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限定 特盛 盛り超絶マオパフェ

王都城下、最大の繁華街。


サヤカは期待に胸を膨らませていたが、初めて目にする「異世界メシ」を前にして、そのテンションは秒で垂直落下した。


「……ちょ、待って。これマジ? 思ったよりグロなんですけど……」


露店に並ぶのは、トカゲの丸焼き(青色)や、目玉がぷかぷか浮いた謎スープ。人間だけじゃなく、犬の頭をした亜人や、触手があるんだかないんだか分からない生物が普通に買い食いしている。


「あー……そうか。ここ、異世界だもんね。多様性、ありすぎでしょ……」

完全に食欲を失いかけたサヤカだったが、ふと、一軒の店の看板に目が釘付けになった。


『昼夜問わず』


「なにこれ!? この馬鹿みたいなネーミング! センス疑うんだけど!」


だが、その看板の下には、サヤカの理性を一瞬で崩壊させる魔法の言葉が躍っていた。

【限定30個・特盛り盛り・超絶マオパフェ】


「限定……!? 無理、限定物に弱いあたし、抗えない……! だから資格マニアなんてやってて、魔王の資格を取ったんだよね⤵」


一瞬、自分の人生の選択を振り返って我に返るサヤカだったが、空腹と限定への渇望はすでに限界を突破していた。


「当たりハズレとか、もうどうでもいい! 行くっしょ、これは!」


サヤカは勢いよく店の扉を蹴り開ける勢いで飛び込んだ。


店内は熱気に包まれ、すでに満席。


店員が申し訳なさそうにサヤカのもとへやってくる。


「いらっしゃいませ。ただいま満席ですので、相席でもよろしいでしょうか?」


「パフェ! パフェ食べられるなら、全然オッケー!」

即答したサヤカは、店員に案内されるまま、店の奥のテーブルへと向かった。

しかし、そこに座っていた人物を見た瞬間、サヤカの動きがピタリと止まった。

「……げっ」

そこには、山のような特大パフェを無我夢中で貪る、勇者アランの姿があった。

わざわざ、銀の鎧を脱ぎ捨て、袖を捲り上げてスプーンを振るうその姿は、先刻の威厳など微塵も感じさせない。


「へぇーーーーっ。勇者様って、スイーツ好きなんだ……?」


ドキッ!!

アランは 辺りを見渡す。

(声に……聞き覚えが……はて?どごでだったか……)

アランは口角に生クリームをつけたまま、石像のように固まり考える。


(そうだ…さっきの魔王の声だ…)


そして、ゆっくりとスプーンを置き、咳払いを一つ

「ふっ……。勘違いするな。これはあくまで、調査だ」


「調査ぁ?」


サヤカは白い目を隠そうともせず、ドカッと対面に座った。


「勇者たるもの、いついかなる時も警戒を怠ってはならない。どこに魔王の罠が潜んでいるか、成分から甘味のバランスに至るまで、検証しなければならないのだ……」


「へぇー、そうなんだー……。検証、大変そうだねぇー……」


サヤカの視線はもはや氷点下だったが、アランは必死に冷静さを装っている。


「それで……貴様こそ、何をしに来た? 魔王ともあろう者が、このような庶民の店に」


「私は外の看板にパフェって書いてあったから、食べに来ただけ。

……で、店員さん! あたしもあの盛り盛りパフェ一つ!」

サヤカが意気揚々と注文しようとした、その時。

アランはパフェの横側からサヤカの顔を覗き込み、ニヤリと勝ち誇った笑みを浮かべた。


「残念だったな。……俺が最後の一人だ」


「……えっ!? ウソっ!?」


「嘘ではない。ここは『パティシエ亜美』がプロデュースする至高の店。……ちなみに言っておくが、亜美も『異世界転生職業通信講座』の資格習得者だ。リサーチ不足だな、魔王」

アランは滔々と、聞いてもいない情報を脳弁に語り出した。


「流石は勇者様……。スイーツ店のリサーチ能力まで単位に含まれてるなんて、マジ感服しますわぁ」


「ふっ……。勇者とは、常に最先端の情報に通じていなければならんからな……」

皮肉を込めて言ったのだが、アランはなぜか冷や汗をかきながら謙遜している。

(褒めてねーし。てか、お前が食べちゃったからあたしの分がないんじゃん!)

と、そこへ店の奥から一人の女性がやってきた。

フリルのエプロンを纏った、清楚な美少女——彼女こそが、パティシエの亜美だった。


「勇者様、おはようございます!」

亜美は満面の笑みでアランに駆け寄った。


その瞬間、アランの表情が「凍りついた」のがサヤカには分かった。


「ようやく、私のパフェを食べていただけたんですね♪ しかも……今日は、彼女さんとご一緒なんて……」

アランの顔から、滝のような冷や汗が流れ落ちる。


「……あ、いや、亜美さん、これはその……」


「あれだけ私に『彼女いないんだよね』とか『亜美さんの作るお菓子が世界で一番好きだ』とか、思わせぶりなこと言っておいて……。当てつけですか? それとも、私をからかっていたのですか?」

亜美の目が、笑っているのに笑っていない。いわゆる「ヤンデレ一歩手前」の光を宿している。

(……あ、これ、修羅場だ。勇者様、まさかのチャラ男系?)

焦りまくるアラン。それを見たサヤカの口角が、ゆっくりと吊り上がった。


魔王としての本能か、それともギャルとしての悪ノリか。

(やめろ……まて魔王……落ち着け……それだけはやめろ……!)


アランの心の叫びが、視線を通じて伝わってくる。


だが、サヤカは楽しそうに、そして完璧な「悲劇のヒロイン」の演技で、禁断の一言を放った。


「勇者様……。亜美さんにも、同じことを言ってたのですか? 『君が一番の運命の人だ』って、あたしに言ったのは嘘だったの……? 酷い……っ!」

サヤカは顔を覆い、肩を震わせる。


「なっ……!? き、貴様、何をデタラメを!!」


「最低……。勇者様、最低です!」


亜美の冷たい声が響くと同時に、アランは絶望に打ちひしがれ、そのまま目の前の巨大パフェの山に顔を埋めた。


「ぐふっ……!!」

生クリームに顔を突っ込んだ勇者を横目に、サヤカは心の中でVサインを掲げた。

(限定パフェの恨み、これにて清算完了♪)

と ほくそ笑んだ。

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