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追跡 8

 プラーナとマナ不足で魔境との緩衝地帯の森までしか飛べず、転移が終了して直ぐにアビリティも切ったがそれでも疲労困憊で動けなくなってしまう。

 ティアが手渡してくれたプラーナとマナ複合回復ポーションを何とか飲み干してやっと人心地着いた。

 ティアに礼を言いポーチに空き瓶を仕舞って今度は自分のポーチからプラーナとマナ複合回復ポーションを取り出して飲みながら周囲の様子を確かめる。

 リゼラとファナが警戒を担当してくれているようで、騎士達は確保した男の拘束し所持品検査をしていた。

 ついでに俺も男の身元を鑑定してみると、バルラーン王家直属の近衛騎士団所属でシェイド辺境伯領へ派遣されたゼス教団に対する外交使節団の一員と見えた。

 そうなるとこの捕り物は辺境伯家と王家の暗闘の一幕となる訳で、これ以上巻き込まれるのは全力で回避しよう。

 不幸中の幸いな事にこの騎士の身元をまだ誰からも聞いていない筈なので、余計な事を聞かされる前にこの男をさっさと送りとどけてしまおう。

 残ったポーションを飲み干し空き瓶をポーチに仕舞うと厳しい表情で砦の騎士が近づいて来た。

「消耗している所悪いが、どれ位で再度転移法術の使用が可能になるか教えてくれるか?」

 正直な所もう転移可能だし藪蛇かもしれないが厳しい表情をしている理由を教えて貰おう。

「あと5分から10分って所ですね、でもここからならゆっくり歩いても1時間程で砦まで戻れますよね、何か急ぐ理由でもあるんですか?」

「ああ、あの男が不味い事をやらかしてくれたようなんだ。」

 続いて砦の騎士が話してくれた要約すると、どうやら逃亡した男は封魔法結晶で祓魔結界を展開したまま魔境を移動したらしい。

 俺達があのリザードマンジェネラル以外の魔物に魔境で遭遇しなかったのはこの事が原因のようだ。

 他にも結界が押し退ける事により魔境内で魔物の偏在が起こり、密度の急上昇が魔物の活性化を促して魔境全体へ波及するみたいでこれは俺もコリレスのギルドで資料を読んで知っていた。

 ただ一般的な魔境でその行為が魔境全体の活性化を引き起こす確率は1000回に1回位だが、なぜかここの魔境の場合ほぼ間違いなく活性化を誘発するらしい。

 きちんと記録も残っていてそのために魔境を一番通り抜けやすい場所に砦を立てて出入りを監視し不測の事態に備えていると教えてくれた。

 話してくれる騎士の表情は真剣そのもので嘘とは思えない。

 そうなるとこの魔境を通って王都を目指すのは避けた方が良さそうだな。

「恐らく今回も活性化が起きる。だから少しでも早く砦に戻りたいんだ。」

「なるほど。そういう事ならすぐに砦へ転移します。お話の間にポーションが馴染んでもう転移法術が使えますから。」

 よし、と言って砦の騎士は頷いて全員を集めてくれた。


 魔境側の城門前に転移を終えると砦の騎士と御付の騎士の一人が先に砦の中へ駈け込んで行く。

 俺達はもう一人の御付の騎士と捕まえた男を連行して中に入った。

 砦の地下にある牢獄に男を放り込むと先に砦に入った御付の騎士が俺達を呼びにきて、ついて行くと以前も訪れた大部屋へ通された。

 部屋の中には厳しい表情のトガンさんが待っていて、まず俺達と一緒にいた御付の騎士が帰還と男を牢に入れた事を報告すると頷き、俺達の方へ視線を向けて来た。

「詳細の報告は既に受けている。お前達もよく動いてくれた。本来ならこれで依頼は終了であるし、疲れてもいようがお前達にももう一働きしてもらうぞ。具体的には私の手紙をシェイドまで転移で運べ。これはシェイド辺境伯家からの強制依頼だ、悪いが断るなら相応のペナルティーがあると思え。勿論お前達が疲労している事も聞いている。ポーションが切れているなら砦の物を融通するが必要か?」

「分かりました。依頼をお受けします。ポーションもまだ手持ちがあるので必要ありません。」

「では回復を済ませて街道側の城門近くで待機していろ。手紙の用意が出来しだいそれを携えた騎士と共に転移でシェイドへ向かえ。」

 話し終えると立ち上がったトガンさんへ一礼し、騎士達を連れて部屋を出ていく姿を見送った。

 トガンさん達が部屋から出て行くと指示通りに城門付近へ移動しポーションを飲んでプラーナとマナを回復する。

 トガンさん達は余程急いでいるようでポーションを飲み終わって30分もしない内に御付の騎士の一人が俺達の元へやって来た。

 確認のため手紙の現物を直にみせてもらい一緒に転移での移動を開始した。


 一度移動しているアリバイがあるので転移距離をケチらず2回目の短距離転移でシェイドの郊外に出た。

 もう日が沈んでいたので門は閉まっていたが御付の指揮のお蔭でシェイドの町中に入れ、真っ直ぐトガンさんの屋敷へ向かう。

 御付の騎士と屋敷の門衛が顔見知りだったようですんなり屋敷の中へ通して貰え、御付の騎士は手紙を一通執事さんに手渡すとこれで依頼は完了だと俺達に告げ屋敷を飛び出していった。

 そうなるとデルス司祭やアリア嬢と今後の事が相談したいので、二人が何処にいるか聞くため執事さんが手紙を読み終わるのを待つ。

 執事さんが手紙をたたんだので尋ねようとすると、先にデルス司祭やアリア嬢はシェイドのミルネ教会に移っていてここにはいないと教えてくれる。

 そして今持ってきた手紙に俺達を歓待する指示があったそうで明日の朝一番にミルネ教会へ案内してくれるとも約束してくれた。

 今から宿を探すのも手間なのでトガンさんや執事さんの言葉に甘え夕食を頂いた後は昨日と同じ部屋で休ませて貰った。




お読み頂き有難う御座います。

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