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忍術対オールレンジ

「ふん……。なるほど、忍術や忍法を母体とした古の隠密行かい。

あたしの魔導ネットという『光』の裏側……影に潜り込んで、深いところまで入り込んできたってわけだね」

キーラは悠然とキセルを燻らせたままである。花魁下駄の音がコツンと鳴るたび、彼女の周囲に浮遊する魔導ビットが複雑な幾何学模様を描いて回る。

「だがね、そんな理屈で容易く倒せると踏んだのなら、笑止千万。あんた、あたしの『機巧からくり』を舐めすぎだよ」

「……能書きは死んでから吐け、最強の魔王」

影の中から、実体のない声が幾重にも重なって響く。

闇の暗殺魔王は、魔導ネットの通信波が作り出す微かな影の隙間さえも利用し、縦横無尽に移動する。その機動力は、もはや物理法則を超越していた。キーラのガントレットが狙いを定めようとしても、相手は捉えどころのない霧のように消えては現れる。

月光はテラスに立つキーラを青白く照らし出し、和風ゴシックの衣装が夜風にたなびく。その姿は、冷徹な機械人形のようでもあり、同時に人を狂わせるほどに妖絶であった。

静寂が支配する一瞬。

キーラが、使い終えたキセルをテラスの縁でコツンと叩いた。

その微かな音を合図に、世界が爆発する。

「死ねッ!!」

暗殺魔王が動いた。

『闇奥義・月光分身』。

四方八方、そして真上と真下。全方位から、実体を持った数十人の分身が一斉に飛び出した。鎖鎌、クナイ、妖刀——。あらゆる暗殺武器が、魔導の鎧さえも切り裂く呪いを纏い、キーラの華奢な身体へと殺到する。

「……遅いね」

キーラの瞳の中で、青い情報の奔流ログが超高速で流れる。

彼女は動かない。ただ、右腕の『魔竜ガントレット』が、機械仕掛けの龍が咆哮するかのような重低音を響かせた。

「魔導回路、全開。……迎撃システム『万華鏡カレイドスコープ』、起動しなよ」

キーラの足元から、無数の魔力糸が万華鏡のような多角形の防壁を形成する。

それと同時に、浮遊していた魔導ビットから、月光さえも焼き切る高出力のレーザーが、精密な計算に基づいた「網」となって全方位へ放たれた。

「ガ、ギ、アァァァッ……!!?」

分身たちが次々と光の網に捕らえられ、悲鳴と共に消滅していく。

だが、暗殺魔王の本体は、その光の檻をすり抜けるための「最後の一手」を隠し持っていた。

「……本命は、そこかい?」

キーラが、初めて視線を斜め上へと向けた。

そこには、光の網の死角を縫って、心臓を突き刺そうと迫る、一筋の影の刃があった。

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