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港町での取引 9

 魔眼で詳細な場所を確認し普通に歩くとシュクラから半日ほどかかる道の上へ転移で移動する。

 無事転移を終え周囲を見まわすと目の前には迷宮へ向かう地下への階段を覆う小屋があった。

 他にはギルドの看板を掲げた大きな建物に数件の宿屋があるがそれ以外は全て森が広がっていた。

 シュクラの街の中にあるギルドの建物よりここにある物の方が大きいので、こちらがシュクラの支部で街中にあるのは出張所なのかもしれない。

 すぐに迷宮へ向かってもよかったんだがもうすぐ昼なので一番大きな宿屋で6人部屋を1週間押さえ昼食もとって迷宮へ向かった。


 いつものようにカードを入口の警備員へ見せ迷宮に入ろうとすると彼らの表情に少しだけ驚きが浮かぶ。

 些細な事だが気になったので俺から話かけた。

「すみません。俺達を見て驚かれていましたけど、何かおかしかったですか?」

「不快にさせたのならすまなかった。ここにまだランクDの討伐者が残っているのが意外だったんだ。許してくれ。」

「別に謝罪は必要ないですよ。ただどうして驚いたのかその理由を教えてくれますか?俺達2〜3日前まで船旅をしていてこの辺りの情報に疎いんです。」

 そう問いかけると警備員達は納得した表情で説明してくれた。

「確認するんだが近くの魔境に氾濫の兆しがあるのは知ってるか?」

「はい、それは知ってます。」

「その対策のために5日前近衛騎士団からギルド経由で王家直轄領内の討伐者に傭兵募集がなされたんだ。近衛の指揮の元で活躍すれば出世の近道になるからな、募集の最低条件のランクE以上の奴はみんな応募してた。ランクD以上は全員、ランクEも半分採用されたって聞いたからあんた達のカードを見てちょっと驚いたんだよ。」

「なるほど、よく分かりました。後一つ教えて下さい。その募集、罰則のある強制命令だった訳じゃないんですよね。」

「ああ、志願者の中からの選抜だったって聞いてる。」

 昨日ギルドに顔を出した時声を掛けた受付嬢からこの傭兵募集の話が出てこなかったのは強制徴兵じゃなかったからだろう。

 質問に答えてくれて警備員へ礼を言って迷宮への階段を下りていった。


 扉を開け迷宮へ入ると魔物と接触する前にミラへ声を掛ける。

「最初はミラがどれくらい動けるか見せて貰う。この迷宮はゴブリンにオークやリザードマンみたいな亜人型の魔物のみパーティーを組んで出てくる場所だそうだから戦士型のやつと一対一で戦ってみてくれ。周りの邪魔な奴らは俺達が仕留めるから。」

