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追跡 6

 リゼラに起こして貰うともう身嗜みを整えていて、ティアやファナも起きて着替えを終えていた。

 俺も急いで着替えると丁度終わった所で朝食の準備が出来たと屋敷の使用人さんが呼びにくる。

 豪勢な朝食を用意いてくれ、デルス司祭やアリア嬢達と一緒に食べ終えると昨日の応接室で待っているよう使用人さんに頼まれた。


 通された応接室で全員そろって待っていると暫くして男性法術師が一人部屋に入ってくる。

 俺は一応護衛のつもりなので部屋の隅に移動してなりゆきを見守ると、デルス司祭と法術師が向き合って座り法術師の方から話を切り出した。

「トガン様の命で参りました。私の魔法破壊法術でこちらに滞在中の数名から神聖法術の効果を打ち消せと命じられここへ通されたのですが、どなたになりますか?」

「横にいるこの三名になります。お願い出来ますか。」

「では、早速。」

 法術師が立ち上がり修道女の片方の前に立って手をかざしプラーナとマナを集中し始める。

 すると彼女と俺の繋がりが綻び始め、抵抗すれば再度強固なつながりを作れそうだったが綻びるのに任せて暫く待つとつながりを完全に断ち切ってくれた。

 同じようにしてもう片方の修道女とのつながりも断ち切ってくれてアリア嬢の番になる。

 先の二人と同じように法術師がアリア嬢の前に立って手をかざしプラーナとマナの集中を始めるが、抵抗はしていないのに彼女とのつながりは綻び始める所か多少強化されたようにも感じる。

 それでも法術師は枯渇寸前までプラーナとマナを放出して神聖法術の解除を試みてくれるが不可能だった。

 法術師は解除の失敗をアリア嬢とデルス司祭に詫びるが、二人はこの結果が分かっていたようで仕方ないという表情で謝罪を受け入れる。

 二人の返答に法術師はもう一度頭を下げてプラーナとマナの過消費が原因だろうかなり疲れた足取りで部屋を出ていった。

 正直後はデルス司祭とアリア嬢達をミラルテへ送れば依頼終了と思っていたので、今後どうするかデルス司祭へ問うため近づこうとすると法術師と入れ替わるようにこの屋敷の執事さんが部屋の中に入ってくる。

 恭しく一礼した執事さんはもうすぐトガンさんがこの部屋に来るのでこのまま待っていて欲しいと告げまた一礼して部屋を出ていった。

 それではデルス司祭から話を聞けそうにないので俺も部屋の隅に戻った。


 執事さんが出ていってから10分程すると複数の足音がこの応接室へ近づいてくる。

 扉を開け執事さんとトガンさんが部屋の中に入ってくると、デルス司祭とアリア嬢達は立ち上がって迎え入れ、ソファーを囲んで全員腰を下ろすとトガンさんが切り出した。

「まずはデルス司祭に謝りたい。一人法術の解除に失敗したとか、我らの領一番の魔法破壊法術の使い手だったのだが、このような事態となり誠に申し訳ない。」

 ゆっくりとトガンさんが頭を下げるとデルス司祭が慌てて答える。

「頭をお上げください。トガン様。元々このアリアに掛けられた神聖法術は解除出来ないだろうと覚悟しておりましたので、お気になさらないで下さい。ただ今回の事で私共の教会は注目を浴びてしまいました。暫くの間は辺境伯家縁の子女の方を行儀見習いのためお預かりするのは控えたいと思います。お許し頂けますか?」

「当然でしょうな。」

 デルス司祭の話の途中で頭を上げていたトガンさんは執事さんへ目配せをする。

 合図を送られた執事さんは一礼して応接室を出ていき、デルス司祭は二人の修道女へ立つよう促して立ち上がった二人へ声を掛けた。

「今の時点を持って君達の環俗を認めます。君達の未来に幸多からんことを。」

 ありがとうございますと二人が返すと、間をおかず部屋の扉が開かれ二人の貴族だろう男性が部屋に入ってくる。

 元修道女の少女二人は父様と声を上げて別々の男性の元に駆け寄り嬉しそうに挨拶を交わし始めた。

 暫く待って挨拶が終わると二組ともトガンさんとデルス司祭に礼を言って応接室を出ていった。


 四人が部屋から出て行くのを見送るとトガンさんが話始める。

「デルス司祭、恥を忍んでお願いする。転移を使えるという者をお貸し頂けないか。」

「どういう事でしょう?」

「実は引き渡して貰った犯人から情報を流した者を突き止めたのだが、すでに逃亡済みだった。追跡を命じた早馬は手配済みだが転移法術の使い手は今出払っていて一番早い帰還も今日の夕方以降。少しでも時間が惜しい事態ゆえ教会も追跡に協力願えないか。」

「勿論協力に否はありませんが、護衛の彼らは今回の移動の為に雇ったフリーの討伐者なので強制的な命令権は無いのです。申し訳ありません。」

「なるほど。そういう事なら彼等に優先して依頼を出しても構わないか?」

 デルス司祭が頷くとトガンさんは立ち上がり俺の前まで歩いて来た。

「聞いていたと思うがデルス司祭には許可を取った。こちらの依頼を優先して受けて貰おう。内容は我々が追っている重罪犯の追跡を転移で補助してもらう。犯人を捕らえるか、王都に着いた時点で依頼は終了とする。どちらになろうと報酬として白金貨を一枚出す。何か希望があるか?」

「一つだけ。デルス司祭達の護衛中なのでこちらで安全の確保をお願い出来ますか?」

「当然の事だ、心配の必要は無い。」

「では依頼を受けさせて貰います。装備を身に着けてきますから、この部屋に戻ってくればいいのでしょうか?」

「いや、この部屋には戻らず、玄関前に集まっておけ。」

「分かりました。それでは失礼します。」

 トガンさんに一礼するとデルス司祭とアリア嬢が御武運をと言ってくれる。

 二人に頷き返して応接室を辞した。

 あてがわれた客間で全員装備を身に着け屋敷を出て待っていると、軍装に身を包んだトガンさんが騎士を二人連れて現れた。

「準備は終わっているようだな。わたしと後ろの二人を転移で運んで貰う。まずは北西の門付近へ飛んで貰おう。」

「すみません。この街はこれまで来たことが無いので、入る時に使った北東の門しか飛べないんです。」

「いいだろう。ついて来い。」

 そう言って歩き出したトガンさんついてお屋敷を出発した。




お読み頂き有難う御座います。

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