ディアの父が現れた件
和久名A「これで大方の嘘予告のネタは回収したな」
和久名B「ああ、あの男はじきに絶望にひび割れ微塵になるさ」
和久名A「まさかあの嘘予告を書いた後で分割してネタに使えそうだなと思って、ネタに再利用したとは夢にも思うまい」
コンゴルド「え!?」
この後無茶苦茶残機が減った
「お前が勇者コンゴルドか?」
「…………は?」
ワケが分からない。天井からコウモリがいきなり落ちてきて、しかもそいつが人の言葉をしゃべったかと思ったらそれが無茶苦茶渋い声で更に俺がコンゴルドかと聞いてきた。
無視して掃除に戻っていいよな、このコウモリモドキ……
時間は余りすぎているほどに有るとはいえ、今はディアに頼まれた魔物用廊下の掃除をしているのだ。口を挟まないでくれ。コウモリモドキの分際で……
「さてと、窓拭きは……あの瓦版、魔界新聞だったかを使えばいいか」
「貴様、儂の言葉が聞こえておらぬのか?」
「うるさい黙れコウモリモドキ、今ディアに頼まれたこの廊下の掃除で忙しい」
「な、ぬ……!? 人間の分際で、儂の愛娘のディアを呼び捨てだとぉぉぉぉ!?」
「……は?」
なんだこのコウモリモドキ……なんでディアを呼び捨てにしただけでこんだけキレてんだ?
「許さん! 貴様が何者であろうとも、儂の愛娘ディアを呼び捨てにしたその罪! 貴様の」
「……パパ?」
数メートル程離れた場所の扉が開いたかと思いきや、たった数メートルを歩くという過程をすっ飛ばして、いつの間にかディアがつい数瞬前まで飛んでいたコウモリモドキの足を掴み、宙吊りにしていた。
「おお、ディアか……ところで、何故儂の足を掴むのだ?」
「コンゴルドに何をしていたの?」
「む……いや、ただこの城に珍しく人間がおったから」
「端的に答えて」
コウモリモドキの足を掴む力を強めながらディアが言った。
「やめろディア! なんのつも」
「ごーもん」
「「………………」」
……どうやら質問は拷問ロストマインドに変わっていたらしい。
「話す! 話すから放してくれぬか!」
「……分かった」
コウモリモドキに話すと言われ、ディアは渋々手を離した。『渋々』手を離した理由は分からんでもないが、ナリこそコウモリだが一応父親だからもう少し優しくしてやれよと思わなくもない。同じ男として、同じディアの被害者として……
「この神聖なるディアの城にあまつさえ人の子が」
「コンゴルド、今夜はコウモリ料理がいい?」
「おいやめろディア、親を料理しようとするな」
そもそもこのコウモリモドキを料理するな。
「おい人間! 貴様とディアの関係はなんだ! ただのまおゆう関係か! それとも」
「婚約者、ママ公認の仲」
俺が答えるよりも早く、フライング気味に答えたディア……その回答を聞き、コウモリモドキは……
「…………」
ピキッ
静かにひび割れた。しかし、原型を留めたままという奇妙な状況だ……
「……つまり………………義理の…………」
ひび割れた体で絞り出すようにコウモリモドキは呟き……
「――――息子か」
その言葉を言い残し、ひび割れて体が砕け、灰となって消えてしまった……
「コンゴルド、廊下のお掃除を」
「しとる場合かァッー! お前の親父が」
「大丈夫、ママがパパの同居を認めてた頃」
「……その時点でお前の家庭が歪んでるのが分かるな」
「ママとパパが一緒に住んでた頃はパパが灰になったり霧になったりコウモリになって逃げるのは日常茶飯事だったから」
…………こいつの愛がここまで歪んだのって、絶対リリスさんの仕業だな。間違いない……
???「やめて! 魔皇と魔王の親子に精を搾り取られちゃったら、腎虚になってあの子の精神も燃え尽きちゃう! あなたが死んじゃったら私、そしてあなたの仲間との約束はどうなっちゃうの!? 起つのよ勇者……! 此処で立ち上がれば、きっと勝機はあるかも知れないのよ!
次回、『勇者玉砕、男の花道』!」
コンゴルド「誰だ今の」