表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/126

港町での取引 10

 ノルトレン司祭と約束した魔核石を納める日の朝、身支度を整え宿を引き払うと転移法術を発動する。

 ヘルクス教会の前に移動すると僅かだが危機感知に反応する気配があった。

 すぐに反応の元を確認したかったが向こうからの視線を遮るため門衛にノルトレン司祭へ面会を希望し礼拝堂へ通して貰ってから魔眼を向ける。

 その気配を鑑定してみるとやっぱりザンバロの手下で教会の前で感じた時より一人数が減っているので伝令に走ったんだろう。

 こうなると魔石納品の後歩いて街を出ればザンバロとあの用心棒達に追われる事になりそうだ。

 あの用心棒への対策はきちんと考えたので襲ってきたところを返り討ちにしてもいいが、用事が済んだ後は多少失礼だが教会内で転移使わせて貰うとしよう。


 戻ってきた門衛にノルトレン司祭の執務室へ案内して貰いもう机で仕事を始めていた司祭へ一礼した。

「お久しぶりです、司祭様。約束の数の魔核石を揃えてきました。」

「疑う訳では無いが数の確認はさせて貰う。現物を出してくれ。」

 司祭へ頷き50個ずつに分けておいた魔核石の袋を4つ机の上に出した。

 どうやったかは分からないがノルトレン司祭は袋の口を開け中を覗いただけで数が分かったようで4つとも一瞥すると俺へ向き直った。

「たしかに丁度200あるな、ご苦労だった。これで完済証明の件は終わりだが、実は折り入ってお前達に依頼したい事がある。」

「依頼ですか。」

 先にエグモント氏の契約書の裏事情を聴きたかったので多少顔をしかめてしまったんだろう、ノルトレン司祭が宥めるように口調で話を続ける。

「そう嫌そうな顔をするな、この依頼は先の借用書にも関連しているからまず話を聞け。今回の事件の黒幕を明らかにするため、わたしはまずどういう経緯でザンバロへあの借用書が渡ったのか調べる事にした。それで最初の権利者である鉱石屋の元へ話を聞きに行くとアミオンにある鉱山ギルドへ借用書を売ったと答えた。かのギルドが何故借用書を欲しがったのかその理由も聞くと高性能な鍛冶製品を作り出すエグモント氏と繋がりを作りたいからだと聞いていて、商売の助けになると思って売ったと鉱石屋は話している。なのでアミオンの鉱山ギルドへ問題の借用書を誰にいつ手放したか開示するようギルドの魔道具通信で連絡を送ったが、鋭意調査中という返事が5日前に返ってきただけで以後の連絡は全くない。黒幕を見つけると大きな事を言ってこの程度の事しか判明していないのは忸怩たる思いだが、今分かっているのはこれだけだ。ここまでの話は分かるな?」

 表情を引き締めノルトレン司祭へ頷くと話を続けてくれる。

「ここからが本格的な依頼の話になるが、そういう訳でわたしからアミオンを訪れ直接鉱山ギルドへ借用書の件の詳細を問いただしてみようと思う。そこでセイジ達に道中の護衛を頼みたい。きちんと報酬を払うし判明した事実はお前達にも伝えよう。細かい条件は後で詰めるとして、まず引き受けるかどうか答えてくれ。」

「俺達でいいんですか?」

「ああ、頼む。今はデスクワークばかりしているが若いころは魔物の討伐に参加していたし、先日お前が見せた気鎧から腕前がどれ位かは分かるつもりだ。討伐者に動員が掛かっている今の直轄領でお前達と同等の腕前の者へは余程運がないと頼めないからな。」

 ノルトレン司祭のこの口ぶりだと俺達が護衛を断ってもきっとアミオンへ向かうだろう。

 俺達と面会の後ザンバロに監視されている中で街を出れば手掛かりを得ようとあいつ等の襲撃を受ける可能性が高い。

 ノルトレン司祭の言う通りあの用心棒達を返り討ちに出来る護衛の手配は難しそうだから俺達が断れば司祭を見殺しにする事になる。

 流石にそれは後味が悪いので護衛の依頼は引き受けるとしよう。

 ただザンバロ達との接触を避け転移法術でアミオンへ行き来すると俺達が護衛から外れた後もノルトレン司祭がずっと付け狙われる可能性がある。

 あの用心棒達の能力を精査し対策は立ててあるので気付かぬふりをしてシュクラを歩いて出てザンバロ達が襲ってきたところを返り討ちにして後の憂いを断ち切るとしよう。

「そこまで司祭様に評価して頂けるなら謹んで護衛を引き受けさせて頂きます。報酬と出発日時を教えて下さい。」

「お前達の腕と日程を考えると往復で5万ヘルク出そう。出発はどうしても処理していかねばならんこの書類の片付けが終わったらすぐだ。」

「司祭様の準備は終わっているのですか?」

 ノルトレン司祭は大様に頷いてくれる。

「では、俺達も直ぐに準備をしてきます。」

 もう一度大様に頷いて書類仕事に戻った司祭へ俺達も一礼して執務室を後にした。


 ヘルクス教会を出て保存食や矢のような消耗品の買い出しに向かうと案の定ザンバロの手下もつけてくる。

 買い物中に街中で仕掛けてくるかとも思ったが手下たちが交替で後をつけてくるだけに終始した。

 俺達の旅支度を理解しザンバロも街の外でしかける事にしてくれたようだ。

 こうなるとなるべくシュクラ近くでの襲撃を誘導するため買い物の後ギルドを訪れ、中までつけてきた手下へ聞こえるようにアミオンへの道を尋ね地図を用意して貰った。

 気付かぬふりをして手下を引き連れヘルクス教会へ戻ると礼拝堂でノルトレン司祭と従者が一人旅支度を終えていた。

 待たせた詫びを入れると直ぐにヘルクス教会を出発した。



お読み頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