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海路に落ちる影 6

 レベルが上がった漲る感覚の中アビリティを切りポーションを飲んでプラーナとマナを回復しながら、倒したアクアリザードロードの死体が素材に変わるのを待っていると人の気配が近づいてくる。

 水精霊の力も感じるのでどっちが来たのかと待っているとリゼラの方が来てくれたようだ。

「良かった、無事だったみたいね。セイ様。あの蜥蜴に水の中へ引き込まれるし、凄い雷の余波が部屋の水面まで届いてちょっと心配だったのよ。」

「ごめん、心配かけて。部屋に戻ったらみんなにも謝らないとな。そうだ、蛇の方はもう片付いたのか?」

「ええ、仕留めたわ。みんなも無事。全員で様子を見に行こうかって話も出たんだけど、蜥蜴の瘴気は消えてたから私が代表して様子を見に来たの。」

 なるほどと相槌を打つとアクアリザードロードの死体がぼやけ始めた。

 リゼラと頷き合って話を一旦打ち切り水精霊で海水を制御し残る物が流されないようにして待つと、死体が消えた後に魔核石や牙に爪や鱗といった素材の他に封魔法結晶が埋め込まれた腕輪や短剣が幾つか出て来た。

 素材をポーチに回収して腕輪や短剣を一つ一つ鑑定してみると魔道具や発動体のようで、まだ存命の討伐者や騎士の所有物だと見えた。

 恐らくアクアリザードロードが以前クイルを襲った時に噛み千切って飲み込んだ物の内、プラーナやマナを帯びていた物がまだ消化されずに体内に残っていたんだろう。

 討伐の証明として使えそうなのでこれらもポーチへ仕舞っておいた。


 アクアリザードロードが残した物の回収が済むとリゼラに声をかけてみんなが待っている部屋へ引き返す。

 途中リゼラにサーペントロードとの戦いの様子を訪ねてみた。

 俺が指示を出して別れると直ぐにファナとリゼラはサーペントロードを挟み込むように展開してプレッシャーを与え、正面から撃ち合うアリアとティアを援護したみたいだ。

 前衛の二人が圧力を増して隙を作り出しそこを撃ち合う二人が狙って行き、ファナがサーペントロードの尾撃を止め動きが止まって出来た隙にティアが目へ精霊武技を撃ち込んでほぼ勝敗が決したようだ。

 これが俺の感じたサーペントロードの気配が急激に弱体化した原因だと思う。

 ただサーペントロードも最後まで全力で抵抗したようで、ファナが頭を半ば切り落とすまで手を抜けず直ぐに援護に迎えなかったとリゼラはみんなを代表して詫びてきた。

 気にしていないと返して続きを促すがそこからは簡単でサーペントロードが動きを止めたのとほぼ同時に洞窟へ続く水面に強烈な電撃が走ったそうだ。

 アクアリザードロードの気配が消え俺の気配は健在だと分かっていたが、念のため水中で接近戦が出来るリゼラが様子を見に来たみたいだ。


 リゼラから話を聞き終え海中洞窟を抜けて水面に顔を出すと、みんな水際に揃って海中を覗き込んで待っていてくれた。

 リゼラと同じように心配をかけたみたいなのでみんなにも一人ずつ謝って戦闘の後始末に掛かる。

 ファナが回収していたサーペントロードの魔核石を受け取って幻獣化し、ごっそり持って行かれたプラーナとマナをポーションで補充してアクアリザードロードの魔核石も幻獣化する。

 先に実体化していたサーペントロードの隣にアクアリザードロードも実体化して双方を鑑定してみると、サーペントロードには拡張感覚という感性強化アビリティがアクアリザードロードにも剛脚と敏捷強化アビリティが新たに発現し基礎成長値も増えていた。

