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クールな彼女  作者: Satch
6/7

第6話:孤立

今回は少し難産でした。

ヒロインがまたクールから離れていってる気もする。

8/30誤字修正。

今日も由佳と由紀と3人で登校、昨日のこともあるので、先に行けと言ったけど、

由佳は一緒に行くと頑として言う事を聞かなかった。


「堂々と覗くおにぃが、ビデオカメラなんて姑息な手を使うわけないもん!」


「…まぁな」


「私の部屋になら仕掛けてもいいんだけどね」


と、いたずらな視線を投げかけて来るが、妹を盗撮して何が楽しい?


「そんなことより大事な話があんだけど」


「そんなこと!?」


由佳が半眼で睨んでくるが今は無視しとこう。


「みゅーちゃんと付き合うことになったから」


「ふーん…………………………………………なんですと!?」


由佳は口をパクパク動かして、何か言いたいが言えない状態で固まった。

そこまで驚くことか?


すると由紀が放心状態の由佳の手をひいて歩き出す。


「遅刻するし」


「だな」


しばらく3人で無言で歩いていると、みゅーちゃんが緊張した面持ちで立っているのが見えた。


「なにしてんだろう?」


充分声が届く距離まで来ても、まだ気付いていないみゅーちゃんに声をかける。


「みゅーちゃん」


「…!」


ビクっと体を震わせて、こっちを振り向いた。


「べ、べつに、あ、あんたのことなんて、待ってないん…だから…ね」


うん、恥ずかしいなら止めればいいのに。


「いや…みゅーちゃん、やっぱツンデレはそんな好きじゃない…かな」


「え…?」


「いや…うん、ごめん」


「まったく先輩は…わたしがどれだけ…」


みゅーちゃんが何かブツブツ言い始めちゃった!


放心状態の由佳の手をひく由紀と、ブツブツ言いながらも俺の袖をキュッと

掴んでいるみゅーちゃんを連れての登校は、何か異様な雰囲気を醸し出しているようで、

すれ違う人みんな振り返って見ていく。


そんな羞恥プレイをしながら登校していると、やっと学校の正門が見えてきた。

そこには何人かの生徒が立っているのが見える。


「なんだろあれ? 由紀、今日は服装チェックでもあるのか?」


「うん? そんな情報はないけどなぁ…」


うーん、行けば分るかと楽観して歩いていると、どうやら正門に立っている連中は生徒会のようだ。

他の生徒はおはようございまーすって脇を抜けて登校しているので、俺たちもそれに倣う。


「おはようございました!」


「そこの男子待て!」


過去形で挨拶したのが気に障ったのか、呼び止めたのは生徒会長の、えーと…滝川クリス○ルさん?


「滝川だ、そしてクリス○ルは余計だ!」


心を読まれたが、まぁ間違えたのはわざとだけどね、俺の脳内美少女図鑑にはしっかり滝川さんは載っている。

凛とした表情にポニーテール、激しく自己主張する2つのおっぱ…山、

すらりと伸びた脚線美を惜しげもなく見せ付けている。


「おねぇさまをそんな欲望の眼差しで見るな!」


生徒会長の右隣にいるショートヘアー以外特筆するところが無い女子がたしなめてきた。

っていうかおねぇさまって呼び方は禁断の香りがするね!


「美少女を見ない男がいるか!」


「「「…」」」


みゅーちゃん、由佳、由紀の下級生トリオが、蔑みの視線でプレッシャーをかけてくる。


「…び、美少女?」


生徒会長はほんのりと頬を染めて恥ずかしげにこっちを見つめてくるが、なにこのクオリティの高さ!


「…会長」


ショートヘアーがそんな生徒会長をたしなめる。


「ご、ごほん、お前が下柳だな?」


「そうですが?」


もしかして告白…な訳ないな。


「われわれ生徒会は下柳健二の登校を認める訳には行かない!」


「んなっ! なんでだよ!」


「…なんでだと?」


生徒会長はギロリという感じで俺を睨んで、そして鼻で笑う。


「ふん、そんなの貴様が良くわかっているだろう? 盗撮だよ」


やっぱりその件ですよねー。


「よりにもよっておねぇさまを盗撮するなんて許せないわ!」


「え…? いまなんて?」


ショートヘアーが重要な事言ったぞ!


「おい、瑞穂! 余計な事を言うな!」


名前あったんだ!


