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海路に落ちる影 1

 アリアをパーティーに加えた翌日からはクイルへの出発準備に取り掛かる。

 まずは一日かけてポーチ用の魔核石を集めながら以前も訪れた洞窟奥の溶岩池を訪れた。

 リゼラに火と土の精霊と契約して貰い、溶岩の精霊とはリゼラだけじゃなく俺とティアも契約した。

 この時幻獣操演の訓練のため実体化していたグンとネイが土のカーズドエレメントの魔核石を欲しがったので与えてみると、両方とも土魔術のスキルを得たので種族が変わると幻獣のスキル取得の特性も変わるようだ。

 他にもリゼラが今着ている革鎧よりティアやファナの着ているメタルベアー製の革鎧のほうが良さそうなのでリゼラにも用意しよう。


 精霊との契約後街に転移で戻った翌日、防具屋に顔を出してみるとメタルベアー製の革鎧はあったが男性用で大幅なサイズ直しは出来ないと言われてしまう。

 店を出た後ミラルテの他の防具屋を探してみるかとも考えたが、時間の無駄になる可能性もあるのでダレンまで転移で飛ぼう。

 ポーチ用の魔核石をデジレさんへ渡すと三回ほどの転移でダレンを訪れ以前メタルベアー製の革鎧買った防具屋でリゼラの鎧を注文すると二つ返事で快諾してくれた。

 ついでにアリアのローブもメタルベアー製で作れるか聞いてみると問題ないと請け負ってくれる。

 ただ現品がないので一からの製造になり時間が掛かるとも言われてしまう。

 時間が掛かるのは仕方ないので鎧とローブを注文すると今度もメタルベアーの皮との物々交換を店主の方から提案されたので快諾した。

 防具屋を出るとダレンの迷宮へ潜り夕方までメタルベアーを狩って20程の皮を手に入れ防具屋へ戻って店主に渡す。

 納期は1週間見て欲しいというので了解してミラルテへ転移で帰還した。


 そこからアリアとリゼラには主にアーツブックの読破をして貰い、俺とティアにファナは砦脇の迷宮の上層で防具への付与のため邪霊の灰を集めて過ごした。

 勿論適度なタイミングでアリアやリゼラと一緒に迷宮に入りラーニングアーツをスキルへ上書きしたり、俺とティアにファナも新しいスキルやアーツを身に着ける。

 防具が仕上がるまでの1週間はそうやって過ごし、もう一度ダレンへ転移して防具を受け取ると今度は本格的に砦脇の迷宮へ潜った。

 二日掛けて最下層まで潜りアリアのクラスレベルを上げて魔法使いのクラスを解放し、新しい防具と共にそれも十分鍛えて迷宮を出た。

 ミラルテに戻ってきた翌朝デジレさんの工房を訪ね、アリアに使って貰う俺やティアと同じタイプの亜空間ポーチを受け取り、リゼラとアリアの新しいメタルベアー製の防具へ耐熱変動の付与を依頼した。

 防具の状態を確認してデジレさんは快諾してくれたが、他の仕事との兼ね合いで仕上がりは明日の夕方になると言われた。


 アーツブックも読み終わっているし防具の付与が終われば旅の準備が整うので工房を出るとクイル行きの護衛依頼を探しにギルドへ足を運ぶ。

 丁度2日後の朝クイルへ向かうギルドの商隊護衛の依頼が出ていたので引き受けた。

 ついでにミルネ教会でデルス司祭へ約束通りアリアのカードを見せこの日は宿へ引き上げた。

 翌日は休養日にして宿の部屋で寝て過ごし密かに警戒していたゼス教団の使節団が来ない事が頭を過ぎったが、夕方までゆっくり休みデジレさんから防具を返して貰い代金を払って翌日クイルへ向かって出発した。


 ミラルテからクイルへ直接向かう街道はよく整備されていがシェイドへ向かう街道程の人通りは無かった。

 そのせいか中央山脈から下りてきたと思われるゴブリンやオークの群れと何度か街道上で昼夜を問わず鉢合わせしたが勿論全部片付けた。

 魔物が多いせいか盗賊が襲って来る事は無く商隊全体が適度な緊張感の中街道を南下していった。

 10日程経った夕方、宿営地だと思う開けた場所に商隊が停止したので俺達も野営の準備に入る。

 テントを立てているとオークの群れが襲ってきたとき顔見知りになった商隊付きの討伐者が見回りに訪れ、クイルに着くまであと1日程だからよろしく頼むと声を掛けてくれた。

 太陽が沈むと火を起こし俺以外の4人で作ってくれた夕食を食べると、皆を先に休ませテントに結界を展開するといつものように俺が最初の夜番に立った。


 夜番を始めた直後は周囲を見回したりもしていたが本当に何も感じないので、周囲の索敵はスキルに任せ眠気覚ましに街道の先へと魔眼を向けた。

 森の傍を通っていた街道の風景が段々畑と農家が左右に広がるものに変わっていき、街道の終点に城壁で囲まれたミラルテと同規模の港町が見えた。

 ここの方が標高が高いようで斜め上から街を見下ろせて所々酒場に火が灯り男達が酒盛りをして賑わっている。

 明日この街に着くと今度は海路での移動となるのでどんな船が止まっているのか気になり港の方へ視線を向けると何艘か泊まっている中で気になる旗を掲げている船があった。

 それはコリレスのゼス教会の上にも翻っていた旗でどうやらこの船はゼス教団の所属のようだ。

 確認するため宿直で見張りをしている船上の鎧姿の男を鑑定してみるとゼス教団の外交使節団の一員と見えた。

 嫌な予感がしたので船の中を隅々まで調べて見ると、思った通り片桐君が船室のベッドで寝ていて近くの船室にはセフィネアさんもいた。

 二人の最近の言動を先に探るか迷ったが捕捉眼の目標へ片桐君とセフィネアさんを設定して一旦魔眼を切る。

 焦れる気持ちを押さえて1時間待ち、鑑定眼を過去視眼へ切り替えてもう一度片桐君へ魔眼を向け行動を過去へ向かって順に遡って見ていく。

 早送りで今日の夕方ごろまで遡ると片桐君の部屋をセフィネアさんが訪れたのでそこで一旦時間を遡るのを止め二人の会話を注視する。

「ユウキ、この街の首脳部と話が付いたわ。これで次の襲撃時には自由に迎撃できる。」

「そうか。ありがとう、セフィネア。」

 笑顔で礼を言う片桐君にセフィネアさんも笑顔になって答えた。

「気にする必要は無いわ。でも本当にユウキが襲撃時先頭に立つの?」

「ああ、シェイド辺境伯という人との面会を無理を言って遅らせているんだ、襲って来る魔物を僕の手で討ち取って名前だけじゃなく実力も伴う勇者だとここの人達にも証明してシェイド辺境伯という人の前に立ちたいんだ。」

「さすがユウキね、でも命を大事にだけは忘れないでよ?」

「勿論。僕が救わなきゃいけないのは、ここの人達だけじゃないからね。」

 セフィネアさんが頷いた後二人は長いキスを交わし、彼女が部屋を出て行った。

 そこまで見てまた過去へ時間を遡ろうとすると、テントから次の夜番のリゼラが出てきて交代を告げてきた。

 片桐君たちの行動は気になったが疑問や好奇心は一時頭の隅に追いやりリゼラと夜番を交替する。

 テントに入ると精神安定剤代わりにティアを抱き枕にして眠りに落ちた。


お読み頂き有難う御座います。

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