表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/126

見付けた秘密 2

 ゴブリンカーズナイトを倒せた御蔭だろうレベルが上がる時に感じる体の芯から力が湧き上がってくる感覚がする。

 俺自身を鑑定してみるとレベル14に上がっていた。

 設定していたクラスも皆レベル14に上がっていたが、魔法戦士のクラスはまだ解放されてはいない様だ。


 多少残念ではあるがゴブリンカーズナイトが落とした武具一式の鑑定に移ろう。

 ゴブリンカーズナイトが落とした物は、皆同じ金属的な質感のする鞘に入った剣と小盾に部分鎧だ。

 まず鞘から剣を抜いてみると日本刀で鍔に当たる部分の形状は少し違うが、刃や柄の長さと形は今使っている剣とほとんど変わらない両刃の剣に様だ。

 盾は質感が違うだけで形は今俺が使っている物と同じで、鎧も十分に俺が着る事が出来るサイズのようだ。

 一つ一つの品を順番に手に持って万象の鑑定眼で鑑定していく。


鋼鉄の剣 Lv1

付与 なし


鋼鉄の盾 L1

付与 なし


鋼鉄の鎧 Lv1

付与 なし


 俺が今使っている剣と盾に鎧はレベルが10近く在って性能を単純に比較できないが、レベル1の状態を類推して比べてみると、剣と盾で一回り、鎧で二回り程ゴブリンカーズナイトが落とした物の方が上回っている様だ。

 

 本来ならすぐにでもこれらの武具に装備を更新したい所だが、今俺が身に着けている装備にはゼス教団が俺の位置情報を知るための付与である被探知が施されているので装備の変更は躊躇われる。

 自前で用意した物でも俺が勝手に装備を変更すれば、ゼス教団は新しい装備にも被探知を付与しようと何か言ってくるはずだ。

 折角ゼス教団に気付かれる事無く運よく手に入れる事が出来たゼス教団に細工をされていない装備一式に被探知を付与されてしまうのは余りに勿体ない。

 どうしても教団から逃げ出したくなった時に必ず必要な物になるからだ。

 だがゼス教団にばれない様にこれらの装備一式を保管する方法が思い浮かんでこないので、先に祭壇の様な場所を調べて仕舞おう。


 壁際に在る祭壇のような物は、床に描かれた円とその中心に在る水晶球のような物が上に安置された真ん中が細くなる円柱で構成されている。

 十分に近づいて鑑定してみると転移エレベーターと表示された。

 もっと詳しく鑑定の情報を読みだしていくとこの転移エレベーターという物は使用者のプラーナとマナを使って駆動し、地上や他の階層に設置された転移エレベーターの場所に転移法術で転移出来るという物のようだ。

 試しに鑑定で読み出せた起動の手順通り水晶球の部分に手を触れてプラーナとマナを流し込んでみると、水晶球の部分が光を帯びる。

 続いて俺の頭の中に転移先のリストが浮かんできた。

 地上、五層、十層、十五層と続いて行き五層刻みに八十層まで転移エレベーターは設置されているようだ。

 

 転移法術を使うという所が若干不安だがこれが実際に動くなら迷宮の深層への移動がかなり楽になる。

 危険が在るかもしれないが有用そうなので試しに使ってみよう。

 さすがに下の層に転移する勇気は無いのでリストから地上を選択し転移エレベーターを起動してみた。

 水晶球に触れている手からプラーナとマナが吸い出されていき、床に描かれていた円に光が灯る。

 灯った光は強さを増して立ち上り、床に描かれた円を底面とする高さ3mほどの円柱を俺の周囲に形作った。

 そこからはあっという間で周りの景色が歪んだと思ったら次の瞬間、周囲が暗闇に包まれた。


 光の円柱が消え転移エレベーターの水晶球が放つ僅かな明りを光源に周囲を見渡すと、移動した場所は半径5mほどの半球状の部屋の様だ。

 暗視スキルを使い詳細を確認すると、床は平らで一か所壁に向かってスロープが在り、半球上の覆いの部分も綺麗な球面で転移エレベーター以外部屋の中には何もなく出入り口も見当たらなかった。

 万物の透視眼も合わせて使いさらに詳しく調べるとスロープが在る壁が開くようで、透視した壁の内部構造を見ると内側から押し開く構造で外側には持ち手のような物は見当たらない。

 外側から開くには強引に持ち手を取り付けるか念動力のような魔法が必要そうだ。


 続けて透視眼の視野を広げて俺は驚いた。

 周りに森が広がっていたからだ。

 その上この転移エレベーターの設置場所は巨石の内部に当たるようだ。

 万物の透視眼だけで見渡せる周囲は森ばかりで街に続く道らしき物は無い。

 拡縮の遠視眼と併用が可能になったらこことコリレスの位置関係を確認しないといけないだろう。

 

