表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/51

カオス

「楽しい前哨戦も、もうおしまいだよ」

静寂を切り裂くその一言に、テラスにいた四人の魔王——サヤカ、キーラ、ガン・シールダー、そしてフードの男が、一斉に上空を見上げた。そこには、月を背負い、退屈そうに空中に腰掛けるシェリーの姿があった。

「師匠……いくらなんでも、このメンツの前でその態度はまずいですよ。超ピリピリしてるんですから……」

サヤカが冷や汗をかきながら、気まずそうにフォローを入れる。

「フン、誰かと思えば。元・魔王軍四天王のシェリーさんではないか……」

フードを脱ぎ ティン・ガロが、忌々しげに彼女を睨みつけた。

「そうだね。たかが四天王の、ティン・ガロさん」

シェリーは腕を組んだまま、小馬鹿にしたように名前を呼び返す。

(えっ……あいつ、ティン・ガロだったの!? アルくんだと思ってた……。あぶなーい、呼び間違えなくて良かったぁ……)

サヤカは内心で冷や汗をかき、恥ずかしさで顔を赤くする。

「……それは、つい先までの話だ。今の私は暗殺魔王の力を継承した、真なる魔王だ。四天王ごときが、この私を見下ろすな!」

ティン・ガロが殺気を込めてシェリーを見上げた時、彼女は不敵に口角を上げて笑った。

「面白いことを言うねぇ。一体、誰が『闇の魔王』を正式な魔王だと決めたんだい?」

「何……?」

「いいかい。ミレニアムイヤーの選出権限があるのは、正当に選ばれた六魔王のみ。そして、候補者である魔王を倒してその力を継承した者だけだ。

つまり、闇の魔王側から参加できるのは、正規の魔王を一人でも倒して力を奪った者だけ……。ティン・ガロ、お前が倒したのは、所詮『闇の魔王』の一人でしかない。だから……お前には、大魔王になる権限なんて初めから無いんだよ」

シェリーの冷徹な指摘に、ティン・ガロの顔が怒りで歪む。

「……魔王の法に詳しいようだが。ならば、この場にいるキーラかサヤカを今ここで倒せば、何の問題もないわけだな……?」

「その通りだ。……だが、お前には無理だね。なぜなら、今日この時を以て、ミレニアムイヤー本戦まで魔王同士の争いは一切禁止されるからさ」

「シェリー……貴様こそ分をわきまえろ! 四天王崩れの分際で、この私に口出しできる立場にあると——」

ティン・ガロが激昂し、影の刃を向けようとしたその瞬間。

シェリーが、ただ静かに人差し指を彼の方へ向けた。

ドォォォォォォンッ!!!!!

「がはっ……ぁぁああッ!?」

衝撃波ですらない。ただの「意志」の奔流のような何かが、ティン・ガロの身体を紙屑のように吹き飛ばした。彼は抵抗する間もなくアイアン・ハーツのカラクリ城の堅牢な外壁に激突し、深いクレーターを作って埋め込まれた。

最強を自負していたキーラも、鉄壁を誇ったガン・シールダーも、その異次元の力に目を見張る。

「……貴様、何者だ……。四天王なわけがあるまい。まさか……お前が……先代の『大魔王』とでも言うのか……!?」

壁から血を吐きながら、ティン・ガロが絞り出すように問う。

「ふっ……。あたしが大魔王なら、あんたらは今の一指しでとっくに消えてるさ」

シェリーは妖艶に口角を上げて笑った。その瞳の奥には、居並ぶ魔王たちが逆立ちしても届かない、深淵のような魔力が渦巻いている。

「さあ、おしゃべりは終わりだ。大人しく自分の国へ帰りな。本戦の鐘が鳴るまで、あたしの目の届くところで勝手な真似はさせないよ……!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