 名前を付けるのに多少悩んだがサーペントロードの方にはペネル、アクアリザードロードの方にはクザンと名前を付けて幻核石に戻して管理はファナに任せた。


 後の始末はリザードの討伐を公開するかだが片桐君達ゼス教団一行がクイルをもう出ていたか近々出て行くならリスクを取ってまで公開する必要は無い。

 先の迎撃から3日以上経っているのでもうクイルから出て行ったかもしれないと魔眼で片桐君を探してみるとまだ港に停泊しているゼス教団の船の中にいた。

 すぐに片桐君の予定を過去視で探りたいが魔眼を組み替えるための時間がいるし討伐を公開するとなると魔境の深部にいる方が都合がいいので、野営をした部屋まで引き返し結界を展開して警戒をみんなに任せ俺は組み替えた魔眼を片桐君へ向けた。

 

 前回俺が魔眼を向けた辺りまで時間を一気に遡り、片桐君とセフィネアさんの毎晩の情事は極力早送りで飛ばして会話に注視する。

 ほとんどの会話が周りのゼス教団の人達による片桐君へ出発を促す話だったが片桐君は首を縦には振っていないようだ。

 それでも夜毎のセフィネアさんの説得が功を奏しているのか、片桐君の決意も段々揺らいでいるようなのでそう遠くない内に片桐君達ゼス教団一行はクイルを出て行きそうだ。

 ここまではある程度朗報なのだが嫌な事にも気づいてしまう。

 明日になるか10日後になるか分からないが片桐君がクイルを出発すると決めた時シェイド辺境伯との面会が取りやめになっていた場合の事だ。

 再度面会を取り付けるため以前片桐君が言ったようにリザードの討伐へゼス教団一行全体が方針転換するかもしれないし、陸路での移動を取りやめ海路で王都へ向かうと決める可能性も出てくる。

 どちらになっても俺には都合が悪いが、幸い片桐君達の話を見た限りではまだシェイド辺境伯との面会の中止には至っていないようだ。

 リスクはあるがリザードの討伐を公表し片桐君達ゼス教団一行にはさっさとクイルから出て行って貰った方が良さそうだ。

 出来るなら片桐君達との関わりは少しでも減らしたかったがやると決めたら早い方がいい。

 遺留品の腕輪や短剣を俺のポーチから取り出し、片桐君達に見られる事も考えて念のためアリアに遺留品と一緒に送るメモを代筆して貰う。

 アリアに転移法術の準備をして貰い、クイルを襲うリザードを討伐した証拠の品を送るとだけ書いて貰ったメモと遺留品を魔眼で照準した俺の転移法術でクイルのギルドへ送りつける。

 俺の転移法術が終了すると同時にアリアの転移法術で水精霊の使用訓練をした砂浜へ飛びそこから近くの森へ移動した。

 みんな今取った行動に対して不思議そうな表情を浮かべていたので、無いとは思うが転移法術を追跡された場合に備えての対策だと説明すると納得して周囲を警戒してくれる。

 俺は様子を確かめるためギルドへ魔眼を向けてみると、悪戯とは思わずどうやら真面目に受け止めてくれたようでギルドの中が騒がしくなっており飛び出して行く者もいたが転移で消える者はいなかった。

 それでも夕方近くまで周囲を警戒しながら森に留まり、挙動不審にならないよう気を付けて門を潜り宿へ引き上げた。

 それから外へ出ず魔眼で街の様子を探ってみると1日でリザード討伐の報は町中に広がったようで雰囲気が格段に明るくなる。

 ゼス教団一行にも安堵が広がり慌ただしく移動の準備が進められていたが、反面片桐君は悔しそうな表情でシェイドへの出発を了承していた。

 二日目の朝方険しい表情の片桐君がゼス教団の一行とクイルを出て行く姿を魔眼で見送りほぼ同じ時間帯にゼス教団の船がクイルの港を出港していくのを見届けた。

 絶対に会いたくない人達がやっと去ってくれたので周りを気にする事無く彼女達に溺れお互いに満足するまで貪り合って眠りに落ちた。




お読み頂き有難う御座います。

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