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岐路 4

 目一杯に広げていた拡縮の遠視眼の視界に飛び込んで来た影たちは、ファンタジー小説に出てくるガルーダの様な大きな鳥、グリフォンやヒポグリフの様な飛行する魔獣、そして大小のワイバーンとそれらに騎乗する騎士達で構成された一団だった。

 合計で三十騎程の集団だったが一騎、一騎がヴァルデルさんと互角の存在感を放っており、最大のワイバーンに騎乗している騎士はヴァルデルさんを遥かに上回る存在感をしていた。

 飛行魔獣に騎乗した騎士の一団は真っ直ぐコリレスの街を目指して来たが、街の手前5キロ程まで来ると大半が円を描きながら滞空し始め、グリフォンやヒポグリフに騎乗した3騎だけが変わらず街に直進してくる。

 直進してくる3騎は迷うことなく盗賊が周囲に伏せている門を目指し、門を守っていた教団の騎士に襲いかかった。


 飛来した騎士達は自身を気付かせる事無く上空の死角から門の上に居た騎士に投槍を放ち一撃で仕留めると、門内に在る教団の騎士の詰所付近に騎乗していたグリフォンやヒポグリフを下ろし詰所に斬り込んだ。

 奇襲を受けた教団の騎士達は数では上回っていたが対応できず、飛行魔獣に騎乗していた騎士達に皆打ち取られてしまった。

 襲撃した騎士達はすぐさま自身の騎獣に跨り空に舞い上がったが、襲撃をした3人の内1人は舞い上がる直前合図を送るように詰所近くの物陰に視線を向けていた。


 飛来した騎士達が舞い上がり暗視スキルの無い目では夜空に溶け込むように見えなくなると先程の物陰から三人の男達が飛び出してきて門に取りつく。

 三人で閂を外して二人が扉を押し開く中、もう一人が魔術で灯りを作って合図をすると周囲の森に伏せていた盗賊たちが一斉に門に殺到し始めた。

 盗賊の大半は走りだが中には馬に騎乗している者達もいて、扉が開ききると同時に馬に騎乗している者達がコリレスの街に雪崩れ込み、数十秒して走りの者達が続いて行った。


 開いた門から波が広がる様にコリレスの街に暴力が広がって行き、街のあちこちで略奪、強姦、殺害、放火が起こり始め、コリレスの街に複数の火の手が上がる。

 上空を旋回していた飛行魔獣に騎乗する騎士の一団は火の手が上がるのを待っていたようで一斉に街へ突撃して行く。

 5キロの距離をあっという間に移動し混乱が深まるコリレスの街を無視して教会の上空に出ると、出動の為迷宮前に集まっていた教団の騎士達に頭上から投槍を行う。

 不意を突かれた教団の騎士達は3分の2以上倒されたが後は建物の下に逃げ込み上空と地上でにらみ合いになった。

 

 教団と王国の戦いが膠着状態になったので事態が再び動き出す前に俺以外の二人の標的、片桐君と千葉さんの現状を確認しておきたいが、街に飲みに出ると言っていた千葉さんを混乱するコリレスの街の中から見つけ出すのは至難だろうから教会に居ると思う片桐君の方から確認しよう。

 教会の建物の中を調べると予想通り片桐君を見つける事が出来たが、片桐君がパーティを組んでいた騎士に背負われてヴァルデルさんの執務室に運び込まれているのは予想外だった。

 運び込まれる片桐君に続いてセフィネアさんもヴァルデルさんの執務室に入って口を開きそれを読唇術で拾う。

「ヴァルデル様、ご命令通り勇樹を連れてきました。勇樹は街の人達を助けると言って私達の制止を振り切って街に出ようとした為に止むを得ず気絶させました。」

「ご苦労、では次の命令を伝える。セフィネアお前は直ぐに緊急避難地点への転移準備に入れ。同行者は片桐、千葉、上條の三名で前者程優先順位が高く同行者が揃った時点で即転移しろ。加えてもしもこの教会の騎士達が全滅したもしくは全滅が必至になったらその時点で同行者が揃っていなくても緊急避難地点に転移しろ。」

「ヴァルデル様、命令の理由をお聞かせねがえませんか?規模が大きいとは言え盗賊の襲撃程度で緊急避難地点への転移は行き過ぎなのでは?」

「襲撃して来ているのは、盗賊どもだけでは無い。つい先程迷宮前に集合していた第2次掃討部隊が空からの投槍による攻撃で半壊した。攻撃を仕掛けて来たのは飛行型の幻獣に騎乗した一団で錬度から見て恐らくガリアレス王国の幻獣騎士団に連なる者達だろう。」

「ガレリアス王国と言えば東ヴァルノムの東部に位置する大国ですね。」

「そうだ。付け加えると幻獣に騎乗して戦う精強な騎士団が有名だ。襲撃をしてきた奴らが評判に違わぬ実力をしていたならここの戦力では時間稼ぎをするのが精一杯だ。」

 ヴァルデルさんが言い終えた次の瞬間執務室に騎士が飛び込んでくる。

「失礼します。上空を旋回していた連中が降下してきます。」

 その報告にヴァルデルさんは席を立ちセフィネアさんに並びかけて

「セフィネア、すぐに転移の準備に入れ。そして先の命令を厳守せよ。準備が終わるまでの時間は何としても我らが稼ぐ。」

「ご命令承りました。ヴァルデル様も御武運を。」

 ヴァルデルさんは頷いて執務室周辺に居た騎士達を連れて報告に来た騎士に先導をさせて歩いて行き、片桐君と執務室に残ったセフィネアさんはプラーナとマナを練り上げていくようだ。

 

 ヴァルデルさん達は直ぐに執務室が在った建物を出るが既に王国側の騎士達は地上への降下を完了していて、グリフォンやヒポグリフに騎乗している者はそのままガルーダやワイバーンに騎乗していた者は騎獣を空に残して地上に立っていた。

 その姿を見た教団側騎士達は若干萎縮をするが、ヴァルデルさんは騎士達の中から進み出て堂々と名乗りを上げた。

「私はこの教会の責任者を務める騎士、ヴァルデル・カーマンだ。卿らも騎士ならお互いに堂々と名乗りを上げ、剣を交えて決着をつけようではないか。」

 ヴァルデルさんの名乗りを無視し幾人かの王国の騎士が切り掛かろうとするが、最大のワイバーンに騎乗していた別格の騎士が一歩足を踏み出すとその動きを止め、王国側の騎士達は道を開け別格の騎士が進み出た。

「我が名はグレアム・バルバー、栄光あるガレリアス王国第三幻獣騎士団の長を務める者だ。卿の意気や良し。要望通りに決着をつけようぞ。」

 そう言って剣を抜くグレアムに合わせてその場に居る全員が武器を構えて、双方の長の号令に合わせて一斉に激突した。


 最初の5分ほどは拮抗した戦闘が続いていたが教団側の騎士が一人また一人と倒されていき、戦闘開始から10分程が過ぎるとヴァルデルさんとグレアムの一騎打ちの状態になり、最後はグレアムの剣がヴァルデルさんを貫いて教団側の騎士達は全滅した。

 戦闘に注目し過ぎて確認していなかった片桐君とセフィネアさんが居る筈の部屋に視線を向けるとその姿は何処にも無く、戦闘中に転移してしまった様だ。

 此処から王国側がどう動くかで俺の行動も決まるのでグレアムの周辺に注目していると、大通りの物陰からゼルダンを含む数人がグレアム達に近づいて行った。


お読み頂き有難う御座います。

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