戦争が泥沼化しそうな件
中継ぎ投稿とか言わんといて!
コラン国軍銃撃部隊は混乱の渦に巻き込まれていた……
(なにがどうなっていやがるんだ……なんで……なんで空から炎が降ってくるんだよ……)
無理もないだろう。城を包囲したと思ったら、突如空からの反撃を喰らったのだから……
混乱の中、兵士はこう呟くしかなかった……
「なんなんだよこの展開……」
その呟きさえ、部隊を掠めるように放たれた火球ブレスによる爆発でかき消されてしまったが。
「ヒャッホー! 最高の気分だせヒャッハー! 汚物は炙り消毒だぜ! 暗黒の炎に抱かれて焦げろぉ!」
「ガイギンガ、ウルサいよ」
「ナーッハハハ! これが高笑いせずに居られるかっての! ねーちゃんの敵の奴らがまるでゴミみてぇに散り散りに退散してくの見てるとな! スカッとするぜオイ!」
「分かったからちゃんと飛んでくれないかな? さっきから何回落ち掛けたと思って……」
「はいはい…………お、今度はどデカい銃か?」
空からガイギンガが見つけた通り、銃が届かない為に次は大砲を持ち出した。
「大筒か……まあ、もう少し高く」
飛んだ方がいいんじゃないかな? という間もなく、吹き飛ばされた……大砲部隊が。
「……は?」
「うぇ?」
吹き飛ばした元凶であろう少女が、一歩……また一歩と歩みながら、魔法陣を組み上げ、呪文を詠唱していた。
「θÅ£※……っ、吹っ飛べ!」
「ギャー!」
「アバーッ!」
「ドヒーッ!」
「アバスゥッ!」
「ヌギャーッ!」
「メギャメメタァッ!」
兵士達は思い思いの悲鳴を上げて、まるでゴミのように吹き飛ばされた。
そんな兵士を一瞥し、少女の後ろにいた男が……戦場に散らばって戦っていた同士達に聞こえるように叫んだ。
「真の戦いを始めようではないか、同士よ! 我らの女神様が再臨なされた!」
『ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!』
…………浮き足立ったコラン軍と現女神アリス、そしてアリスの親衛隊……戦況がどうなったのかは言うまでもない。
「まさか……このような事が……」
コラン軍指揮官の男は、離れた陣から唖然として、自軍の兵士達が吹き飛ばされるのを見ていた……
ついさっきまで圧勝していたハズが、いつの間にか敗走に次ぐ敗走で最悪も最悪、完全に負け戦と化していたのだ……
「もはやここまで……、……いや」
負けを認めようとしない、男の腐りきった根性からか、醜悪そのものの笑みを浮かべ、1人呟く……
「あの兵器を使えば……魔界の地など、負け犬兵など知った事か! 勝てば良い! 汚ない手を使ってでも! 戦争は勝てばいいのだよ!」
そして男は……隠していたモノを取りに、自分達が入ってきた魔界への入り口へと戻っていった。
「ナッハッハー! こんであいつら負けイクサ〜! オレ勝ちィ〜!」
空を飛び、壊走しているコラン軍残兵を見下げながら、ガイギンガが言った。
「いや……おそらくわたしの知らない奥の手を隠しているだろう……わたしの裏切りを見越して、だな……」
直後……鋼鉄の巨人が降ってきた……恐ろしい程の地響きを鳴らしながら……
「…………は?」
それはとても大きかった……天を仰ぐ程に見上げなければ、全容を確認することさえ不可能な程に……
それは『鋼鉄の巨人』であった……別の世界の言葉でいえば、それは巨大ロボットであった……ただし、『巨大』で済む大きさではなく……超巨大ロボットと表現するしかない、強大な巨人であった……
「なんだ……ありゃあ……」
ちょうど腹ぐらいの高さを飛ぶガイギンガが呟く……
本人にとっても未知の存在であっただろう。高さが100メートルにもなろうかという、巨大な存在は……
「其は燃える者也、暴れ、弾け、裂け、砕け、発する者也! すぅっ、『ダークネス・ボンバーァァァァァ』ッ!」
呆然とするガイギンガ達を後目に、命知らずのまな板女神が爆発魔法を放った……
「……っ、やったか!」
爆風でフィオナを落としてしまいそうになりながらもフラグ立てを忘れないガイギンガ……
「フラグやめい! 誰よフラグ立てたの! そこのドラゴンね! 今すぐ墜ちてきなさい!」
「やっべ、見つかった! いいじゃねぇかよ! どうせ効かなさそうなんだしよぉ!」
爆風と土煙が消え去ったが、巨大ロボットには、傷一つついていなかった……
『紅蓮の魔竜、ガイギンガ殿の仕業にございます』
「お前らどっちの味方だ!」
「おいアンタ今すぐ墜ちろ! アタシの椅子になれ!」
「いきなり呼び捨てかよおい! しかも椅子になれとか意味分かんねえんだよ!」
『ガイギンガ殿が羨ましい』
「おーまーえーらー!」
「ギン! 墜ちろ!」
危険に気が付いたフィオナがガイギンガから降りながらガイギンガに命令し……
間一髪、ガイギンガもそれを急降下によって避けた……
『外した、か……』
数瞬前までガイギンガが飛んでいた場所に拳を振るいながら、ロボットが……中にいる指揮官が呟いた。
「「……なんなんだよアレ」」
誰に対して言うでもなく、ガイギンガとアリスが声を揃えて呟く……
「ととと、とりあえずアレの事は『空より落ちた巨人』という意味のサンタ……じゃない、ネフィ」
「おい女……」
「アリス……ディザスターウィッチ、アリスだ」
ちゃっかり通称を教えておくのも忘れない、しっかり者のアリスであった。
「アリス、お前はフィオナ達を連れて先に城に戻れ」
「は? それじゃあアンタはどうするんだよ?」
「………ここはオレに任せろ、っていうのにちょっと憧れてな……心配すんな、オレは…………」
「ガイギンガ……?」
「いや、一緒に逃げるか、その方が多分早いし安全だし」
一応いっておくが、ガイギンガがチキンなワケではない。ただ、より低リスクな方をとっただけである。
「ヘタレだね、ギンちゃん」
「誰がギンちゃんだ、誰が……ふっ、『ガイア・フレイム』!」
強大な炎の吐息で牽制をしながら、アリス達は敗走同然に城へと逃げ帰った……ロボットへの対処法など見いだせずに……
次はテスタのターン!(予定は変更して勇者と魔王のターンになる場合があります)