「分かりました。がんばります。」

 力強く頷いてくれたミラに脅えや気負い過ぎは感じられないので早速一番近くの魔物の群れへ向かった。

 最初に行きあった群れはゴブリン4匹のもので短剣装備が2に弓が1と杖が1の構成だった。

 曲がり角の向こうに群れはいるのでまず俺がファイアーアローの曲射を3連続で放ち、短剣装備を1匹残してその他を仕留めるとミラに突撃してもらう。

 俺達の中でミラが一番重装備なんだがその重さを感じさせない滑らかな動きで走り出すと中々の速度で角を曲がる。

 そこでゴブリンがミラに気づき威嚇の声を上げるがそのまま躊躇なく間合いを詰めると両手に持った大鎚を横薙ぎに一閃した。

 横から大鎚が直撃したゴブリンは真横に吹き飛び迷宮の壁へ叩き付けられるとそのままもう動かなかった。

 ゴブリン達が素材に変わりそれを回収するとミラが俺に問いかけてくる。

「あの、わたしの動きどうでしたか、旦那様。」

「十分なレベルで動けてるよ。後は俺達との連携を強化していこう。」

 表情を引き締めたミラだけじゃなく他の4人の頷いてくれたのを確かめ次の魔物の群れへ向かった。


 それからオークやリザードマンの群れとも戦ってみたが、ミラはどちらも鎧で攻撃を受け流しながら鎚で叩き潰してくれ十分に前衛役をこなせると証明してくれる。

 ただ相手の攻撃を避けるタイプではないとはっきりしたので盾を持ってもらい防御を強化するのは必須だろう。

 あと遠距離攻撃の手段がないようなので弓か弩を持ってもらうのも確定だ。

 俺達との連携は拙いながらもミラはよく周り見て動いてくれるので場数を踏んでいけは自然と上達するはずだ。

 連携の大まかな確認が済んだ後は魔物を数多く仕留める事を目的に下層へ行くのに拘らず迷宮を探索していく。

 時折カードで時間を確認しながら夕方まで魔核石集めに専念し転移で迷宮を脱出すると部屋を取った宿屋へ引き上げた。

 

 夕食後面倒くさい諸々がようやく一段落してくれたので部屋に遮音結界を展開してみんなに相手をして貰う。

 まずはミラに頼みどうやら始めてだったようで最初初々しい反応をしてくれていたが、他の皆からいろいろアドバイスを受けていたようで慣れてくると自発的にいろいろ貪り合ってくれた。

 続く4人全員も満足するまで貪ったり搾り取られたりして久しぶりに気持ちよく空っぽになるともう一度ミラのベッドにもぐりこんで眠りに落ちた。


 目が覚めるとベッドの中にミラはおらず部屋の気配を探ると俺以外全員起きて着替えをしている。

 俺もさっさと起きるべきだがその前にミラの店へ魔眼を向けてみた。

 外見は何ともないし中を覗いても特に変わった所は無いが店を出る時張った結界が切れているので過去視眼で時間を遡って見ていく。

 早送りで夜半辺りまで戻していくと案の定取り巻きを連れて店に踏み込んでくるザンバロの姿を捉えた。

 下卑た笑みを浮かべ店に入っていくが何もない店内を確認するとザンバロは表情を一変させ手下へ怒鳴り当り散らしている。

 こいつ等の襲撃は、まあ予想通りだがどうやって俺達の張った結界を突破したんだろう。

 その手がかりを探してザンバロや手下を順に詳しく見ていくと4人別格の雰囲気を纏っている連中がいた。

 鑑定してみるとレベル40の戦士の奴を筆頭に後の3人もレベル30代後半の闘士、魔術師、法術師で、戦士の奴は重罪を犯した元討伐者のようで他の3人はこいつの奴隷と見える。

 恐らくザンバロに用心棒として雇われたこいつ等が結界を解除したんだろう。

 かなりの手練れだがいると分かり能力も見た以上対策は立てられるので今の時点で気づけたのは運が良い。

 それに連中の会話を見ていると俺達の行方を完全に見失っているようなのでシュクラを離れていれば追ってはこられないだろう。

 ただ街中のギルドで迷宮や魔境の情報を集めているしもう一度ヘルクス教会へ顔を出す必要もある以上十分警戒するべきだ。

 魔眼の構成を変え用心棒連中も捕捉眼の目標に設定し魔核石を教会へ届けるまで1日毎にザンバロ達の行動を確認すると決めベッドから起き上がった。


 身支度を整え宿で朝食を取るとギルドへ顔を出し、近くでアーツブックを利用できる場所がないか尋ねてみるとここでも保管していると答えてくれた。

 ミラに覚えて欲しい弓系や盾系に気鎧魔装系のものもあるそうなので、ミラにはアーツブックを読んで貰い念のためティアへ護衛を頼んで俺達は迷宮へ魔核石集めに向かった。

 4日経つとアーツブックを読み終えたミラとティアも魔核石集めに合流してくれ、ザンバロの動向も確認しているがギルドの受付嬢の口は堅いようで俺達の行方を掴めず苛立ちを増していた。

 結局1週間たってもザンバロやその手下たちは俺達を見つけ出せずノルトレン司祭との約束の日が来た。



お読み頂きありがとうございます。

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