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クールな彼女  作者: Satch
7/7

最終話:解決

「せんぱい!」


「みゅーちゃん!」


「せんぱい? どこいくですか?」


みゅーちゃんは息を切らせながら両手を腰に当てて、ちょっと怒ったように半眼で睨んでくる。

小学生がおねえさんぶってるようにしか見えないが…。


「どこって…帰るんだけど?」


「サボるですか…?」


「サボるっていうか、今日1日勉強しても意味ないし…」


「あしたもあさっても授業があるですよ? 意味はあるです」


あしたもあさっても? 無期停学と同じ状態になると理解してないのだろうか?


「いやいや、無期停学になるらしいから授業には出られないし…」


「はぁ…何言ってるですか? 無期停学にはならないです」


「へ?」


なんで無期停学にならないって言えるんだろう? そんなのは犯人が見つかった時しか…。


「っ!? もしかして……犯人が?」


「はい、見つかりましたです」


なんてタイミングだ! どうせならもっと早く…いやいや、贅沢は言えないか。


「で、誰だったの?」


「名前は発表されませんでしたが、3年生の女子ということだけ…」


「じょ、女子がなぜ…」


まさか百合的なそっち系の人とか…?


「なんでも生徒会長を妬んでの犯行だとか」


「妬んで?」


「はい…」


まぁ容姿端麗、頭脳明晰で生徒会長だものな、男子は憧れるだけだろうけど、

女子はそれだけではないのだろう。きっと。


「全校集会は終わりましたので、教室にもどるです」


「う、うん」


後で聞いた話だが、警察は目撃頻度も高く、あちこちに指紋がついている俺は、

ビデオカメラから指紋が見つかっていない点との矛盾から、逆に容疑者から外れていたらしい。

それでも見張られてはいたようだが、全然気付かなかった。


頻繁に女子更衣室に入るのもどうかと思うが、被害届が出てない以上今回は追求はしない。

と言ったとか言わないとか?





午前の授業をいつもの青空学習ではなく、久しぶりに教室で受けた。

サボりたかったがみゅーちゃんが目を光らせていて、教室を出た途端すっ飛んでくる。

どこかに発信機でも仕掛けてるんじゃないかと疑うくらいに。


みゅーちゃん曰く「せんぱいの思考回路は単純ですから」だとさ。

まぁ否定はしないけどね。


昼休みになった時、教室が騒がしくなった、生徒会長が気まずそうな顔で教室に入ってきたからだ。

ゆっくりと俺の前まで来ると、何やらもじもじしてから意を決したように声をかけてきた。


「し、下柳くん…」


「はい」


「その、なんと言うか…」


いつもの生徒会長らしからぬ歯切れの悪い感じだ。


「ここじゃアレなんで生徒会室に行きますか?」


「し、しかし…いいのか?」


「ええ、注目されるの好きじゃないんで」


と周りを見渡すと、生徒会長もようやく周囲の視線に気が付いたようだ。


「そうだな、面倒でなければお願いしようかな」


「問題ないですよ」


教室を出ると腕がなにやらふわふわと柔らかい感触に包まれてふと見ると、

生徒会長が潤沢な胸で挟むように腕を組んでいた。


「んな!? 何してんすか!」


「瑞穂が、こうすると殿方に喜ばれると言っていたのでな…」


「うーん、それ使うところ間違っていると思いますよ?」


「そ、そうなのか? 」


なんだこの人、天然なのか?


