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最早何も言うまい…という戦況な件

 戦況は最悪だった……最悪の「極み」、そう表現したくなるような、悲惨極まりないものとなっていた……

 魔法の詠唱が間に合わないような速度で、剣を投げても届かないような距離から敵の攻撃が放たれるのだ。故にこちら側……魔王側の攻撃はほぼ当たらない。なのに敵……コランの攻撃は当たるという、理不尽極まりない戦いとなっていたために、城での籠城を余儀なくされた。

 しかしながらに幸いというべきか、城に籠城する兵士達の士気はというとさほど低くはなかった。民と共に籠城しているからなのか、負傷兵も含めておおよそ同兵力、しかも敵は魔界の兵士にとって未知の武器を使っているというかなり不利な状況にも関わらずである。

 これに関しては、ディア曰わく「ママが来れば戦況は一気にひっくり返る、みんなこの事が身に染みているから」との事だ。

 ……リリスさん、どんだけ頼られてるんだか……もしくはどれだけやんちゃしたのか……

「皆の衆! 戦の備えは大丈夫か!」

『応!』

 なにやら無駄に士気の高そうな連中の隊長が、部下達を鼓舞していた。

「リリム様が来られなくとも……覇王竜の末裔が敗れ去ろうとも……我々には女神様が! ディア様に並ぶ美貌と破壊神の如き暴力! それらを併せ持つ女神様が我らの側にはおられるのだ! 女神様の光臨を待たずに死ねるか!」

『否! 我等が魂は女神様と共に有り!』

 ……危ない宗教か何かかな?

 というか、悪魔の連中が女神崇めててもいいのか?

「では……我こそは真に勇ましき者と思うもの、前へ! 人の世まで女神様をお迎えしに行くのだ!」

『はっ!』

「全員かよ! ていうか、お前らの士気高すぎだろ!」

 でもまあ……脱走者が出そうな低士気よりも、突撃者が出そうな高士気の方が幾分かはマシだろう。

 弱音を吐いている連中には、半分くらいでいいからこの女神教(仮)を見習って欲しいものだ……

「おお、コンコルド殿でありませぬか」

「ああ……一つ聞くが、お前らが言う女神様っていうのはどんなやつ……じゃなくて、どのような御方なんだ?」

「まるで奇跡のような魔法を使われる美少女で、海のように広い心の象徴と云われる賓乳の御方にありまする……」

 ……知り合いのトンデモ魔法を使う貧乳美少女いきるさいやくと色々一致している気がしたが、別にそんな事はなかった。

「コンコルド殿、ディア殿にお伝えして頂きたいのでありますが」

「ああはいはい、少しの間だけ城の門を」

「門は開かずに、自分達の部隊を外に送って頂きたいのでありまする!」

「はぁ!?」

 門を開かずに……ということは、つまりいかなる場合であろうともほぼ確実に撤退出来ない事を示す。

 もはや背水の陣どころの話ではない。敗戦の将の足掻き、特攻部隊だ。

「なに、心配はいりませぬ。ディア殿に戴いた書物によりますと、極東のサツマという国は五百にも満たない軍勢で殿を逃すためにつわものの一人一人が悪鬼羅刹の如き活躍をし、無事に殿を国へと帰す事が出来たと聞きました故に……」

「それにしても! 百人位の軍勢で大群、鉄砲の完成系みたいなモンを揃えてるような連中に……」

「我ら不死身のアンデット、鉛玉になど屈しませぬ!」

 見た目がほぼ普通の人間だったからついつい忘れかけていたが、こいつらは皆悪魔なのだった。

「……じゃあ、先に行ってて敵と遊んできてくれ」

「承知!」

 いくらアンデットと言えども、そう長くはもつまい……だから、あいつらが敗走するまでには……

「コルド兄さん!」

「誰がお前の兄か」

 急にテスタに声をかけられ、流れるようにツッコむ。

「大変大変大変! タイヘンでヘンタイなんだよ!」

「ああ、お前の性癖よりも大変で変態なのか」

「ボケてる場合じゃなくて! ……っと、とにかくはやく!」

「……?」

 なにやらすごく焦っているテスタに走ってついて行く。


「……コン…………コルド…………?」

「…………ディア?」

 目の前の光景に関する理解がまるで追いつかない……何故ディアのエプロンは赤く染まっている? 何故ディアは苦しそうな表情をしている? そして何故……エプロンの赤い汚れは広がっている……?

「ディア……っ!」

 血の気が引きそうな……それほどに、精神的にキツい光景であった……


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