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一歩目への準備 1

 今日も窓からの朝日で目が覚める。

 起き上がりベッドに腰掛けると本を仕舞った袋が目に入る。

 昨日の夜はギルドで借りてきた本を部屋で読んだが、手に入る蝋燭の限りがある今は夜の長時間の読書は向いていないと感じた。

 借りた本は大体読み終えたし、いったん返して残りは昼間に時間を作って読ませて貰おう。そう決めてベッドから腰を上げた。

 

 装備を身に着け剣帯に本を仕舞って在る袋も下げて部屋を出る。

 出た所に居た騎士が汚れた物を部屋の隅に置いておけば洗って物入れに戻してくれると教えてくれたので、礼を言って一緒に食事を取って教会を出る。

 今日は千葉さんや片桐君と会う事は無かった。

 ギルドに入ると訓練場に直行し病院で覚えた柔軟体操をして走り込みを始める。

 二十分走り込みをして剣の素振りに移り二百回素振りをする。

 これを暫く朝の日課にしよう。

 素振りを終えたので訓練の続きを受けるため資料保管室に移動した。

 扉を開けて中に入るとスタグスさんは昨日と同じように壁際のカウンターの中に居た。

「いらっしゃい、セイジ君」

「訓練の続きを受けに来ましたスタグスさん、それからこれ返しておきますね」

 カウンターの上に剣帯から外した本を仕舞ってある袋を置く。

「もういいんですか?」

「大体読み終わりましたし、蝋燭代も今の俺にはちょっと辛いんで残りは訓練が終わった後、昼間に時間を作って読ませて貰いに来ます。」

「分かりました。私は大概ここに居るので読みたい時は声を掛けてください。それから本を入れていた袋の方はしばらく貸して上げましょう。」

「袋だけ貸すってどういう事ですか?」

「セイジ君は魔核石や討伐した魔物の素材を運ぶ小袋や背負い袋を持っていないんじゃありませんか?魔核石や素材を運ぶのにその袋を使ってください。」

「有り難くお借りします。お金を貯めて自分の物を買ったら必ず返しに来ます。」

「もう使い古した物ですからあまり気にしなくていいですよ。では話はここまでにして書き写しの訓練をもう少しやりましょう。」

 スタグスさんに促され本を取り出した袋を剣帯にさげ、カウンターの席に着く。

 昨日の続きからさらに三ページほど書き写したところでスタグスさんは一冊の本を持ってきた。

「今日の書き写しはもういいですよ。ここからは次の段階に進みましょう。確認ですがセイジ君はアーツという物を知っていますか?」

「アーツですか、いいえ知りません。」

「ではアーツの説明から始めますね。アーツは最初BPを使う以外は取得が困難なスキルをもっと簡単に取得できる方法はないかという魔法帝国の術師達の研究から生み出されました。今ではラーニングアーツと呼ばれているこのアーツは使用にプラーナとマナを消費しますが同名のスキルLv1と同じ効果を発揮し、鍛練や魔物を倒すなどして鍛えれば上書きされる形で同名のスキルを取得できるという物です。そして魔法帝国の術師達は儀式魔法によって生み出された特殊な本を読むだけでこのアーツを取得できるようにしました。」

「もしかしてスタグスさんが今持ってるその本が?」

「ええ、そうです。名前はどの種類のアーツを取得できる物でも一括りにアーツブックと言います。余談になりますがこの本は魔法帝国時代に作られた原典を複製した物です。」

「ちなみにその本でどんなアーツを所得出来るんですか?」

「気鎧というラーニングアーツですね。」

「説明を聞いてた時から疑問に思っていたんですが、アーツとラーニングアーツって何が違うんですか?」

「それを理解して貰う為にアーツの説明を続けますね。スキルを従来より簡便に取得できるアーツという手法を生み出すことに成功した魔法帝国の術師達は、次に武術の達人の技や大魔術師の魔術などをより簡単に伝授するのに、アーツの手法が応用出来るのではないかと思いつき、それを成功させるんです。以降技や魔術などを伝授する方がより重要視されこちらをただアーツと呼ぶようになり、スキル取得の為の物をラーニングアーツと呼ぶようになったんです。」

