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港町での取引 2

 扉を潜りミラベル嬢の店の中に入って来たのは、いかにもチンピラという風体の二人組の男達だった。

 関わり合いに一番なりたくない手合なので一瞥しただけでカウンターの素材の片付けを続けていると片方の男が話かけてきた。

「あんた運が良いな。偶々俺達が見てたおかげでインチキな品を掴まされずに済む。」

 ニヤニヤしている男達の顔を見ると本当にげんなりした気分になるが無視すると余計に絡んでくるだろう。

 素材をポーチに全て仕舞い男達に向き合った。

「俺に何か用か?」

「ああ、親切な俺達が何も知らないあんたに教えてやるよ。ここはな、法外な値段で粗悪品を売りつける悪徳武器屋なんだよ。武器を買うなら余所で手に入れた方が良い。俺達がもっといい武器屋に案内してやるよ。」

 ここの展示品は確かにミラベル嬢の作で性能も魔眼で見たこの街にある他の武器屋の物と比べて飛び抜けている以上、意図的に手を抜かない限り粗悪品が出来る筈がない。

 それにこの手のごろつきが親切なんてありえないので、恐らくミラベル嬢の店の営業妨害をしているんだろう。

 これからミラベル嬢には俺達の装備を色々作って貰うつもりなので、どんな揉め事に巻き込まれているのかきちんと理解しておくべきだな。

 そうなるとまずはこいつ等がどんな意図で営業妨害をしているか知る所から始めるとしよう。

「具体的にどんな粗悪品を売りつけてるんだ?」

 俺が大人しくついてくると思っていたようでニヤけていた男達の表情が途端に不機嫌なものに変わる。

「俺達が他所の武器屋に行けって言ってるんだ。下らない御託を並べず俺達が親切に話してるうちにとっととここから出て行け。」

 この話ぶりだと他の武器屋が客の横取りを目論んで営業妨害をしている可能性は低くなったと思う。

 ただこれ程短気だとこの男達と話していても有益な情報は引き出せそうにないから、さっさと追い払って裏で糸を引いてる親分の元へ逃げ帰って貰うとしよう。

「具体的な話がないんなら悪いが自分の目利きを信じてここの店主に武器を作って貰うよ。まああんたらの親切は覚えておくよ。」

 こういえば舌打ちや憎まれ口の一つでも叩いて退散すると思ったが、男達は躊躇いなく腰の短剣を抜くと俺へ向けてきた。

「これが最後の警告だ。大人しく他の武器屋へ行け。さもないと手足が1〜2本使えなくなるぞ。」

 武器を先に向けてきた以上この男達を叩きのめしても問題ないだろうが、裏の事情が分からないのでまだ衝突は避けるべきだ。

 鑑定で見えるこの男達のレベルは10未満なので実力差が理解できるか多少心配だが、気鎧を展開して俺の方からプレッシャーをかけた。

「あんた達がどう親切なのかは分かったから、もう失せろ。それとも本当に俺とやり合うつもりか?」

 男達の顔面は蒼白になり俺からのプレッシャーに押されるように2〜3歩後退りしたので実力差が分からない程無能じゃないようだ。

「そんな態度で良いのかよ?俺達は・・・」

「よせ。それは口にするな。」

 俺からのプレッシャーに終始喋っていた男が自身の素性を口にしそうになるが後ろに控えていた男がそれを止めた。

「俺達の親切に素直に従わなかった事をきっと後悔するぞ。」

 後ろにいた男はそう捨て台詞を吐くと振り返っていた前の男に顎で合図を送りゆっくり店の外へ後ずさっていく。

 男を二人とも捕捉眼の目標に設定した以外俺からは手出しをせずプレッシャーをかけるだけに留めていると店を出た男達は短刀を仕舞って走り去っていった。


 男達が肉眼の視界から消えるまで見送って店の扉を閉め気鎧を納めると店の奥へ続く扉が勢い良く開かれミラベル嬢が飛び出してきた。

「大丈夫ですか?何かお怪我はありませんか?」

「変な男達に因縁を付けられましたけど、凄んだら何もせずに逃げて行きましたよ。」

「そうですか、本当に良かった。店の方から大きな音がしたので出て行こうとしたらファナさんに止められて、何が起きたのか心配だったんですよ。」

 どうやらファナがいい仕事をしてくれたようで、ミラベル嬢に続いて奥から出てきたので視線を向けるとファナは誇らしげに頷いてくれた。

 あの男達の事は恐らく裏で糸を引くやつを含めて直ぐに調べられるだろうが、ミラベル嬢にも営業妨害をされている自覚や犯人の心当たりないか聞いておこう。

「ミラベルさん、答えにくいかもしれませんが教えて下さい。もしかしてこの店の商売を邪魔されていませんか?」

 俺の質問を聞いて一瞬息を呑んだミラベル嬢の表情が沈痛なものに変わった。

「はい、確かにうちが粗悪品を売っているっていう噂を流されています。でも信じて下さい。わたしは一度も粗悪品なんて売った事ありません。」

「勿論あんなチンピラ達よりミラベルさんを信じますよ。ただ商売を邪魔しているやつらに心当たりはないんですか?」

 俺の問いかけに沈痛な表情のままミラベル嬢が首を横に振った。

 以前から営業妨害がありあんな捨て台詞を残していく以上あいつらはまた何か仕掛けてくるつもりだろう。

 そうなると注文主の俺達とミラベル嬢がばらばらに行動していたらあいつらの後手に回る事になるか。

「ミラベルさん一つ教えて下さい。この店に空き部屋ってありますか?」

「はい、2〜3ありますけど、それがどうしたんですか?」

「それなら注文した剣や鎧が出来上がるまでの間その部屋で寝泊まりさせて貰えませんか?営業妨害をしているやつらが行動を過激にしてこの店に盗みに入るかもしれません。俺達にも警備をさせて貰えませんか?」

「そういう事なら大歓迎です。空いている部屋に案内しますからついてきてください。」

機嫌よく奥へ案内してくれるミラベル嬢の後に続いた。




お読み頂きありがとうございます。

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