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おまけ

ディアは料理が下手出はないのです。アレンジ料理と隠し味投入が壊滅的に下手なだけなのです。グリーンカリーの隠し味? スライムでした

「……イズモ、料理のアレンジを教えて」

 ある日ディアさんにそんな事を頼まれた。

「料理じゃなくて、料理のアレンジ……ですか?」

 魔界を旅立ってからは料理屋や酒場、もしくは宿場での料理か、野宿中の簡単な料理(更に言えば、これはコンコルドさんの料理だ)しか食べていないからディアさんの料理の腕前が分からない。

 もしかして、料理本を読んでいれば出来るけど無しでは壊滅的な腕なのでしょうか? それとも……隠れていない隠し味が好きなんでしょうか?

 あ、ちなみにコンコルドさんは外出中です。ちょっと聞き込みに行っています。


 とりあえず宿のキッチンを少しだけ借りました。昼過ぎという時間が時間だけに、食材はボク達が自分達で調達するという条件で、快く貸していただけました。

「まずは見せてもらえませんかね? ディアさんの腕前を」

 エプロンを後ろ手で結びながら、ディアさんにお願いした。

 あえて何もリクエストしなかったのは、ディアさんの作れる料理がどこまでか分からなかったからである。それに、異世界人のボクとこっちの世界の住人のディアさんで、同じ名前の料理を作るとしても同じ料理になるとは限らないからだ。

「…………玉葱人参馬鈴薯を切って……」

 作る料理が決まるや否や持ってきた食材の中から必要な物を取り出し、即座に皮を剥き適度な大きさに切った。

 肉じゃがかカレー……それかシチューですかね? オーソドックスなところだと……

「……鍋に水を入れて鍋をふぁいやーして即沸騰」

 ……魔法とはあまり縁がなかったボクが言うのもアレですけど……使い方間違えていませんかね?

「沸いたから切った野菜を入れて竃に乗せて下からふぁいやー」

 今度は弱く長い火を……

 あの、横着してないのはいいんですけど……魔法ってそんな事に使うものなんですか?

 魔法がありふれた存在の世界って……

「ゴルドバットの肉とさっき挽いておいた香辛料を入れて……」

 そこで、思い出したかのようにディアさんは食材の中から、瓶のジュースを彷彿とさせる、蒼い液体の入った瓶を二本取りだした。

「…………なんですか、それ?」

「隠し味、ポーションを2瓶」

「ストップ! ストーップ!」

 ツッコまないように心掛けようとしていたのだが、流石にツッコまざるを得ない。

「……? 隠し味に何か問題?」

「2瓶も入れないでください! 隠し味なのでせめて大さじ1にしてください!」

 大さじ1、とはいったものの……もしかしたら大さじ1でも味を破壊しつくすとんでもない隠し味の可能性があるんですよね……

「……よしっと、これで後は少し煮込むだけ」

「だいたい見ていて思ったんですけど、料理の基本の方は問題ないです。合格です。ですが……隠し味はちゃんと隠せる量にしてください」

「……分かった。…………ありがと」

「いえいえ、人も悪魔も天使も神も、みんな助け合いじゃないですか」

「……仰る通り」

 ……あとは野菜が柔らかくなるまで煮込めば完成ですか……


「……なあ、このカリー、ひょっとして」

「……わたしの手作り、イズモに手伝ってもらった」

「だよなーハハハ……」

 半ば諦めた顔でディアさん特製カレーを見つめるコンコルドさん……

 ボクの視線に気付いたのかコンコルドさんがボクに小声で聞いてきた。

「……なあイズモ、大丈夫だと思うか?」

「……隠し味の量を少なくしてもらったので大丈夫です、多分、きっと。いつかどこかで……」

「……意味分かんねえけど、信じていいんだな?」

「……隠し味以外はボクの知っている作り方と同じですから……まあ、なんらかのケミカルなアクションが起こらない限りは問題なさそうです」

「……まあ、ならオレが先に行く」

 ボクに対して小声でそう言って、コンコルドさんはカレーを口に入れた……

「…………なあディア、正直な事を言わせてもらうが……隠し味らしきサムシングとカリーの辛みが正面衝突してて……マズい」

「………………そう」

 一瞬、ディアさんが悲しそうな目をしたのを、ボクは見逃さなかった……

 そんなディアさんの気持ちを知ってか知らずか、コンコルドさんは「ただ……」と続けた

「……お前のアレンジ料理としてみれば100点中の90点。文句なしの合格だ」

「……コンコルド……!」

「……ああ、マズい。薬草とマンドラゴラと蓬を混ぜ合わせた薬以上にマズい」

 照れ隠しにマズいと言いながらカレーを頬張るコンコルドさんに、思わず笑ってしまう。

「さて、ボクも……いただきます」

 ……ああ、お世辞にも美味しいとは言い難いですね、これ……でもなんだか体にいい気が……

 ……体が軽い、こんな気持ちの良くなるカレーは初めて……

 もう、何も怖くない……

「…………あああ!? おいイズモ! 戻ってこーい! お前神様見習いなのになんで成仏しかかってんだよ! おーい!」

「これが本当の、成仏するぐらい美味しい料理?」

「意味分かんねえから! おーい! イズモ! ゴールするなバカァァァァ!」


 この後無茶苦茶叱られた


アンデットや幽霊にポーションかけたらどうなりますか? ……つまりそういうことです

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