陰陽師清兵衛vs射手テミス
「はいはい、ストップ! ショーの最中にマジな殺し合いとか、演出的に『萎え』なんですけど!」
「なっ……貴様、何者だ!?」
シェリーが鋭い声を上げるが、サヤカは無視して指をパチンと鳴らした。
その瞬間、清兵衛が命懸けで維持していた結界が、パリンとガラス細工のように砕け散った。
「な……バカな!? 私の結界を、一瞬で……ッ!?」
驚愕に目を見開く清兵衛。
だが、驚きはそれだけでは終わらない。砕け散った結界の破片が、サヤカの指先一つで再構成され、より強固な、より洗練された「最高級の結界」となって、玉座に座るクルシャア王ををはじめとした重臣たちを包み込んだのだ。
「……私の術式を上書きし、それを上乗せした上で、上位最高級の守護結界を築いたというのか……!? この道化師、一体何者だ……」
「何をよそ見している……!」
テミスの冷徹な声が響く。彼女が引き絞った巨大な弓から、極太の光の矢が放たれた。狙いは清兵衛の眉間。避ける暇もない至近距離からの射撃。
「……終わりだ」
そう確信したテミスの前で、道化師がひょいと手を伸ばした。
パチンッ!
「……え?」
テミスが呆然と声を漏らす。
清兵衛の眉間に突き刺さるはずだった光の矢は、サヤカの軽やかな「デコピン」一発で弾き飛ばされ、明後日の方向へと消え去った。
「あたしの……あたしの魂を削った光の矢を、デコピンで返すだと……!?」
テミスの美しい顔が屈辱と動揺に歪む。
「マジ、今の矢、光り方が三流。もっとこう、キラキラさせてくんないと映えないじゃん」
道化師のふざけた声が、静まり返った謁見の間に響く。
「……なめるなよ、小娘ぇぇぇ!!」
テミスは怒りに我を忘れ、巨大な弓を再び引き絞った。今度は一本ではない。
「射干玉の雨に沈め! 『光雨千本』!!」
解き放たれた光の矢が、天井を突き破り外界を照らす月光を浴びる。
月の光を浴びた矢の魔力は爆上がりし、大地を裂かんばかりに降り注ぐ。
それは文字通り、避けようのない「光の雨」となって清兵衛を襲う。
「クッ……道化師殿、ここは私に任せてください!」
清兵衛が叫び、数枚の形代を扇状に展開した。
「急々如律令! 式神・白虎! 咆哮せよ!!」
清兵衛の背後から現れた巨大な白き虎が、降り注ぐ光の矢を爪で叩き落とし、吠え声とともに衝撃波を放って相殺していく。
月明かりが差し込む謁見の間で、妖絶なスタイルを誇る射手テミスと、名門陰陽師の清兵衛が、火花を散らす激闘へと突入した。
「ふん、陰陽師の分際で、私の連射にどこまで耐えられるかしら?」
テミスは妖艶な笑みを浮かべ、月光を吸収してさらに輝きを増していく。
彼女の引き締まった腹筋と長い足が、しなやかな弓の一部のように躍動する。
「……侮るな。星屑の国の夜風は、意外と冷えるぞ」
清兵衛が印を結び、冷気とともに式神を操る。
道化師は、戦いの余波で飛ばされないようにお手玉をジャグリングしながら、屋根付近の梁に飛び乗って高みの見物を決める。
「いいよいいよー! 前座にしては超盛り上がってきたじゃん! ……さて、あっちの紫の偽物は、いつあたしが相手してあげよっかな?」
サヤカのピエロの仮面の裏で、魔王の瞳が妖しく光った。