 一端魔眼と暗視スキルを切って視点を手元に戻した所で不意に目に入った鎧の手甲がかなり不味い事を気付かせてくれる。

 俺の装備品には教団が俺の居場所を調べられる機能が在る。

 そして転移エレベータの地上設置場所は勝手にコリレスの町中だと思い込んで地上に転移したが、実際は街の外だった。

 この二つの事実から俺が相談や連絡なく監視の掻い潜って勝手に町の外に出たと教団に誤解される可能性が出てくる。

 それは大変不味いので、もう遅いかもしれないが俺は慌てて転移エレベーターを操作し五層に転移した。

 光の円柱が消え鋼鉄の武具一式が目に入った所で一息吐く。


 かなり大きな失敗をした可能性があるがだからこそこれからの事をきちんと考えておこう。

 まず町の外に出たことを気付かれていた場合は間違い無く教団が詰問してくるだろう。

 転移エレベーターの事を教団が知らないなら監視を掻い潜った方法を、知っているなら転移エレベーターを俺が知った経緯を問われることになるだろう。

 どちらにしても俺にも特別な能力が在るのではと疑われて教団からの監視や干渉がきつくなると思っておいた方がいいだろう。

 もし幸運にも町の外に出たことが気付かれていなかったり、気付かれていても教団から何も言って来ない場合は、転移エレベーターを見つけた事自体を誰に対しても秘密にしよう。

 転移エレベーターを見つけた事を話せば芋づる式に発見手段を聞かれ魔眼の事もばれてしまうかもしれないからだ。


 そこまで考えて足元に在る鋼鉄製の武具一式に目が行った時、これらのいい保管場所と俺以外が転移エレベーターを利用しているか確認するいい方法を思いつく。

 転移エレベーターの地上の設置場所にこれらの武具を保管し、誰かが武具を動かした場合は分かる様にしておけばいい。

 もし誰も転移エレベーターに気付いてないなら武具はそのままだろう。

 その場合あそこは絶好の保管場所になるし、転移エレベーターをいざという時の秘密の逃走経路として考えられる。

 また他の誰かが転移エレベーターを使っているなら武具を持っていくか最低でも確認の為に動かすだろう。

 最悪の場合武具を持って行かれるのは残念だが俺が見つけた事に気付かれる事無く他の人間が転移エレベーターを使っている事を確認できるのだからよしとしよう。

 どうやって武具を持って行こうか一瞬悩んだが、地上とここの転移での行き来を教団から誤魔化す意味を含めて今の装備から鋼鉄の武具一式に装備を変えて地上に転移すればいいとすぐ気づけた。

 今の装備を脱いで鋼鉄の武具一式を装備してみると誂えた様にサイズはピッタリだった。

 そのまま転移エレベーターで地上に転移し鋼鉄の装備を脱いで一か所に纏めて置く時、外からは見えず武具を動かせば必ず落ちる場所に服から取った糸を挟んで置いた。

 

 武具を片付けるとゴブリンカーズナイトとの戦闘中に魔眼を組み替えてから一時間経ったようで魔眼を拡縮の遠視眼と万物の透視眼に組み替えてコリレスの街を探す。

 街はすぐに見つかり、こことは1km程離れている様だ。

 地上の転移エレベーター設置場所とコリレスの街の位置関係も確認し終えたのでまた五層に転移する。

 教団からの装備を着け直した所で今日はもう迷宮を出る事にする。

 教団から何か言われるんじゃないかと考えながら魔物と戦うのは危険だと考えたからだ。

 迷宮を出て教会の自分の部屋に戻り、夕食と風呂以外部屋にずっと居たが教団から俺を訪ねてくる人はいなかった。


 それから二週間以上は、特段に変わったことは起きなかった。

 朝起きて朝食をとりギルドで朝練をして昼食を買い迷宮に潜る。

 迷宮で魔物を狩り得た物をギルドで換金し教会で夕食を食べ風呂に入る。

 風呂から出るとまたギルドに戻りアーツブックやいろんな資料を読み部屋に帰って寝る。

 その繰り返しで過ぎて行き、教団も以前からの監視だけでそれ以上の接触はしてこなかった。

 魔物を狩る時間が少なくなり過ぎるため八層から下には行かなかったのでその所為かレベルは14のままだが、剣と盾と鎧に体術の武技アーツを幾つかずつ新たに覚え、元素魔術や障壁法術の新しいアーツに結界法術と生活魔術を身に着けた。

 残念な事に転移法術はアーツブックが無く覚えられなかった。

 俺たちが召喚されてから1ヶ月ほどが経ち、レベルを上げる為転移エレベーターを使い下層を目指すか、結界法術を使って野営をしながら下層を目指すか、アーツを覚え知識を蓄える事を重視し現状を維持するか、悩んでいた俺の魔眼にその男が映った。


お読み頂き有難う御座います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