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件名:汝絆を紡ぐ者也

 かつて駆け出し勇者だった頃のオレは心も体も、世界を救ったと伝説で伝えられている数々の勇者には程遠かった……

 更に言えば、表面上でも親切にされればその人物を疑わないようなとんでもない大馬鹿野郎だった……

 だが、ある日立ち寄ったとある村で……心の整理が未だにつかないあの事件が起こって……

「…………」

 ……村長さん、親父さんのあの悲しい目、あの娘と最後に交わした言葉、湖でオレを散々に打ちのめした龍の弱者を見る目……いくらがむしゃらに強くなっても、忘れることなど出来なかった。

 ……だがディアに捕まって、悟った。はるか未来……オレとの老後まで見据えてやがるディアと、放っておけば延々と墓場に逝くまで……亡者や幽霊になっても……あの事件に囚われていた、過去に囚われすぎていたオレ……後から考えてみれば、どちらが勝つのか火を見るよりも明らかだった。

「なあ、ディア……」

「なに?」

「あの時オレはお前に救われた。だから……次はオレがお前らを救う番だ」

 そう告げて……脇差し代わりのディアの包丁と……大きな剣に変身したディアを握りしめながら、城の窓から外へ飛び出した……

「イィィィィヤッホォォゥ!」

 城の窓から屋根、そして家屋の屋根から屋根へと飛び乗りながら敵を見据える。

 敵はとてつもなく巨大だ。俺の背丈のざっと50倍はあるだろう。だが……負ける気はしなかった。ただ単に今までの敵とは比べ物にならないほどに巨大なだけだ。

 ただ、1つだけ不安な要素があるとすれば……

「……あの木偶人形の急所が分からなくて不安?」

「人の心を読むな、ディア」

 唯一にして最大の不安要素がそこなのだ。

 こんな時に限ってまたしてもテスタロッサは居なくなっていた。旅をしていた頃からたまに起こっていたのだが、こんな時に限って……と思わざるを得ない。

 鋼鉄の巨人の弱点が分かる奴は……人形遣いはテスタしかいないのだ。

「コンコルド、あそこ……デカいのの右膝辺り」

「あん? …………テスタ?」

 あまりよく見えないのだが……踊っているように見える。

 その背後で動きを封じられたようにもがく鋼鉄の巨人……

「……すげえシュールだな」

 本人は鋼鉄の巨人を拘束しようと真面目に動いているのだろうが、端から見ればただ踊っているようにしか見えない。

 ……ちなみに、何故舞いで人形を操れるかは企業秘密との事だ。籠手から糸を伸ばしていて、原理がバレバレでも企業秘密だ。

「テスタ! 無事か!?」

「……! コンコルド…………あ、コルド兄さん」

「誰がお前の兄か」

 テスタの瞳の色が変わり、同時に背が一瞬縮んだような気がしたが、気のせいだろう。後天的かつ突発的なオッドアイ化なんてあり得ないだろう。ファンタジーかもしれないがメルヘンではないのだから。

