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海路に落ちる影 5

 一旦廃棄迷宮から帰還し宿で休んだ翌朝、俺達はクイルを出て近くの砂浜にやって来た。

 始めはティアに水精霊を使った水中戦闘を教えて貰うつもりだったが、移動中話を聞くとティアも水中行動が可能だと確認した程度のようで具体的な戦闘法は知らないようだ。

 ティアは申し訳なさそうに頭を下げたが気にしないよう言い、手さぐりになるが実際に水精霊を使いながら水中戦闘法を模索する事にした。


 まずは俺が水精霊を召喚しゆっくり海の中へ入っていく。

 頭まで海水につかると体全体を薄い膜のようなものが覆い問題なく呼吸が出来た。

 海中だけあって地上より動きに抵抗を感じるがこれは慣れるしかないと思うので海面に顔を出してリゼラやティアにも試してみるよう声を掛けた。

 返事をくれた二人が水精霊を召喚するのを見届けて俺も色々試してみるため海中に戻る。

 精霊の力で浮力を調整して海底を歩き、直ぐに走れるようになったが泳ぐのが難しい。

 クロールや平泳ぎで海中を高速移動する感覚はすぐに掴めたがこれでは武器が触れないし魔術や法術の発動もやりにくかった。

 他の泳ぎ方も試してみたがしっくりくるのは無くどうするかと悩んでいるとティアがヒントをくれる。

 海中で弓を試していたようで放たれた矢が精霊の力を推進力にして魚雷のように的にした魚を射抜いていた。

 俺も海中移動は水精霊だけに任せてみると泳ぐより若干速度は落ちるが手足は自由に動かせる。

 他にも水中に擬似的な足場を作りそれを蹴る事で立体機動の真似事も出来るようになったのでそこからは武器を使った模擬戦をやってみた。

 リゼラも俺と同じような動きが出来るようになっていてかみ合った模擬戦が出来たが、ファナは自前で移動や足場作りが出来ず精霊を召喚している俺達と連携しても動きのぎこちなさがどうしても取れなかったので水中戦の前衛からは外れて貰った。

 朝方から始めた水中戦闘の訓練をポーションを飲みながら昼食を挟んで夕方近くまで行い転移で宿へ戻ると夕食後直ぐに眠った。


 水中戦闘の訓練をした翌日は一日かけて無人島の廃棄迷宮を下りていき精霊の場があった階層のさらに下まで下りて野営の準備に入る。

 守り易い出入り口が一つの小部屋でテントを張り多重に結界を展開して交替で見張りをしながら十分休息を取り下を目指した。

 昨日頑張った分それ程時間はかからずアクアリザードロードの巣がある部屋の外まで着きみんなと頷き合って扉を開けた。


 扉から離れた部屋の奥にアクアリザードロードがいるのは魔眼で見えていたので、リゼラとファナに声を掛け前衛は一気に距離を詰めていく。

 能力的には物理攻撃型なのであいつも前に出てくると思っていたが、俺達に向かって口を大きく開け危機感知が反応する。

「ファナ、リゼラ、俺の傍に!」

 足を止め障壁を展開しながら声をかけると二人の危機感知にも反応があったんだろう、反射に近い速度で俺の後ろに回ってくれリゼラも防御用の精霊術の発動を始めてくれたタイミングであいつがブレスを吐いた。

 全てを押し流す濁流のような水のブレスに一番外側に展開した普通の障壁は20秒程で破られたが、次の対魔法障壁は1分近く続いたブレス攻撃を防ぎきってくれる。

 ただブレスが止まり20秒程経って水煙が完全に晴れるとさらに厄介な事態になったようで、部屋の中にもう一匹大型の魔物が入ってきていた。

 壁の大きな亀裂から入っていきたようであいつが得意な物理攻撃じゃなくブレスを初撃に選んだのは、防御されるのを前提に部屋の中へこの大型が安全に入ってくるための時間稼ぎだったんだろう。

 あいつらも俺達の出方を窺っているようなので新しく入ってきた方を鑑定してみる。


サーペントロード Lv32 

筋力 160

体力 167

知性 292

精神 250

敏捷 96

感性 160

アビリティ

海竜の鱗

水流操作

知性の源泉

スキル

4個


 ウミヘビに似た姿からレッサーサーペントの上位種だとは見ただけで分かっていたが、体の大きさだけじゃなく能力的にもあいつに迫るものがあるようだ。

 逃げるという選択肢もあるとは思うがこの接敵があいつらへの刺激になってクイルへの襲撃を誘発する可能性もあると思うのでヤバくなるまでは続行だ。

 単純に戦力を2分割すると返って時間を取られるかもしれないので、俺があいつを押さえている内にまず少し弱い蛇の方をみんなに全力で叩いて貰い全員であいつを仕留めた方がいいだろう。

