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一歩目への準備 2

 階段を下りてきて目にした酒場の様子は昨日と同じ位の混みようだった。

 食事を注文するとどれにするか聞かれたので、昨日奢ってもらった真ん中のメニューを選んだ。

 七十ヘルクだと言われたので銅貨を一枚渡すと鉄色の硬貨が三枚と昨日と同じ食事の乗ったトレイが出てくる。

 硬貨もトレイの上に乗せて一緒に空いているテーブルまで運んだ。

 仕舞う前に確認の為、硬貨を鑑定してみると、十ヘルクの価値が在る鉄貨と確かめられた。

 食事を始めると如何してもセカンドウェポンの事を考えてしまう。

 今身に着けている装備は教団からの貰い物の上、殆ど使っていないので別の武器をくれと言っても応じてはくれないだろう、かといって銀貨五枚程度では実戦に耐えられる武器は中古でさえ買えないだろう。

 どうするかと悩む中、口にしていた食事が昨日の昼食時の事を思い出させてくれる。

 昨日はゲオルさんに食事を奢って貰い、その前に模擬戦をした。

 その時ゲオルさんが放ってきた拳はもう習得していたスキルを使っていた盾越しでも芯に響いてきた。

 ゲオルさんがどれ位本気で、気鎧や魔装衣のスキルを使っていたかも分からないが、十分な威力はあると思う。

 格闘がセカンドウェポンとして使えるかスタグスさんに聞いてみよう。

 ダメならその時次を考えればいいだろう。

 考えが決まってから食事は少し美味しく感じ、すぐ食べ終わった。


 トレイを返し二階の資料保管室に戻ると、スタグスさんに声を掛けた。

 俺のセカンドウェポンは格闘で大丈夫かという問いかけにスタグスさんは問題ないと返してくれて、格闘と気鎧の両スキルを併用するスタイルは闘士クラスのスタンダードなスタイルの一つだとも教えてくれた。

 先の四つに格闘のラーニングアーツも覚える事にして、後は覚えるだけなので早速アーツブックの読破を再開する。

 次は魔装衣のアーツブックだ。

 魔装衣のアーツブックを読み終え順番を入れ替えて貰った格闘のアーツブックをもう少しで読み終えるという所で速読スキルのレベルが上昇し読書スピードが上がり一気に読み終える。


魔装衣アーツを取得した

格闘アーツを取得した


 集中していた所為だろうか窓の外が夕焼けになっているのに気付かなかった。

 風呂が解放されているのは夕暮れ時だと昨日教えて貰った。

 折角入れる風呂を逃すのは勿体ないので今日はここでやめる事にした。

 スタグスさんに挨拶をして資料保管庫を出て、帰還してきた討伐者達で混み合う中をすり抜けるようにしてギルドを出る。

 教団の騎士詰所に顔を出すと昨日のように俺担当の騎士と食事を取る事になった。

 食事中気になって教団にもアーツブックが在るのか聞いてみると、もっと大きな支部や本部にならあるがここには無いらしい。

 アーツはどうしているのか重ねて聞いてみると勤務のない夜にギルドに在るアーツブックを借りて読んでいると返ってきた。

 ギルドが深夜営業または二十四時間営業していそうなのには少し驚いたが、いつ討伐者が迷宮から出てきても対応できるようという配慮なのかもしれない。

 

 食事を取った後は昨日と同じように風呂に入って汗を流し蝋燭を貰って部屋に戻ってきた。

 聞いたとおりにギルドが夜遅くまで開いているのなら、これからまたアーツブックを読みにギルドへ行ってもいいんだろうが、酒を飲んで騒いでいる人が大勢いる傍では気が散って失敗するかもしれないのでアーツブックは読みたくない。

 蝋燭やまだ目にしてないがランプの様な物を気兼ねなく使えるほど稼げるようになるまでは暗くなったら寝てしまった方がいいだろう。

 そう決めたが寝る前に今日手に入れたラーニングアーツを試してみる事にした。

 気鎧アーツを使い体の感覚を確かめ、気鎧アーツを魔装衣アーツに切り替え同様に確認し、空手の正拳突きの真似を左右でやってみる。


気鎧アーツは気鎧スキルに上書きされた

魔装衣アーツは魔装衣スキルに上書きされた

格闘アーツは格闘スキルに上書きされた


 俺のアビリティ超越者の器はラーニングアーツをスキルにするのにも効果が在るようだ。

 アビリティ万色の魔眼や各種能力値の事も合わせて気づかれた時にどうなるか漠然と不安になる。

 考えても答えの出ない事だと不安な気持ちを抑えてベッドに横になりそのまま眠った。


 窓からの朝日で目が覚めると漠然とした不安は収まっていたので昨日と同じように装備を身に着け食事をする。

 ギルドに移り訓練場で朝の訓練をしてから資料保管室に行った。

 スタグスさんに次のアーツブックを頼むと最後にもう一回書き写しをやりましょうと教本と紙とペンを渡される。

 肩透かしを食らったように感じたがスタグスさんが終わりを告げるまで三枚分ほど書き写した。

 そこからは予定していた小盾のアーツブックを読み始めたがあの自分の中に何かが降り積もる感じはせず、読み終えても何も起きなかった。それは鎧防御のアーツブックでも同じだった。

 取得しているスキルに対するアーツブックを読破しても効果は無いようだ。

 贅沢な事なのかも知れないが少し残念に思ってしまった。

 鎧防御のアーツブックをスタグスさんに帰すと

「これでこの部屋でやることは一段落です。次はラーニングアーツを鍛えてスキルにし、そのスキルも鍛えてアーツを発動できるようになれば訓練終了です。訓練場で素振りや模擬戦をしても鍛えられますがギルドへの返済の事もありますし、迷宮に入り魔物を倒してラーニングアーツを鍛え同時に報酬を得る事をお勧めします。」

 スタグスさんはそう言って締めくくろうとしたが俺にはここでまだやりたいことが残っている。

「スタグスさん、昨日も言いましたけど俺はBPで片手剣スキルを取得しています。取得してすぐの片手剣スキルでも発動できるアーツが在ったらそれを覚えさせてください。」

「セイジ君、少しでも早く強くなりたいという気持ちはよく分かりますが、プラーナとマナ特に剣類の武技アーツに使用されるプラーナの消費が激しくなり過ぎます。プラーナやマナの枯渇は深刻なダメージとなってライフを削ります。あまりお勧めできません。」

 ラーニングアーツはもうスキルに上書きされているので問題は無いだろうが、それはここでは明かせないのでもう一つの理由を言おう。

「俺は手に入る切り札が在るなら身に着けておきたいんです。もしもの時後悔しない様に。」

「分かりました。もうお昼になりますから昼食に行ってきて下さい。終わるまでには用意をしておきますから。」

 僅かの時間目を閉じて考え、そう答えてくれたスタグスさんにお礼を言って、俺は資料保管室を出た。


お読み頂き有難う御座います。

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