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一歩目への準備 3

 ギルドの酒場で昨日と同じメニューを注文していると声を掛けられ、声がした方を向いて見るとゲオルさんが居た。

 こっちに来いと手招きしているのでお金を払いおつりとトレイを持って空いていたゲオルさんの向かいの席に座った。

「ようセイジ、共通語の習得進んでるか?」

「ええ、音読に問題ないと認めて貰って、一通りのラーニングアーツを身に着け終わった所ですね。食事の後アーツを覚えて一先ず終了って言われました。」

「すげえな。俺との訓練が終わって正味二日ほどでアーツを覚える所まで行ったのかよ。」

「もともと大陸共通語は勉強してましたし、BPで片手剣スキルを取ってましたから。」

「それでも大したもんだ。じゃあ明日から迷宮に入るつもりか?」

「ええ、そのつもりです。」

「そうか、なら約束通り迷宮に入る時の心得を教えてやる。ついでに稽古も付けてやるからアーツブックを読み終えたら訓練場に出てこい。」

 俺が頷いた後は二人とも食事に集中し先に食べ終わったゲオルさんが席を立った。


 俺も食べ終わるとトレイを返して資料保管室に戻る。

 中に入るとスタグスさんはカウンターの上にアーツブックを用意していてくれた。

「この本が取得したばかりの剣類スキル一般で使える武技アーツ一閃のアーツブックです。今はこれだけですね」

「有難う御座います。」

「いきなり実戦で使うようなことはせず、事前に何度も使ってプラーナの消費量を体感で覚えて決してプラーナの枯渇状態にならない様に気を付けてください。」

「食事の時ゲオルさんに会って、この後訓練場で稽古をつけて貰って迷宮での心得を教えて貰う事になっているのでその時に試してみます。」

「それがいいでしょう。」

 手渡されたアーツブックをカウンターの席に座って一気に読破した。


アーツ一閃を取得した

アーツ一閃は剣術スキルに格納されます


 きちんとアーツを覚えたのを感じたのでスタグスさんに礼を言ってアーツブックを返し資料保管室を出て訓練場に向かった。

 訓練場に入るとゲオルさんはすぐに見つけられた。

 ゲオルさんにきちんとアーツを覚えてきたのか確認されたので頷くとそのまま模擬戦をすることになった。

 盾だけを持ち構えるゲオルさんに回り込みながら切りかかるが全て盾で止められ、直後に放たれる拳を盾で受け止めるが拳の威力で後ろに下がらされる。

 二日前と同じ展開になったが気鎧スキルの御蔭で前より長く打ち合えている。

 それでも次第に左手が痺れ始めたので完全に動かなくなる前に戦い方を変える事にする。

 今度は切りかかり盾で防がれた後に放たれるゲオルさんの拳に俺の左拳を打ち合わせた。

 拳が激突した瞬間、俺の左拳は弾き飛ばされ左腕に振り回される様に俺は地面に転がった。

 すぐに起き上がったが左腕は完全に痺れて動かない。

 盾が使えないなら拳の一撃を受けて俺は戦えなくなるだろう。

 ならば次が最後の一撃と決めて、気鎧と魔装衣を重ねて使い全力で武技アーツ一閃を放った。

 俺の一撃がゲオルさんの盾に当たる直前盾の表面にプラーナの波が走る。

 剣と盾が激突すると一撃を受け止められただけではなくて、打ち込んだ剣撃に等しい衝撃が跳ね返ってきて剣を弾き飛ばされてしまった。

 剣を手放してしまいそれでも勢いを殺せず今度は右腕に振り回されるように地面に転がった。

 すぐに起き上がれず、何とか膝立ちで座るところまで起きると、俺の剣を拾ってきてくれたゲオルさんがすぐ傍に居た。

 ゲオルさんが俺に剣を渡しながら模擬戦の終了を告げたので俺は長く息を吐いた。


「じゃあ疲れてるだろうが模擬戦の評価だ。気鎧のラーニングアーツとの併用で剣の威力、盾の防御力ともに上がってるこの二つは問題ない、次に格闘と気鎧の併用をセカンドウェポンに選んだみたいだな、これも問題は無いだろう。」

「拳同士で打ち合って吹き飛ばされたんですけど?」

「俺とお前にどれだけレベルの差が在ると思ってる。感じた威力は十分だった。最後の一撃は悪かったな、予想以上の威力で盾に傷がつくかと思って反射膜を使っちまった。」

「あの盾の表面に出来たプラーナの膜、武技アーツだったんですか?」

「そうだ盾のやつだな。それから気鎧と魔装衣を重ねて使ってたな、確かに効果は上がるがこの二つは特定のクラスを設定してないと互いに干渉して減衰するんだ、覚えとけ。普段は切り替えながら使って消耗を抑え、二つ同時はいざという時だけにしとけ。後アーツの発動に問題は無かった。以上だな。」

「有難う御座いました。」

「おう、ついでだから迷宮に入る時の心得の方も教えておくぞ、先ず準備だ今の装備の他に最低でも迷宮の地図と効果が低くてもいいからライフポーションを持って行け。理由は分かるな?」

「迷った時と怪我をした時の為ですね。でも俺その二つがどこで売ってるか知らないんですけど。」

「地図はうちの資料保管室で売ってる。一層のやつはタダだがそれより下のは有料だ。ポーションは街に専門の店が在るが安いやつでいいならうちの受付でも売ってる。次に持って行った方がいいのは食料と水だな。日帰りで入る時の昼飯兼非常食ってとこだが水は切らさない様にしろ、乾いてきたら途端に体の動きが鈍くなるからな。」

「今水筒持ってないんですけどそれもここの受付で売ってますか?」

「ああ売ってるぞ、高級品と武具以外討伐者の必需品は大概扱ってるからな。最後に迷宮での戦闘についての忠告だ。セイジには必要ないかもしれないが、いいか初戦闘時は相手の攻撃を十回以上防御してから攻撃しろ。その後も初日は五回以上防御してから倒せ、いいな。」

「分かりました。それで俺からも一つ聞きたいんですけど迷宮内で時間を知るいい方法ってないですか?」

「なんだ、誰からも聞いて無いのか?ちょっとカードを出して裏を見てみろ。」

取り出したカードの裏には左上に円が描かれていた。

「左上の円はな、迷宮に入ってからの時間経過を表示する時計になってるんだ。ちなみに時計の事は知ってるか?」

「長針が一時間で一周、短針が十二時間で一周、でいいですか?」

「ああ合ってる。ちなみに右隣に経過日数も表示されるからな。」

「便利ですね。俺の質問はもう無いです。」

「なら次の事を言っとく。ギルドへの借金を返済した上でカードに五千ヘルク貯金して来い。それが出来たら魔術や法術の指導が出来る奴を紹介してやる。」

「いろいろ有難う御座いました。今日は準備だけして明日から迷宮に入ります。」

 もう一度頭を下げて背を向ける俺に、頑張れよとゲオルさんは声を掛けてくれた。

 訓練場から出て資料保管室まで行くと、スタグスさんがもう迷宮一層目の地図を用意していてくれた。

 受け取った地図の読み方も教えてくれて地図上に書かれた記号が迷宮にも彫られていて現在地の確認が出来るようだ。

 スタグスさんにお礼を言って資料保管室を出て、今度は受付でライフポーションと水筒を買う。

 値段はポーションが千ヘルクで水筒が五百ヘルクだった。

 貰った物や買った物を袋に入れてギルドを出て、後はここ数日と同じように食事をし、風呂に入り、この日はそのまま眠った。


お読み頂き有難う御座います。

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