闇の刺客
ムーン大陸に突如現れた闇柱 スターダストを囲む砂漠の地平に、不吉な黒紫色の光柱が立ち昇った。それは空を穿ち、雲をどす黒く染め上げていく。
その光景を、スターダストの城壁から見上げていた二人の影があった。
「サヤカ……感じたか?」
「はいっ、おば……いたっ!!」
サヤカが言いかけた瞬間、鋭いチョップが彼女の脳天に振り下ろされた。サヤカは両手で頭を押さえながら、涙目で悶える。
「師匠と呼びな。あたしはあんたに戦闘のイロハを叩き込んでやってる最中なんだからね」
「わ、わかったました…シェリー師匠! でもマジで痛いんですけど!」
そこには、ギャル化が解け、かつての凛々しさを取り戻した四天王・シェリーの姿があった。
しかし、彼女はムーン・サウンドに戻ることはなく、サヤカの奔放さとこの国の「伸び代」に興味を持ち、居座り続けていたのだ。
シェリーは、遠くに立ち昇る黒い柱を忌々しげに睨みつける。
「……こいつは、とんでもない数だねぇ。しかも、その全てが魔王クラスの化け物……。
そして…全員からは、純粋な悪意しか感じないよ」
「マジでヤバいオーラ……。映えとは真逆、漆黒の闇って感じ」
「こいつは誰かの悪意が、そのまま形になって現れたみたいだね……。
ミレニアムイヤーを前に、世界を壊しに来たってわけかい。迷惑な話だよ」
シェリーが冷静に推測を口にした、その時だった。
「……その通りだ。二人の強者よ。どちらが魔王だ……?」
重苦しい、地を這うような声が響くと同時に、城壁の上の影が揺らめいた。
不定形の「黒い悪意」が塊となって凝縮し、鎌のような鋭い腕を形作って二人に襲いかかる。
シュパッ!!
二人は呼吸を合わせたかのように、左右へ軽々と跳んでその攻撃を回避した。
サヤカは空中で一回転し、しなやかに着地する。
「あんた馬鹿なの? 目の前にいるあたしの魔力がわからないなんて、大したことないのね♪」
サヤカは着地すると同時に、フリルが何層にも重なった「マオロリ」のスカートの裾をクイッと直し、挑発的な笑みを浮かべた。
その瞳は、もはや道化師のそれではない。
「……あたしがスターダストの魔王。そしてこっちが、あたしの最強の師匠。
あんたみたいな『闇の体験版』みたいな奴に、この国を荒らさせるわけないじゃん」
「言うようになったじゃないか、サヤカ」
シェリーは魔槍を呼び出し、不敵に笑う。
「さあ、名乗りな。あんた、どこの通信講座の『落ちこぼれ』だい? あたしたちの貴重なティータイムを邪魔した代償は、高くつくよ!」
黒い塊は、サヤカから放たれる圧倒的な魔王の波動に触れ、わずかにたじろぐような仕草を見せた。
「魔王……サヤカ……。
殺すべきリストの一番上……。
闇の奥義に……沈め……」
「闇の奥義とか、マジで厨二病すぎて引くんですけどー! だったらあたしは、本物の『正拳突き』で、その悪意ごと消し飛ばしてあげる!」
サヤカの拳に、ピンクと黒の魔力が火花を散らして集束していく。
闇の魔王軍vsサヤカ&シェリー。
世界を破滅に導く十連召喚の第1陣が、ついに火蓋を切った