「よっ、ほっ……あ、もうやめていい?」

「心配かけやがって…………なぁ、ディア」

「……あれ、コルド兄ちゃん一人じゃないの? ……ままままさか、幽霊!? ……こいつはネフィリム、フィオナちゃんがなづけたんだ」

 考える事を放棄したのか、目に光が灯っていない。何を話しても返事がないだろう。まるで屍のようだ。

「こいつを倒すには、四肢を切断して動きを封じてから心臓部をたたくのがイチバンだ。死ぬなよ?」

「よし、放っておいて早速あいつを倒すか」

「……了解、サポートは任せて」

 ディアとの連携を確かめて、屋根から機械人形ネフィリムへと飛び移った……


『クハハ、無駄だ! あの人形遣いが倒れた以上、再び動き出すことなど……馬鹿な!』

 指揮官の男は見た……つい数秒前まで気絶しフラツいていたハズのテスタロッサが……その足で、自らの意思でしっかりと立っていたのを……

「……フッ、ショータイムだ。コンコルド……やってしまえ!」


「でぇぇりゃぁぁぁぁぁ!」

 右手のディアで腕を……その性質上比較的脆い設計であろう肩を……切り裂き、反撃にと振るってきたもう一方の手に、脇差し代わりの包丁を突き刺し、しがみついた。

「ディア、大丈夫か?」

「……うん、大丈夫。わたしに乗った蜻蛉が切れそうなくらいに切れ味を鋭くしてあるから、急所を斬れば問題ない」

 ディアの声を聞きながら包丁を腕から引っこ抜き、肩に向けて走り……

「了解っと……っ、せいやぁぁぁ!」

 ディアの言葉を信じて、腕を一太刀で切り落とす。

 足を斬ろうにも斬った後に倒れるから危ない故に、さてどうしたものかと考えていると、下の方から……街の外壁から、アリスの叫ぶ声が聞こえてきた

「ネフィリムもろとも吹っ飛ばされたくなかったら一旦こっち来い」

 直後、ネフィリムの胸部に遠隔で魔法陣が刻まれた

「逃げる暇少ねえよ!」

 ネフィリムの肩を飛び降り、街の外壁部……アリスの近くに降り立った直後、後方から耳をふさぎたくなるような爆音が響いた。

「チッ……あ、よし! ちゃんと間に合ったか」

「今舌打ちしたよな、おいコラ?」

 万が一の事を考えて和らいだ爆風しか当たらないところを飛んでおいて正解だったかもしれない。

「足を斬りたかったんだろう? ネフィリムを倒してやったからな、あとは頑張れ」

「……ねぇコンコルド、確かにネフィリムの手足を斬れば何も出来なくなって、中に居る相手は打つ手がなくなるかもしれない。けど……それってネフィリム退治の根本的な解決になってないのが少し残念」

「…………あっ」

 確かにディアの言うとおり、ネフィリムの手足を斬ればこちらの勝ちにはなるだろう。だがその後ネフィリムをどうする? 動かない動けない絡繰はただのゴミだ。巨大な鉄屑だ。この動かなくなったとして、この鉄屑はどうなる?

「…………アリス、爆発魔法は」

「あれで2割……けど、さっきの5倍、全力出したとしても一切合切消し去るどころか、機能停止が関の山だ」

 どうしようかと3人で悩んでいたところで、倒れたまま放置されていたテスタが呟く

「うむむ……コンコルド兄さん……腹にキックは……ネフィリムの弱点だけどライダーじゃああるまいし貫けないから……」

「…………なあアリス、今の寝言なんだよな?」

「……ああ、こいつ完全に寝てやがる」

 眠っているテスタをそのままにして、一応3人での作戦会議を再開しようとしたところで

「やはりそういう事なのか」

「やはりって何がだよオイ……」

 城に居たハズのフィオナとガイギンガまでもが、再び戦場へと戻って来ていた。

「あのロボットの動力エンジンはきっと腹部だ。だから…………コンコルド殿、あのロボットの腹を引き裂いて、腹の中にだれも居ない事とエンジンが腹部というコトを証明してきてくれたまえ。もしエンジンの動力源が魔法の力もしくはそれに準ずるものだったなら……分かっているね? アリス殿?」

魔力マジックポイント一億ポイント相当の極地的爆裂魔法をかませばいい、でしょ?」

「…………まあ、おそらくそういうことだ」(何言ってるか分からないけど……まあ、いいかな?)

 フィオナの返事が曖昧なのも気にせず、ガイギンガは竜に変身して飛び上がり、蹴りをよけて腹部の上まで飛び立ち、鋭い爪で装甲を引き裂いた。

 傷が浅かったからか、何度も何度も……腹部の装甲が剥がれるまで、切り裂いていた……

「ッシャ、剥がれたァ!」

「でかした!」

 戻って来るガイギンガと入れ違うように、オレとディアは剥がれた箇所に走り……動力源と思わしき魔法機エンジン……その外壁を滅多切りし、核となる結晶を剥き出しにし、斬りつけた

「……硬い」

 勢いで斬ってみたが、流石のディアでも傷一つ付けられないようだった……

 魔力を纏っていない、剣のディアでは……

「座標設定! 誤差修正! 魔力解放準備スタンバイ! 2! 1!」

「カウントが中途半端じゃねぇか!」

 ディアに強化してもらった身体能力で、全力で逃走しながらツッコむ。せめて5とかから数えて欲しかったのだが、そんな気遣いは期待するだけ無駄だろう。だってアリスだし。

 脚の先まで逃げたところで、後ろから爆音が轟く……

 つい先程の爆発よりも、周囲への影響の規模ははるかに小さいのだが、これはアリスが爆発をコントロールし、一点に爆発のエネルギーを集中させることで、破壊力を上げている……らしい。初めて一緒に戦った時に聞いたっきりだから、確かそんな感じだったという程度にしか思い出せない。

 確か、7割が自慢話だったからはっきりと覚えてないが理屈はだいたい思い出した。

 …………かなり遠くまで離れないと爆風の余波がくるということまで……


実はまだちょっと続くのじゃ

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