「えー、いつもみたいにみったんって呼んでくださいよー」


「んなっ! 私がいつそんなこと…」


「冗談ですよ、まったくクリス○ル会長はお堅いですね」


「おまえまでクリス○ルって呼ぶな!」


そんな2人のやり取りを、ぽかーんと見てる俺たちに気付いた生徒会長は、少し赤面してごほんとまた咳払いをする。


「そ、そんなわけで我々はおまえの登校を認める訳には行かない!」


なんかグダグダだね。


「そんな権限は我が校の生徒会には無いはずですが?」


と由紀が一歩前に出て異議を申し立てる。頼もしい!


「ふん、そうだが校則には、全校生徒の3分の2以上の署名があれば、学校側に意見書を提出できるとある、

瑞穂が持っているのがその署名の束だ」


するとみったんは署名の束を少しだけ持ち上げて見せた。

早! 1日で集めたのか? どんだけ慕われているんだこの人は!


「で、ですがそれは学校側が受理すればという条件があったはずです」


必死に食い下がる由紀、がんばれ!


「そうだがこれは間違いなく受理される」


生徒会長はさも当然だろうと言う顔をしている。


「何故そう言い切れるのですか?」


「それは私が被害者だからだ!」


「…!」


勝負ありだな、由紀が頑張ってくれたが、生徒会は用意周到で待っていたわけだ。


「ごめん、おにぃちゃん、助けられなかった…」


うっすらと涙で滲む瞳で見上げてくる由紀は可愛かった。


「由紀は頑張ったよ、ありがとう」


と由紀の頭を撫でていると、冷たい視線が3つ突き刺さってきた。なぜ生徒会長まで…。


「な、なぁ、会長、その登校できないのは今日からか?」


「いや、今日この意見書を提出するから、今日は登校していいが、生徒会が監視をする、

しばらく登校できないだろうから、荷物でもまとめておけ」


「おっけー」



心配する下級生トリオと別れて、自分の教室に入ると、好奇の視線が…なかった。

いつものように皆無関心な表情をしている、俺は初めて別な意味でこのクラスになってよかったと思った。

自分達の勉強に支障が無ければクラスメイトが何をしようが関係なしってことだ。


自分の席について俺はふとあることに気付いた、それは警察に事情を聞かれていないこと。

当然こんだけ騒がれていたら話を聞くくらいあっても良さそうなのに…。


そんなことを考えていたら、校内放送で臨時全校集会を行なうため全生徒体育館に集合というものだった。

これはやっぱり盗撮の関係だろう、クラスのやつらは舌打ちしながら移動を開始する。

わざわざ全生徒って言うくらいだから俺も参加しろってことだよな。


そこで、ふと見られている視線を感じて、開いたドアのほうを見ると、ドアから顔だけ出していた生徒会長と目が合った。

生徒会長はビクッとして何も言わずにドアの影にスライドして消えていった。

いやドアのすりガラスに影が写っているからそこにまだ居るんだろう。


ってか生徒会長みずから監視!? 誰かに任せればいいのに…。



「であるからして…」


校長話しなげぇよ、もう誰も聞いてないし、みんなあくびを噛み殺しているから!


「先日我が校で、あってはならない事件がありました」


やっと本題? そこから話し始めればいいじゃん!


「生徒諸君においてはこのような事件を起こさないよう、勉学にクラブ活動に励んで頂きたい」


そう締めくくって校長は壇上から退いた。っていうか本題短ぇ!


「続きまして、生徒会長のお言葉」


校長より生徒会長のが後って…。滝川生徒会長が壇上に登場すると、校長の話で下がり切った生徒達のテンションが、

うなぎのぼりに上がっていく。やっぱ人気あるんだなこの人は。


「先日私は、下柳…いやある男に卑劣な盗撮を受けました、その犯人と思わしき男はのうのうと登校し、

いやらしい目で私の全身を舐めるように、いえ舐められたと言っても過言で無いくらい、全身くまなく観察されました!」


いや…ツッコミどころ満載なんですが…。


って、名前言うから、ほぼ全員の視線が俺に向いているじゃねぇか!


