姫&聖女賢者ミラと俺様系ナルシスト魔王リュウガ
(せっかくのお誘いだけど……遠慮しまーーーーす!
だって、あんたの手を借りたら『自力で獲った』ことにならないし、大魔王になれないじゃん♪)
精神の世界で、サヤカはリュウガの差し伸べた手を、軽やかな動作でパチンとはねのけた。
(それに、冷静に考えて? あたしとあんたは敵同士。
あんたがこのまま消えれば、あたしが大魔王候補に近づく……ただそれだけのこと。
じゃあ、あなたがいなくなった後のムーン・サウンドは、あたしが責任を持って治めるね♪
バイナリンコ!!)
(フッ……。噂に聞く 可愛げのない小娘だ……)
リュウガの意識が遠ざかる。
今のサヤカには、先ほどまでの絶望は微塵もなかった。
サヤカのギャルパワーが一気に高まりを見せる。
だが… 彼女はそこで暴走しなかった。
通信講座「アンガーマネジメントの効果が 熱くなり過ぎた頭を瞬時に冷却する。
(一気に叩き潰すのは簡単だけど……それじゃ、あの闇の本体を引きずり出せない。
蛾次郎、あんたのその『根性』、闇に食わせたままじゃ終わらせないんだから!)
サヤカは魔力をあえて蛾次郎の出力より「少し弱め」に設定し、オーラを絞った。
それは シェリーが考え出した戦法…
これは相手を甘く見ているのではなく
常に緊張感を持って挑むためだ……
「そうよ…サヤカ…
前のあなたは、知らず知らずに、魔力に頼り相手を見下した戦いをしていた……
だから 相手に隙を突かれ、反撃を喰らう事もあった…私に…」
シェリーは口角をゆっくりとあげる。
「蛾次郎……。これが、マジのファイナルラウンドよ!!」
「殺ス……殺ス……ッ!!」
理性を失った蛾次郎が、黒い炎を纏った拳を振り上げる。
サヤカはそれを避けるどころか、自らその死の旋風の中へと飛び込んだ。
肉を切らせて骨を断つ——ギャル流の、捨て身の特攻である。
一方、その頃。
ムーン・サウンドの「昼夜問わず」の店内では。
「おのれぇぇぇぇぇ……っ!! あのギャル魔王……!! この俺様の至高の好意を、あんなゴミみたいに無駄にしやがって……!!」
ドォォォォォン!!
瓦礫の山が内側から爆散した。
そこには、左肩に深い傷を負いながらも、憤怒の形相で拳を突き上げるリュウガの姿があった。
「あ、リュ、リュウガ様ぁぁぁ……っ!!」
バルバトスが、人目もはばからずリュウガの胸元に飛び込んだ。
「何をしている……バルバトス……。痛いと言っているだろう、俺様は怪我人だぞ……。
あのおてんば娘のせいで、プライドがズタズタなのだ……」
「肉体の怪我は、私が治しました! ですが、魂の修復までは、私の力では及びませんでした……。
姫&聖女の衣装を纏いし 賢者ミラは頭を下げる。
「よくぞ、よくぞ復活させました!!
ミラ殿!!」
バルバトスは涙を流しながら、リュウガの傷が塞がっていることを確認する。
リュウガは、自分の肩に当てられていた、柔らかな白い光を放つ手を見つめた。
「……バルバトス、そなたが俺様を治したのか?」
「いいえ。私一人の力ではありません。……こちらのお方が、あなたを救ってくださいました。ムーン・サウンドの王女でありながら、伝説の大賢者様の弟子となられた、賢者のミラ様でございます」
バルバトスが促した先にいたのは、凛とした空気を纏った一人の女性だった。
彼女は静かに杖を置き、リュウガに向かって軽く会釈をした。
「……王女ミラ、です。
魔王リュウガ、あなたの『この街を守りたい』という強い意志が、私の癒やしの術を助けました。……あの方……サヤカ様が創ったこの景色を、私も失いたくはなかったから」
「賢者、ミラか。フッ……。俺様の美学に、女たちの助けが必要になるとは。
……だが、礼を言おう。
おかげであの小娘に、もう一度『貸し』を作るチャンスが残ったようだ」
リュウガは肩の傷跡をさすり、不敵な笑みを浮かべた。
「バルバトス、ミラ。戦いはまだ終わっていない。闇の十人衆……残りの九人も、俺様の色で染め替えてやる」
ムーン・サウンドとスターダスト。
離れた場所で戦う二人の魔王の運命が、今、賢者ミラの介入によって大きく動き出そうとしていた。




