表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/126

海路に落ちる影 2

 夜が明けると自然と目が覚め眠気が晴れてくると共に昨日の夜魔眼で見た事も思い出す。

 多少憂鬱になるが気合を入れて寝袋を出て生活魔法で身を清めると、夜番や先に起きていたと見えるファナとティアに野営の片付け準備を頼んで顔見知りなった商隊の討伐者達へ聞き込みに回った。

 昨日の夜の見た話の通りならセフィネアさんはクイルのギルドとも交渉しているんだろう。

 そうなると不用意にギルドへ近づくと片桐君やセフィネアさんと遭遇する危険があるので、別グループの何人かからクイルの街で評判の宿屋を教えて貰った。

 出発準備が始まる前に聞き込みを終えられティア達の元へ戻ると野営の荷物を固めてくれていた。

 荷物をポーチに仕舞い聞き込んできた情報を元にクイルで泊まる宿屋を皆で話し合い、決めた所で商隊出発の合図が掛かった。


 後の事を考えて移動中ファナにはポーション用の薬草を探して貰い環境的なものか中々見つからなったが、それでも森の傍を抜けるまでの間に5〜6株見つけてくれる。

 街道両側の景色が昨日魔眼で見た田園風景に変わっていき昼前にクイルの城門前に着いた。

 街への入場審査を待ちながら昼食を済ませ、審査が終わり門を潜ってクイルに入ると商隊は解散となった。

 護衛依頼の完了証を貰ったが決めていた通りギルドへは向かわず、教えて貰った宿の内皆で決めた安全対策がしっかりしている所へ足を向けた。

 目的の宿の近くまで来ると一応建物の中にゼス教団の人間がいないか魔眼で確認し入口を潜る。

 5人部屋は無いと聞いていたのであると教えて貰った6人部屋への宿泊を受付の子に頼むと丁度1部屋空いていた。

 取り敢えず3日分の宿代を前払いして部屋へ案内して貰い、案内してくれた受付の子が離れるのを待って遮音結界を展開した。

 商隊が解散してから結界を張るまでギルドより宿へ先に来た事を皆少し怪訝に思っているようでそれが表情へも現れていたが、昨日の夜夜番のついでにこの街を特殊能力で調べてみてゼス教団の人間を見つけたと告げるとみんな一様に納得してくれた。


 俺のベッドを先に決めさせて貰いポーチからプラーナとマナ複合回復ポーションをあるだけ取り出し、みんなへ特殊能力を使ってこの街にいるゼス教団の連中を調べると話す。

 みんなには休んでいるよう告げて見回し頷いてくれるのを確かめて魔眼を発動した。

 片桐君へ捕捉眼の効果で視点を合わせ一気に視界の外へ消えるまで時間を巻きもどして行くと、どうやら2週間程前昨日の夜見た船でここへ到着したようだ。

 そこから早送りで時間を進めていくとクイルの港で先乗りしていた教団の者と合流し今後の予定を話し合ったみたいだ。

 時間の早送りを止め話し合いの内容を拾ってみると、当初はクイルに着くと直ぐにシェイドへ移動し辺境伯との面会の後ミラルテ、ルディアを経由して王都へ向かう予定だったようだ。

 ただ片桐君が到着した夜、事件が起こる。

 大型の魔物が港を襲撃し、停泊している船や港に隣接している倉庫へ大きな被害が出た。

 この時街に駐留する騎士や警備兵に討伐者達が魔物へ応戦し、片桐君も迎撃に参加しようとして内政への不干渉を理由に断られたみたいだ。

 この街の対応に片桐君は腹を立てここ数か月2週間おきに魔物が襲ってきている事を知ると次回の襲撃までこの街に滞在し今度は僕の手であの魔物を討つと言い出す。

 先乗りしていた者達や船で一緒に来た者達の大半は片桐君を諌めていたがセフィネアさんが賛成した事で残留が決定したみたいだ。

 最初に残留を言い出した片桐君と賛成したセフィネアさん率先してこの街の上層部と交渉を行い、傭兵という立場での戦闘参加を認めさせ先の襲撃から2週間後の今日魔物の襲撃が予想されているようだ。


