魔王が面倒くさい女をこじらせた件
しゃあく「遊馬……」
ディア「コンゴルド……」
なお、ディアの闇堕ち展開は考えていない模様
「ここで会ったが百年目! 魔王ディアボロス覚悟ぉ!」
いきなりこんな出だしだが、何のことはない。ただ何をトチ狂ったか、たった3人の魔王退治のパーティーがやってきただけだ。何も問題はない。少なくともディアには……
ああ、問題があるのはオレの方だ。パーティーの中のひとりに……オレのかつての仲間、王様が厄介払いの為にオレの仲間にしたとしか思えない生きる災厄たる魔女、アリス……あいつがいた。
断崖絶壁のまっ平らなまないたぱい、思わず見とれてしまいそうな金髪、精一杯の無駄な努力が見て取れるイマイチ護れていない胸当て、海竜の逆さ鱗のように蒼い碧眼、男と錯覚しかねない程に平らな胸、人形のように整った……否、人としてあまりにも整いすぎていると言いたくなるような可愛い顔つき、ちくわ道明寺、間違いない
逃げろオレ……奴だ、|人の身にして災厄たり得る魔女、アリスだ……
一行が城に侵入したという知らせを聞いたディアはまずオレを縛り上げた。
曰わく、「あなたを人質にしておくことで極力穏便にすませる」との事だったが、何故か別の意図がある気がしてならない。おそらくオレが逃げたりしないためだとかそんな意図だろう。
まあとにかく、そんな理由で縛られたオレは今、玉座に寄りかかっている状態だ。その状態で観戦しているのだが……
「ディアの奴、明らかに手抜き過ぎだろ」
戦場に出したら一方的に勝つようなあいつなのに、かれこれ5分間ぐらい一方的に防御に回っていた……
というか……回らされていた? でも、なんで手加減する理由が……いや、手加減『せざるを得ない』理由が?
そう思ってアリス達の一行、そしてディアの様子を遠目から確認……
ディアがカウンター気味に攻撃、アリスの仲間A(格闘家)が懐から何かをちらり見せた、ディアの攻撃キャンセル……すげぇ嫌な予感がするんだが……
視力を魔法で増強して更に注意深く観察すれば……あーらまビックリ……アリスの奴、どこから知ったのか知らねえし知りたくもないしどうやって手に入れたのか知りたくもねえが……あいつらオレの写真持ってんじゃねぇか!
なるほど、これならディアも容易に手出しは出来ないだろう。けど……
「仮にも魔王退治の一行がそんな姑息な手とかおかしくねぇか! アリス!」
オレの叫びに2人ほど動きを止めて、こちらを振り返った……
1人は当の本人アリス、そしてもう1人は……
「アリス……それが、この女の名前?」
ディアだ。厳密には、ヤンデレスイッチの入ったディアに聞かれていた。
「覚えていやがれ! 俺達が受けた苦痛を倍にして……ってアリスぅぅぅぅぅ!」
アリスの仲間B(盗賊)が転移魔法を使いながら捨て台詞を吐いた結果、仲間のアリスを忘れた上に捨て台詞さえ最後まで言えずに逃げ去っていった……無論、アリスを置き去りに。
「……あいつら、帰ったら覚えてろよ……」
かなり離れているハズのここでもまだかなりの殺気を感じるのだが、至近距離だと……たとえるならオレの育った国にいたと言われるいにしえの戦士、ニンジャのような(あくまでも全盛期のニンジャに関する伝説によれば、であるが)殺気だった。
「ねぇコンゴルド、あの女誰?」
いつの間にかアリスを縛り終えて、更にいつの間にかオレに後ろから包丁を突きつけていたディアが一言。話せば分かるという名言が育った(略)にあったが……果たしてディアに分かってもらえるだろうか? オレはただの被害者だということを。
「なるほど……かつての仲間だったけどわたしの元に来るときに置き去りにして今は私一筋、これで合ってる?」
「だいたい合ってる」
最後だけ違うと言いたいが、言ったら刺される……
「『だいたい』?」
何故かヤンデレスイッチが入ってしまった。オレ、何かこんな面倒くさいけど可愛いけど超面倒くさい女に付きまとわれるような悪い事したっけ? 衝撃の真実なんだけど
そんな風に戸惑うオレに対して、ディアは続けた。
「まだあの女を愛しているの?」
「まだも何も、そんな過去自体が偽りだよ! Ciだよ!」
「ふざけんなよコンゴルド……! アタシ達と(の冒険)は遊びだったのかよ!」
「途中変に略すな! あとディアは包丁の背で叩くのやめてください人の心が死んでしまいます」
「さっきのあの女の言葉にイラっときた……今は反省している」
「そんなついかっとなってビンビングしたみたいな心理でこんな怖い目にあったのかよオレ!」
度重なるボケの嵐によって憔悴したオレに対してアリスは……
「そういやコンゴルド! お前が旅立った日に気付いたんだけどさ、アタシのブラが一枚減ってたんだけど、アンタの仕業か?」
「え、お前着け……しらねぇよ! ええっと……テスタ、ロッサ……テスタロッサ! 絶対あいつのしわざだろ!」
思わず本音が口から漏れかけたが、ギリギリの所で書き換えした。素で「今のは『プロミネンス・カタストロフ』(火炎系最強にして禁呪)ではない。余のファイア(火炎系最弱)ぞ」という、とある漫画の魔王レベルの魔力を持つアリスの逆鱗に触れれば悲しみの向こうへと旅立ってしまいかねない。危ないところだった。
「テスタロッサって誰? 女?」
……とりあえずディアは事有るごとに包丁突きつけるのをやめてくれませんかね?
