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闇への快感!!

メテオの王城は、もはや石造りの建築物ではなく、どす黒い負の感情が脈動する巨大な心臓と化していた。

かつてメテオの繁栄の陰で、独裁の犠牲となり、非業の死を遂げた者たちの残留思念。その怨嗟を貪り、闇の魔王は膨らみ続ける。

「おのれ……。この私を、メテ王を、闇へ引きずり込もうというのか……!? 離せ、離せぇっ!」

王の間で逃げ場を失ったメテ王が絶叫する。しかし、空間を埋め尽くす怨嗟の声は止まない。

『お前が……見捨てた者の声を聞け……。お前が……殺した者の冷たさを知れ……』

どろりとした闇がメテ王を包み込み、その肉体を内側から作り替えていく。独裁者の醜い欲望と、犠牲者たちの巨大な怨念が混ざり合い、ついに最悪の怪物が産声を上げた。

「……あ、ああ……。力が……満ちる……。そうだ、これこそが、メテオを統べる真の王の姿だ!!」


召喚されたこの地に降りた魔王は その闇にのまれ、ドロドロの怪物と化したが

メテ王は その闇に打ち勝ち

闇の魔王として爆誕した。

その眼光が、城の地下へと向く。

「双子の『魔王』どもを寄越せ……。あの欠陥品どもの命を喰らい、私は完全なる大魔王へと至るのだ!」


その頃、城の地下通路。


真雄まおくん、桜花おうかちゃん、こっちよ! 早く!」

小さな猫、ニャーま神が短い足を必死に動かして先導する。


「はぁ、はぁ……。ニャーさま、お父様はどうしたの? なんでお城がこんなに真っ暗なの……?」

兄の真雄が、震える妹の桜花の手を強く握りしめながら尋ねる。

「今は説明してる暇はないわ! あんたたちのお父様は、もうお父様じゃない別の『何か』になっちゃったのよ!」

しかし、懸命な逃走も虚しく、三人は崩落したガレキによって塞がれた袋小路へと追い詰められた。背後からは、壁を溶かしながら迫り来るドス黒い闇の波動。

「……見つけたぞ、出来損ない共」

通路の奥から、闇の魔王となったメテ王の影が伸びる。

一方、城の中央大階段。

テミスと清兵衛は、王の狂気に当てられ理性を失った親衛隊の刺客たちを、次々と薙ぎ払っていた。


「清兵衛、ニャーま神からの通信だ! 双子が地下の最深部で追い詰められたぞ!」

ニャ王ま神が心配そうに叫ぶ


「清兵衛、ここは私が引き受けます。あなたは先に行きなさい!」

テミスは階段の踊り場で足を止め、迫り来る数十人の刺客に向けて、光の矢を番える。

「しかし、テミス殿! この人数を一人で……」

「私を誰だと思っているのですか? 『月下の射手』の名は伊達ではありません。……行って、あの二人を、メテオの未来を救ってください!」


「……恩に着ます! ご武運を!」

清兵衛は形代を足元に敷き、爆発的な加速で地下へと跳んだ。

「やめて……来ないで!」

桜花が真雄の背中に隠れて泣き叫ぶ。

「桜花は僕が守る! 出来損ないだっていい、僕たちは、あんたの道具じゃないんだ!!」

真雄が小さな拳を固め、闇の魔王に立ち向かおうとする。だが、魔王の放つ触手が、無慈悲に二人を貫こうと振り下ろされた。

「死ね。私のための肥やしになれ」


「させませんッ!!」


ズドォォォォォン!!!


天井を突き破り、白銀の光を纏った一人の陰陽師が、双子の前に舞い降りた。

「急々如律令! 五行結界・金剛盾!!」

清兵衛が展開した五色の光壁が、魔王の触手を正面から弾き飛ばす。

「真雄くん、桜花ちゃん……。遅くなってすみません。もう大丈夫ですよ」


清兵衛は、背中の二人を庇うように立ち、形代を構えた。その背中は、かつてメテオの冷徹な役人だった時の彼とは違う、優しさと決意に満ちていた。

「雨乃……清兵衛……。貴様、裏切り者が何をしに来た……」


「裏切ったのではありません。私は、本当の『王』を見つけに来たのです。……メテ王、いえ、怨嗟の塊よ。その命、私が預かります!」

絶体絶命のピンチに間に合った清兵衛。

だが、闇の魔王と化したメテ王の力は、想像を絶する領域に達していた——。

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