「それがアーツとラーニングアーツの違いですか。じゃあアーツの方もアーツブックを読むだけで取得できるんですね?」

「いえ、アーツの方は他にも条件が在り対応するスキルの取得も必要になります、さらに発動させるにはそのスキルを必要になるレベルまで鍛えなくてはいけません。後技や魔術などの種類ごとに呼び分けして、武技アーツ、魔術アーツなどと呼んだりもします。アーツについての説明はこのくらいですがまだ何か質問が在りますか?」

「一つだけ確認なんですが、大陸共通語の読み書きを訓練したのはアーツブックを読む為ですよね。何故アーツブックの事まで最初に説明しなかったんですか?」

「早くアーツを覚えたいが為に言葉の理解がいい加減だと、アーツブックからアーツを取得できないんですよ。だから言葉を完全に理解するまでアーツを知らない者には教えないことにしているんです」

 スタグスさんにまだ質問はありますかという視線を送られたので首を横に振って答えた。

「質問は無い様なのでこれから訓練の工程を説明しますね。先ずセイジ君の希望するスタイルに合うラーニングアーツを覚えて貰います。次に迷宮で魔物を倒すことでラーニングアーツをスキルに昇華しそのままレベルを上げて行って貰います。最後にレベルの上がったスキルによりアーツを発動できるようになれば初心者卒業です。」

「俺はもうBPで片手剣スキルを取得しているんですけど、どうなりますか?」

「基準にしているアーツが在りますからそれを発動出来る様になれば卒業ですね。セイジ君の戦闘スタイルは片手剣と固定の小盾での近接戦闘でいいですよね」

「はい先ずそれで行こうと思っています。」

「では最初にお勧めするラーニングアーツは気鎧、魔装衣、小盾、鎧防御、といったところですね。」

「四つだけなんですか?」

「あまり一度にラーニングアーツを覚えすぎるとプラーナとマナの消費が激しくなり過ぎるんですよ。」

「なるほど、分かりました。じゃあその四つは具体的にどんなものなんですか。」

「小盾と鎧防御は小盾と鎧を扱う技能が上昇します。気鎧はプラーナを用いて身体能力の強化や防御力の向上を図るもので、魔装衣はマナで気鎧と同等の効果を得るものですね。」

 小盾と鎧防御のスキルは既に持っているし、気鎧や魔装衣もすぐにスキルを覚えられそうだがカリキュラムに逆らって疑問に思われても損だし、何よりラーニングアーツを試しておいた方がいいだろう。

「スタグスさん、そのお勧めの四つ覚えます。」

 俺の言葉にスタグスさんは頷く。

「気鎧のアーツブックがここに在りますからこれを読むことから始めましょう。本の中身は意味の繋がらない言葉の羅列ですが一文字も飛ばさず、休みなしに読み終えてください。それからセイジ君には四つのラーニングアーツを覚え終わるまでにセカンドウェポンを何にするか決めておいてほしいんです」

「セカンドウェポンってどういう事ですか?」

「メインで使う武器の他にもう一つ使っていく武器を決めてほしいんです。魔物の中には特定の武器の効きが非常に悪い者がいます。だから二つ以上の別種の武器を扱える様になってほしいんです。決めておいてくださいね。」

 そう言って俺にアーツブックを渡し、スタグスさんは自分の書類仕事を始めた。

 セカンドウェポンの事は直ぐに決められそうにないのでアーツブックを読破してしまおう。

 開いたアーツブックの中身は確かに意味の分からない文字の羅列だったが、読み始めると自分の中に何かが降り積もっていく。

 この感覚が途切れない様に読み終わればラーニングアーツを取得できるのだろうと思い、事実そうなった。


気鎧アーツを取得した


 速読スキルの効果もあり思ったより早く読み終わると丁度昼時になったのでスタグスさんにアーツブックを返し、食事の為に資料保管室を出た。


お読み頂き有難う御座います。

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