「話の流れから分かるはずだが男だ! 可愛い面だが男! メイル! ♂!」
「……じゃあわたしは可愛い?」
「……は?」
「コンゴルド、まだ数えるほどしか……たった8回しか私に可愛いって言ったことない」
思ったことは多々有れど、確かに言ったことは数えるほどしかない。
「だから……分かってるでしょう?」
「あーはいはい分かったよ! 皆まで言うな! 言えばいいんだろ! いくぞディア!」
ディアとの根比べを始めよう。
「可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い! かーわーいーいー! ディアはヤンデレ面倒くさい魔王可愛い! これでいいかディア!」
とりあえず、これだけ言えばディアだって満足……
「コンゴルド……」
していない、だと……?
自分の嫁の竜を進化させようと思ったのに相手に寝取られていた時の真の竜遣いのような反応をとってしまったが、こればかりは仕方がない。
あれだけ言っておきながら未だに満足していないとは……
こんなんじゃ満足できないと言わんばかりの眼でピュアモードのディアに見つめられてみろ、罪悪感ハンパないぞ?
「コンゴルド、大好き」
「あ?」
「大好き大好き大好き大好き、勇者、コンゴルド好き好き大好き好き好き」
「えっ、ちょ」
「大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き、四六時中びーうぃずゆー」
「や、やめて」
「好き、大好き、愛してる、あなたが泣いても愛するのをやめない」
「ヤ、ヤメ」
「好き好き大好き好き好き大好き好き好き好き好き好き、まおゆうの関係だけど愛さえあれば関係ないくらいに大好き」
「…………!!!!」(ゆうしゃ()のこえにならないさけび)
「好き好き大好きコンゴルドちゅっちゅっ」
「………………」
まおうディアボロスはオレことゆうしゃコンゴルドへのいしゅがえしといわんばかりに、エンドレスにあいをささやきつづけた……
にんげんとあくまのはしわたしというていで、オレはえいえんにディアボロスにあいされつづけることになるのだろう……
――そしてあいされるいがいのみちがなくなったので、そのうちコンゴルドはかんがえるのをやめた。
「つまり(略)、更にコンゴルドは……あ、あの女、逃げた……追わなきゃ」
この後、元勇者の仲間アリスと魔王ことディアは魔界を逃走劇の際に荒らし回った。
この事によってアリスにシメられたい者が魔界にも増え始め、魔界に現魔王派閥の穏健派と前魔王派閥の過激派とは別に勇者(というよりその仲間)派閥の革新派が生まれたのはまた別の話だ。
Q.コンゴルドは極東(日本)育ちのハズなのに、何故あからさまに横文字なのですか?
Q.コンゴルドが悪魔を少し恨んでいる理由はなんですか?
A.ちょうせ…次回語ります。もしくはいずれ分かります
Q.エロ本はあるのに何故カメラは白黒が主流なのですか?
A.和久名はあまり考えて…ゲフンゲフン、エロ本に関しては魔界産のため、現代とあまり変わらない程に進歩しています。ちなみにスライム娘モノでした。カメラに関しては、あまり量産化が進んでいなかったとはいえ、王家や貴族の希望に添うために技術のみが進歩し続けた結果、庶民は白黒しか手に入らないが王や貴族はカラーの写真が撮れるようになりました。これによってお見合いの件数が以前の数倍になったとか
アリスが持っていた理由は…きっと脅しとかしたんでしょうね(笑)
Q.12SP(世界破壊ポイント)ってなんで分かるの?
A.魔界の研究者、仮に鳴滝としますが、鳴滝氏は暇つぶしに魔界の広さと魔界を『全て壊すんだ』するための必要魔力を一定の条件下で計算しました。その計算結果の数値の約12倍の魔力をディアは持っていましたとさ。おのれディアボロス…!
Q.作中世界の設定がイマイチ分からない
A.和久名も深く考えていませんでしたが暫定的に決めます。基本的には貴族や王様のいるファンタジー的な世界観と考えておいて下さい。極東は将軍とかいますが、明治維新の起こらなかったような世界観…の予定です。
魔界の技術?世界一ィィィィ!あ、駄目ですか、では真面目に…ファンタジー世界観にちょっと現代の娯楽文化に必要なモノを混ぜ合わせたような感じです。
ちなみに共通的として、銃や戦車などの兵器はまるでありません。あ、一応銃に関しては少しだけ出るかも知れませんが、戦車、装甲車はおろか燃料で動く車はきっとありません。少なくとも作中の世界、時代には。
魔法の存在が人類を発展させたんでしょうね。
しかしその発展はあまりにも早すぎ(略)
あくまでも和久名が気付いた点はざっとこの様な感じかなーと
気になることやここ矛盾してないですかという点があればどうぞ気軽に感想でお伝え下さい。和久名はあまり考えていませんので。