「こういうのは一般的に恋人同士でやるものです」


「んな!?」


と叫んで生徒会長は腕を放すと、物凄い速さで1mくらい距離を取った。

その顔は耳まで真っ赤になっている。


「まぁ、男子的には嬉しかったですけどね」


「わ、わたしでもか?」


「生徒会長だからというのも無くは無いです」


一部位が、といったら殴られるだろうな、それにちっちゃい娘が怒り狂って飛んできそうだし。


「せんぱい…そのちっちゃい娘っていうのは、もしかしてわたしのことですか?」


「ひぃ!」


ぐぎぎと顔を後ろに向けると、みゅーちゃんが物凄い形相で睨んでた。


「み、みゅーちゃん、い、いつからいたの?」


「せんぱいがデレデレしているところから、ずっといたです」


「全然見えなかった…って、デレデレはしてないけどね!」


「そうですか?」


「あ、会長? この娘も一緒でいいですか?」


「誤魔化したですね…まったくせんぱいは…後でお仕置きが必要です」


なんか恐いこと言ってるけど、ここは聞こえなかった振りで通そう。


「会長?」


「ん? あ! うん、構わない」


会長も突然出現したみゅーちゃんに驚いていたのか、少し歯切れが悪かった。





「入ってくれたまえ」


「し、失礼しまーす」


初めての生徒会室に緊張して入ると、みったんが笑顔で迎えてくれていた。


「瑞穂、お茶を頼む」


「はーい」


みったんはポットなどが置いてある一角にいそいそと歩いていった。


「そこに座ってくれ」


「はい」


会議室などによくある、畳める長机を2つ並べて配置してあるところの椅子を勧める。

俺とみゅーちゃんが並んで座ると生徒会長は、俺の正面に座った。


「君たちは仲いいみたいだけど、その、付き合ってるのかな?」


「ええ、まぁ」


「そ、そうか…」


こころなしか会長のテンションが下がった気がしたが、まぁ気のせいだと思うけど。


「どうぞ」


みったんは図ったようなタイミングで、お茶の入った紙コップを俺たちと会長の前に置くと、

会長の隣、みゅーちゃんの正面に座った。


「何を聞いてるんですか会長は、そんなの当たり前じゃないですか!」


「そ、そうなのか?」


「そうですよ! そうじゃなきゃ、全校生徒の前であんな風に擁護? できないですよ」


みったんは擁護というところで、俺に視線を送ってきたので、頷いておく。

やっぱり他人から見ると擁護に聞こえなかったよね。


「言われてみれば、そうだな」


生徒会長は、うんうんと頷いているけど、あれは絶対分かってないと思う。


「そんなことよりも、下柳くん」


「はい?」


「今回は、その、申し訳なかった!」


生徒会長はその場で深々と頭を下げると、みったんもそれに習う。


「会長もういいですよ、もともと俺には悪い評判しかなかったですし」


「そんな訳には行かない、悪い評判があったにしろ、状況を悪くした事には変わりがないからな」


「でももう済んだことですし…」


「それでは、わたしの気が済まない」


「そう言われても…」


みゅーちゃんに視線を送ると、スーっと目を反らされた!

そうだよね、この状況で助けを求められても困るよね。


「パ、パンツでも見るか?」


「はい?」


激しく嬉しいけど、何言ってるんだこの人は!


「下柳くんが望むならなら、その、そ、それ以上でも…」


思わず顔がニヤけそうになるが、みゅーちゃんがじぃっと見つめているので、何とかポーカーフェイスを保つ。


「だったら…」


「だったら…?」


ごきゅっと唾を飲む音が聞こえそうな静寂に包まれる。


「もしかして私の体!?」


みったんがそう叫ぶと自分で身体を抱くように震えている演技をする。


「違うから!」


「痛い!」


俺が否定するのと会長が無言でみったんの頭を叩くのと、ほとんど同時だった。


「それで?」


「はい、盗撮した娘達の処分を軽くしてあげて下さい」


警察のほうは会長が被害届を出さなかったため厳重注意で終わったが、学校はこんままだと退学だろう。


「何故、君が彼女たちを擁護するのだ?」


「それは…女子が減ったら詰まらないじゃないですか!?」


「「…」」


会長とみったんは目を丸くして固まっているけど、みゅーちゃんは頭が痛いという感じで目頭を押さえてる。


「…ふっ、面白いやつだな君は」


「え? 何がですか?」


みったんは意味が分からないという感じで、会長と俺を交互に見ている。


「分かった、学校には進言してみるが、期待はするなよ? 生徒会長と言ってもそこまでの権限は無いからな」


「ありがとうございます」


「何が? ねぇかいちょぉお何がですか?」


みったんが会長をがくがくと揺すると、制服の上からでも2つの巨大な丘がぶるんぶるん揺れているのが分かる。

じっくり見ていたいが、みゅーちゃんがまたじぃっと見つめているので、見ない振りを装う。

今日はみゅーちゃんのプレッシャーが半端ない。





「せんぱい、生徒会長の胸ばかり見てたです」


みゅーちゃんは生徒会室を出てすぐ、ぺたぺたと自分の平らな胸を触りながら言った。


「みったんのも見てたけどな、いて!」


がしがしとその小柄な身体で俺の足を踏んでくるが、実際はそれほど痛くない。


「せんぱい? なぜ、盗撮した人たちを擁護したですか?」


純粋な瞳で見上げられて、いつもみたいに誤魔化すことが出来なかった。


「おそらくその人たちは、こんなに大問題にあるとは思っていなかったと思うんだよね」


「ですかね」


「このまま見捨ててしまえば、また別の罪を犯したり、堕落した人生を送ってしまうかも知れない、

それも仕方のない事かもしれないけど、俺たちは心も体もまだ成長途中だから、

1つの失敗で切り捨ててしまうのはまだ早いと思う、まぁ今後の指導も必要だろうけどね」


「せんぱい…」


「まぁ俺みたいにどうしようもないやつもいるけどね」


熱い視線に耐えかねて、ついついふざけてしまう。


「せんぱいは…変態だけど、どうしようもないやつじゃないです」


「みゅーちゃん?」


「せんぱいは優しいです、その優しさを上手く人に向けられないだけだと思うです」


顔を真っ赤にしながらそんなこと言われると、こっちも物凄く恥ずかしい。


「そ、そうかな?」


「でもわたし以外にはあまり優しくして欲しくないです」


みゅーちゃんは頬を膨らませ拗ねたような顔をする。

考えてみると最初に比べてかなり表情が豊かになった気がする。


「善処します」


「約束ですよ?」


みゅーちゃんは心配そうな顔で見上げてくる。


「お、おう」


真っ直ぐ行くと1年生の教室、階段を上がって2階に行くと2年の教室となる場所で立ち止まる。


「じゃあ、せんぱい、また放課後」


「ああ、あとで教室寄るよ」


「寄り道したらだめですから」


「あ、みゅーちゃん」


俺は廊下を歩いていくみゅーちゃんを呼び止めて言った。


「こんど身体測定させてね!」

クールな彼女はこれで終わりです。今回は結構収穫があった気がします。

薄々気付いていたけど自分にはクーデレが書けそうにない(笑)

※本文の警察の対応は実際どうなるのか調べたけど分からなかったので、

本作品に都合の良い形にしました。

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