティ

堅体

体内障壁

スキル

8個


 きちんと鑑定眼は発動しヴァルデルさんの情報が見て取れるが、ヴァルデルさんは此方の能力の発動に気づいていないようだ。

 対抗のアビリティやスキルが無いとこの鑑定眼は発動を感知されないのかもしれない。

 いろいろな人に試して確証を得よう。

 本当にここでやることが終わったのでヴァルデルさんに食堂に行く事を告げ、部屋を出て護衛の騎士に案内を頼みその後を付いて行った。


お読み頂き有難う御座います。

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