 大体知りたい事は分かったが調べ終わるのに夕方までかかり手持ちのプラーナとマナ複合回復ポーションも全部飲み干してしまう。

 そのせいで調べた事を皆に話した後行った宿の食堂の夕食が余り手につかず完食に時間が掛かってしまった。

 部屋に戻ると皆には念のため再武装して貰い、俺も装備をつけたまま消費した分を補充するためポーション造りに取り掛かった。

 手順を踏んでポーションを造りながらこれからの事を考えてみる。

 今夜予想通り魔物の襲撃があり誰の手でもいいからその魔物を倒してくれれば問題は無い。

 見た話から考えて討伐が済めば2〜3日で片桐君やセフィネアさんはシェイドへ向かい、俺達はその間宿でじっとして休んで待ち二人が街を離れてから王都行きの船を探せばいい。

 だが問題なのはまた魔物を討伐できず逃がした場合だ。片桐君の勇者な言動を考慮すると討伐するまでこの街に居座ると言い出しかねず、そうなると王都行きの船探しも出来ずミラルテへ引き返す事になりかねない。

 流石にそれは勘弁して欲しいので俺達や片桐君たちに街の人達のためポーションを仕上げながら討伐の成功を願った。


 出来上がったポーションを空き瓶へ小分けしてポーチに仕舞うと片桐君へ魔眼を向ける。

 捕捉眼の効果で片桐君の姿を捉えると何かの待機所のような部屋でセフィネアさんや10人程のゼス教団の騎士や術師と談笑していた。

 視界を引いて周囲を確認すると片桐君たちがいた部屋は港の一角にある人足の休憩所だったようだ。

 他にも港のあちこちを武装した数名のパーティーが巡回して警戒に当たっていた。

 港全体の様子を確認し終えたので片桐君へ視線を戻すと焦れる時間がゆっくり過ぎて行く。

 片桐君たちの口数もだんだん減っていき夜半前誰も喋らなくなった部屋に一人の男が飛び込んで来た。

 男の唇を読むと来たと叫んだようで片桐君達は一斉に反応して飛び込んで来た男を先頭に全員部屋を飛び出していった。

 俺も港をふかん出来るように視点を変え全体の様子を確認するとあちこちを巡回していたパーティーが集まり始めていた。

 その内足を止めた何人かが指さす方へ視線を送ると、港内の海中に大きな影が見え中々の速度で陸を目指している。

 港へ展開している武装した人達の大半もその影に気付いたようで上陸が予想される地点に人が集まり始めた。

 迅速な人員展開で討伐が有利に進むかと思ったが、陸が近づくと海中の大きな影はいきなり加速して海面から飛び出した。

 海中から姿を現したそいつは海イグアナのような姿をしていたがサイズが桁違いで10トントラック並の大きさがある。

 そいつが十分な速度に乗り体当たりしながら集まっている人達の中へ着地し、それだけで3分の1程を吹き飛ばし踏み潰した。

 集まっていた人達の統制は崩壊し一気に総崩れになるかと思ったが、そこに片桐君達が到着した。

 ゼス教団の者達の先頭に立っていた片桐君が集まっていた人達をかき分けて正面から接敵し噛みついて来たそいつを盾で殴り飛ばす。

 その後もそいつの攻撃を片桐君が引き受けている間に最初にいた人達とゼス教団の人達が協力して吹き飛ばされたり踏みつぶされた人を救助し半包囲陣形を立て直した。

 ただそいつはかなり頭も良いようで、包囲陣が完成すると薙ぎ払うような尾撃で片桐君達を下がらせると同時に体の向きを180度変え躊躇う事無く海へ飛び込んだ。

 すぐに魔術に法術や気弾系のスキルを持っている者達が遠距離攻撃を始めるが海水に阻まれて有効打を与えられず、そいつは追い返された憂さを晴らすように港内の船2隻の船底に穴をあけて外洋へ進路を変えた。

 その時点で迎撃に出た人の大半が勝ち鬨を上げたが、片桐君は悔しそうな表情で俺もため息が出る思いで逃げていくその大海イグアナを捕捉眼の目標に設定した。

 そこで魔眼を切り寝ずに待機してくれていた皆へ魔物の撃退成功を告げて全員装備を脱いで結界を展開し今日は一人ベッドで横になった。


お読み頂き有難う御座います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