「蜥蜴の方は俺が押さえる!全員で蛇の方を仕留めてくれ。」

 みんな頷いてくれファナやリゼラもサーペントロードへ向かってくれるが、俺の声が合図になったようで魔物達も動き出す。

 アリアやティアとサーペントロードが撃ち合いを始める様子を横目に俺はあいつへ向かって突っ込んで行く。

 土の精霊武装で盾を強化し溶岩の精霊武装で剣の刀身を伸ばし炎刃を重ね掛けして間合いを詰めていくと今度はあいつの方も前に出て来た。

 首を伸ばし噛みついてくる鼻先を盾強打で殴り飛ばして顔を逸らせ首に出来た隙に踏み込んで斬り込もうとするが、あいつも薙ぎ払うような横の爪撃を放ってきた。

 無理に相討ちになってまでダメージを与える必要が今はないので剣閃を変化させ爪撃を打ち落とす。

 激突の反動と体重差の関係で俺が後ろに下がって間合いが開くと、あいつは足に水を纏い滑るように体を回転させ高速の尾撃打ちこんできた。

 くりだしてくる速さは予想以上だったが尾撃自体は既知の攻撃手段なので対策として発動待機させていたロックウォールを尾撃の軌道上に作り出す。

 岩の壁と鱗で覆われたあいつの尾が激突し、壁は砕けて霧散してしまうが尾を弾き返せた。

 体勢か崩れてあいつに隙が出来るかと思ったが尾を弾いた反動を上手く利用して体を回転させ隙を見せなかった。


 俺は始めから時間稼ぎが目的だったがあいつも初手のやり取りで俺を手ごわいと思ってくれたのだろうお互いに仲間の援護を待つ守勢主体のやり取りになる。

 俺は攻撃を防御してからのカウンターに徹し、あいつも噛みついて来たり爪を振り込んでくるが攻撃に重さを感じずただ牽制のように見えた。

 両者守勢主体のためお互い決定打がなくただ牽制し合いながら戦闘が続いていると向こうの戦いに動きがあった。

 サーペントロードの気配がガクッと弱くなりみんなが有利なようだが、あいつが思考を切り替えるきっかけにもなったみたいだ。

 初手から使わなかった尾撃を放ってきて、尾の先がかする位だったのでバックステップして回避すると1回転した後あいつは俺に向けて大きく口を開いた。

 水のブレスが来ると思い盾に防御膜を追加し準備していたロックウォールを破棄して対魔法障壁の発動に入るが、俺が思ったタイミングよりかなり早く1m程の水球を撃ち込んできた。

 危機感知の反応から防御しきれると感じるので剣で迎撃はせず盾で受け流そうとしたら、着弾した水球の水がまとわりついて来た。

 俺を抑え込むように周囲で旋回し剣に纏わせた溶岩と接触して水蒸気を上げ視界を塞ぐので剣の精霊武装を解除する。

 周りの水を無力化するため水精霊を召喚したと同時に危機感知の強烈な反応がして、そちらへ目を向けると地を這うような低い姿勢で瘴気を全身に纏ったあいつが突撃してきた。

 頭からの高速の体当たりに何とか盾を前に出して顔についている角による串刺しは防げたが、下から突き上げるような体当たりに床から足が離れてあいつの顔の上に乗り上げてしまい一気に押し込まれる。


「限界突破」


 この部屋の規模からあいつを攻撃して突撃を妨害する前に壁へ叩き付けられると咄嗟に判断でき、アビリティに加え身体強化や鎧装系のスキルも使って防御力を高めたが叩き付けられたのは壁ではなく水だった。

 どうやら俺を倒すより逃げる事を優先したようであの部屋の床から続く海中洞窟に押し込まれ海へ向かって押し出されていく。

 水精霊を召喚していたお蔭で呼吸に問題は無くあいつも少しの間は逃走優先のようで海へ向かって全速で泳いでいたが、俺を倒す欲はまだあるようで洞窟の壁へ向かって進路を変えた。

 俺を押し潰すつもりのようだが大気中と違って海中なら好きな場所に足場が作れるようになったので、洞窟の壁に激突する直前であいつの顔の上から離脱した。

 全速で突っ込んだあいつは壁を削りながら大ダメージを受け海の方へ流れていったので逃げると思い追おうとしたが、怒気を放って瘴気を強め俺へ向かって突っ込んでくる。

 俺も水中で動けるようになったがあいつの方に一日の長があるはずで回避や下手な攻撃は悪手だろう。

 あいつ自身回避も上手い筈でそうなると俺もダメージを受ける覚悟で絶対に避けられない攻撃方法を選択するべきだ。

 海中で一番回避が困難だと思う雷の精霊を召喚して槍での攻撃を指示し、そこにライトニングジャベリンを重ねて発動し撃ち出す。重なり合った雷の槍が統合して増幅し水の精霊の援護も受けて海中を高速で突き進んでいく。

 それでもあいつに紙一重で避けられてしまうが至近を通過する瞬間槍を爆ぜさせ周囲へ雷撃を振りまく。

 予想以上に強力で俺の元まで結構な余波が来ているみたいだが水と雷の精霊がほとんど抑え込んでくれ肌が少しピリピリする位ですんだ。

 雷が止むとあいつは動かなくなったが念のため慎重に近づき岩刃剛一閃で首を落としてアクアリザードロードを仕留めた。



お読み頂き有難う御座います。

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