隠密
(でも、まてよ!?
魔王の一面が 全面に顔を出し、悪意事が頭を過ぎる。
(あの二人が何を企んでいるのか気になるところね。このあたしのサクセスストーリーの邪魔はさせないわ……。偽物が本物っぽく振る舞って、あたしが道化師扱い? 逆にこれ、潜入捜査っぽくてウケるんですけど!)
サヤカは内心でニヤリと笑うと、瞬時に「魔王」のオーラを消し、あざといまでの「旅芸人スマイル」を作った。
「えーっ! 本物の魔王様!? やだー、マジ尊い! 拝ませてもらっていいっすか!?」
わざとらしく声を上げると、偽物の「サヤカ」と「アルフレッド」が、傲慢な態度でこちらを見ると鼻で笑った。
「ふん、無知な旅芸人め。近くで拝むがいい、これが真の覇王の風格よ」
紫のドレスを着た偽サヤカが、ふんぞり返って言い放つ。
隣のハゲた巨漢アルフレッド(偽)も、鼻息荒くサヤカを睨みつけてきた。
その見た目は、もはや「アルフレッド」という名前に対する風評被害レベルだ。
ギース将軍は少し申し訳なさそうにサヤカの肩を叩く。
「すまないな、お嬢さん。やはり君は召喚者ではなかったようだ。……だが、これで我が国は救われる。
君も一晩ゆっくり休んで、明日には安全な場所へ行くといい」
「将軍、お気遣いあざーっす! あたし、どこでも寝れるタイプなんで、端っこに転がしておいてくださーい! マジ感謝っす!」
サヤカは深々と頭を下げながら、クルシャア王の様子を伺った。
少年王は、偽物のサヤカを見て「おお、これが魔王様……」と目を輝かせているが、その瞳にはどこか不安の色も混じっている。
(あんな派手なだけの偽物に、この純粋なショタ王様を騙させるわけにはいかないわ。あたしはあたしで、奴らの陰謀を暴く!)
サヤカは、この健気な王のためにと、建前の向上を並べ 、裏方に徹する「道化師」を演じることに決めた。
その夜。
スターダストの城の、埃っぽい客間(という名の物置に近い部屋)に押し込められたサヤカは、扉の隙間から外を伺っていた。
(さて、そろそろ奴らが動き出す頃かな……。名門国であたしが死んだことにされてる絶妙なタイミングで現れるなんて、偶然にしては出来すぎだし)
サヤカは足音を消し、マオロリのスカートを抑えながら、偽物たちが案内された豪華な客間(といっても、この国では精一杯の部屋)へと忍び寄った。
すると、中から低い話し声が聞こえてくる。
「…様、まずは上手く行きましたね」
(うん!?誰の声だ……)
「しかたあるまい…魔王がいなければ この国は滅ぶ 藁にもすがる思いなんでしょう」
「そうですね…ティン・ガロ様の言う通り、魔王と名乗りさえすれば、泣いて喜んでいました。」
聞こえてきたのは、あの巨漢アルフレッド(偽)とは違う 女性の声
「でも…様、 ティン・ガロ様は なぜ態々 こんな小国で魔王騒ぎを起こすのでしょうか」
「さあね…あの男の考える事は私にもわからんよ…」
「そうですね…あの御方の考える事 計り知れません……
用心に越したことはありませんわ……さま…」
(ティン・ガロ!? やっぱりあいつ、繋がってたわけ!? あたしを追い出しただけじゃ飽き足らず、この最下位の国まで完全に潰すつもりなの……!?)
「しかし、あの道化師の娘はどういたしますか? なぜかあの娘が現れた時に、召喚の予兆があったと大臣たちは騒いでいましたが……」
「ただの偶然よ。あんなペラペラの衣装を着た小娘、放っておけばいいわ。
明日には追い出すんでしょう?
なら、ほっとけばいいわ」
偽物たちが勝ち誇ったように笑う。
サヤカは壁に背を預け、魔導フォンをぎゅっと握りしめた。
「マジ、ムカつくんですけど。
あたしの名前使って魔王の振りまでするなんてギャルの名折れだし。
それに、あのティン・ガロ…
あいつマジでなんなの!?
あーーぁぁムカつく!!
あいつら、まとめてあたしの正拳突きの刑に処してやりたい気分……
でも、今は我慢・我慢…」
サヤカはアンガーマネジメントの資格を発動し 怒りをコントロールしおさえた。
「見てなさいよ。本物の『魔王盛り』の恐ろしさ、たっぷり教えてあげるから!」
闇の中で、サヤカの瞳が怪しく、そして不敵に輝いた。