「私は下柳…いやその男の行為を許す事ができません、ですが私も鬼ではないので、

逮捕、退学させられる前に、その男に自主退学という選択肢を与えます」


自主退学はしない、みゅーちゃんと約束したんだ、何があってもみゅーちゃんを守るって。


「もしこの件で何か言いたい事がある生徒は、今発言するか、後で生徒会室に来て欲しい、以上だ」


そこで1年生のほうがザワザワと騒がしくなった。誰かが手を上げているようだ。


「ん? 貴様は今朝の…何か言いたい事があるなら言ってみろ」


生徒会長が気付いて、発言を許可する。


「…は…わ…て…」


何か発言しているみたいだけど、よく聞こえない…。


「聞こえんな、壇上のマイクを使いたまえ」


会長に言われて、おずおずと壇上に上がってきたのはみゅーちゃんだった!


「みゅーちゃん…」


壇上に上がったみゅーちゃんは、マイクを指でトントンと叩いて確認している。

いやさっき会長とか話してたし確認しなくていいと思うよ?


「せんぱい、下柳せんぱいは、不注意でぶつかってしまったわたしの胸を触り、

転校してきたばかりのわたしを職員室まで連れて行ってくれました」


「む、胸を触った!?」


いやいや触ってないから! みゅーちゃんは俺のフォローをしてくれんじゃないのかな?

いい話と悪い話で相殺されちゃってるから!ってもう俺限定になってるね…。


「屋上ではパ、パンツを見られましたが、せんぱいのお部屋では

ちゃんとわたしの話を聞いてくれました」


「パ、パ、パンチュを見られた!? お、お、お部屋!?」


相殺どころか悪い方が勝ってるよね!? 会長も噛んじゃってるし!


「そんなせんぱいが盗撮なんてすると思いますか!?」


みゅーちゃんは説得力って言葉を知らないのかな?


「するな?」「しそうだよな?」


とか話しているのが聞こえてくる。


「そうです、そんなせんぱいなので、盗撮なんてするはずがありません!」


いやいや、みゅーちゃんもっと視野を広くして、回りの意見に耳を傾けようよ…。緊張してんのかな?


「ですので、犯人が分るまでは、やりそうだからという理由で、せんぱいを疑うのを止めてください!」


フォローになってない気がするけど、みゅーちゃんありがとう!


「もしせんぱいが犯人だった場合は、煮るなり、焼くなり、埋めるなり好きにして構いません!」


怖! なんか多いいし!


「ふん、残念ながら意見書はもう学校側に提出してある、犯人であるにしろ無いにしろ、

意見書が施行されれば、下柳は登校できない、無期停学と同等の扱いだ」


「わ、わた、わたしが守ります」


「どう守るというのだ?」


「そ、それは…」


みゅーちゃん、ありがとう、どう足掻いてもここまでのようだ…。

まだ続いている全校集会のクラスの列を抜け、俺は1人教室に向かう。


教室に入ると、すでにまとめておいた荷物を持ち、すぐに教室を出る。

教室を出る時、ふと振り返ったが、そこには何の思い出も無かった。


進学クラスで無ければ、友達とバカを言い合ったり、異性の話をしたりして、

今と違う生活があっただろうと思う。


学校と教師の見栄のため、テストの結果だけで進学クラスに入れられた結果がこれだ。

まぁ俺も自分の能力をバカ正直に見せてしまっていたのも原因かもしれない。


他のクラスのやつは進学クラスの人間と交流をしたがらないし、進学クラスのやつは、

何の努力もしないでテストだけ良い点を取る俺を妬んでいたし。


完全孤立状態とはこのことだろう。

まるで空気のような学校生活、いや空気は必要とされているけど、俺はいてもいなくても同じ感じ。


俺という存在が学校に居る事を知らせる方法として考えたのが、女子更衣室などの覗きとかで、

変態というレッテルを貼られること、悪い噂はすぐに広がるしね。

まぁ嫌々覗いていた訳でもないし、必要とされていないところは変わらないけどな!


そんな俺なので、由佳、由紀には俺のほうから近づかないようにしていたし、

こんな兄(由紀は妹じゃないが)がいても、あいつらなら大丈夫だろうという思いもあった。


でももう疲れてしまった、脳内美少女図鑑も消去の時が来たということかな。

まぁハードディスクでは無いので、簡単に消えないけど。


そんなことを考えて歩いていると、正門が見えてきた。

あれを通ってもうそのまま放っておけば、俺の高校生活も、卒業とは違う終わりを迎える事になる。


何の躊躇いもなく普通に歩くように正門を通り過ぎようとした時、走っている息づかいのような、

泣いている息づかいのようなものが、後ろから聞こえて来て振り返る。


「せんぱい!」

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