まさかの!?決着!?
謁見の間の空気は、もはや物理的な質量を伴って二人を押し潰さんとしていた。
シェリーは迷いを捨て、本気モードの魔力解放を展開する。
その全身から立ち昇る紫のオーラは、城の天井を突き破らんばかりの巨大な炎となって燃え上がった。
「小賢しい小娘め……その生意気な顔ごと、消し飛ばしてあげるわ!」
「やってみなよ! 盛り盛りのあたしの魔力、あんたの三流オーラで耐えられるかな!?」
サヤカも負けじと、魔王の根源的な力を解き放つ。彼女の周囲に渦巻いたのは、漆黒の闇とショッキングピンクが混ざり合った、この世の常識を逸脱した不気味で派手なオーラだった。
両者のオーラが正面から激突した瞬間、城全体が巨大な地震に襲われたかのように激しく揺れた。
「死ねえええええっ!!」
シェリーの放つ魔槍の超高速連突き。それは一秒間に数百回という神速の領域だったが、サヤカはそれを、まるで飛んでくるハエでも払うかのように「デコピン」ですべて弾き飛ばした。
カカカカカカッ!!
金属音を立てて弾かれる魔槍。シェリーは驚愕に目を見開く。
「すべて……すべて、デコピンで捌くだと……!? ならば、これならどうよ!」
シェリーは懐に潜り込み、先ほどサヤカを吹き飛ばした「零距離爆破」を再び仕掛けようとした。
しかし、サヤカの動きはそれを読んでいた。
「それ、さっき学習したから。パクらせてもらうわ!」
サヤカは、シェリーが魔力を集中させるのと同時に、自身の左手に全魔力を凝縮させた。
力のコントロールが極めて難しいとされるこの技を、サヤカは「通信講座・魔力制御術」の記憶を頼りに、ぶっつけ本番で再現したのだ。
ドグォォォォォォォン!!
互いの左手から放たれた零距離爆破が、至近距離で正面衝突した。凄まじい光と衝撃が二人を飲み込む。
(なんて小娘だ……! 一回見ただけで、私の門外不出の奥義を……!?)
シェリーの脳裏に、初めて「敗北」の二文字がよぎった。このまま二人で技を放ち続ければ、力の均衡が崩れた瞬間に暴走した魔力が爆発し、この国はおろか、自分たち自身もただでは済まない。
シェリーはチラッとテミスを見る…
(……ええい、背に腹は代えられぬわ!)
シェリーは咄嗟に戦法を切り替えた。
彼女の特殊能力「魔力捕食」を発動し、正面から迫るサヤカの巨大な魔力を、自らの体内に無理やり吸い取ったのだ。
ズズズズズズ……ッ!!
サヤカの黒とピンクのオーラが、シェリーの掌へと吸い込まれていく。凄まじいエネルギーの奔流を飲み込み続け、シェリーの肌が限界まで発光する。
「……はぁっ、はぁっ……。吸い、取ったわ……。これで、あんたはもう……ただの……」
シェリーは、なんとか大惨事を免れたことに安堵し、膝をついた。
だが、異変はすぐに起きた。
「あれ……? ちょっ、なんか……気分が……アガる……?」
シェリーの瞳から、それまでの冷徹な殺気が消え、代わりにキラキラとした星のような輝きが宿り始めた。
彼女の紫の鎧は、サヤカの魔力に毒されたかのように、いつの間にか蛍光ピンクのフリルやリボンへと変質していく。
「……えっ。ちょっと待って、このドレス、マジで可愛くない? 超ウケるんだけど! てか、槍とか重いし、マジ無理ゲーだし!」
「……は?」
サヤカは呆然として、目の前の四天王を見つめた。
魔王の、それもサヤカという特異な個性の魔力を一気に吸収した結果、シェリーの精神構造は「ギャル」へと書き換えられてしまったのだ。
「テミスくーん! もう戦うのとかダルくない? 止めて止めーて! 今すぐ映えスポット探しに行こうよ! 陰陽師くんも、近くで見るとマジでイケメンじゃん、自撮りしよ自撮り!」
「シェ、シェリー様……!? 一体、何を……」
戦っていたテミスも、変わり果てた主人の姿に弓を落として硬直した。
サヤカは自分の魔導フォンを拾い上げると、呆れ顔で溜息をついた。
「……四天王の魔改造、完了。……これ、ムーン・サウンドに戻したら、ティン・ガロの顔、マジで見ものだろうなぁ」
サヤカはギャルの顔をで言った。
スターダストの独立劇は、最強の敵が「ギャル化」するという、世界で最も平和でカオスな結末を迎えようとしていた。




