えっ!?待って、スターダストにもう一人の魔王が降臨!?
「ここが、私の国スターダスト(予定地)だ……」
男に案内された、そこは、ムーン・サウンドの華やかな城下町を知るサヤカからすれば、あまりにも静かで、あまりにものどかな場所だった。控えめに…
(……マジ? 超困窮してるじゃん。映えスポットどころか、街灯すらないんですけど……)
「驚いたかな。……不毛の地で、ただ星屑のように細々と光り続けるだけ。これがスターダストと呼ばれる由縁さ」
「ねえ、どうして……ここまで落ちぶれたの? 歴史とか名門とか、そういうのはなかったわけ?」
サヤカの問いに、男は遠い目をして答えた。
「今の王より数十代前の王が、隣国の術師に騙されたのだ。
『協力関係を築こう』という甘い言葉に乗せられ、男は頭を振り この国の人たちは、人柄が良すぎたのさ…
疑う事をしない 我々の祖先は 気づいた時には技術も、資源も、魔力の源泉さえもじわじわと侵食されていた。
全てを奪われたと気づいた時には、もう……手遅れだった」
重苦しい空気の中、一人の少年が、後ろに二人の大人を従えて走ってきた。
「それで……ギース将軍! 召喚者は……『魔王』はいたのか!?」
(ギース…将軍……えっ!?
私…この人の事…ただの変態オッサンかと…思っていた…)
少年はギースの服の裾を掴み、必死に揺らす。その瞳には、消え入りそうな希望の火が灯っていた。
「それが……王よ……」
ギースが言い淀む。
だが、少年——クルシャア王は、ギースの隣に立つサヤカを見て、その瞳を輝かせた。
「そうか! この……変わった、見たこともない服を着た、この者が、我が国を救う召喚者か!」
少年王はサヤカの前に跪くと、彼女のデコられ手を、両手でぎゅっと包み込んだ。
「どうか……我が国を救ってください……。お願いします……!」
涙ながらの懇願。
サヤカは「マオロリ」の衣装を揺らし、言葉に詰まる。
「クルシャア王様……」
ギース将軍は力なく首を横に振り、王の傍らに膝をついた。後ろに控えていた従者たちも、絶望したように天を仰ぐ。
「……そんなはずはないではないか! あれは確かに、大掛かりな召喚の予兆現象であったはずだ! しかも、あの魔力の規模からすれば『魔王級』の……!」
従者の一人、ムノン大臣と目される年長者が、ギースに詰め寄った。
「ならば、ギース将軍! この者は誰だというのだ!」
「……おそらく、旅芸人か何かの道化師でしょう。この格好を見ればわかります。砂漠の嵐に巻き込まれ、遭難していたところを私が保護しただけです」
(えっ……このオッサン、あたしのこと道化師だと思ってるわけ? 超ウケるんですけど! 令和のギャル魔王捕まえてピエロ扱いとか、マジ草!)
心の中で爆笑するサヤカだったが、クルシャア王の落胆は激しかった。
「……道化師と、召喚者様を、間違えたのか……」
「申し訳ございません。彼女は今晩だけ城に泊め、明日には国境にお送りします」
「そうですか……」
王はサヤカの手を、まるで宝物を手放すかのように名残惜しそうに離した。
(あーあ……。あたし、本物の魔王なんだけどな。でも、ここで自分から『あたし、魔王っす!』って言うのも、なんか空気読めてない感じ?)
サヤカがどう切り出そうか迷っていた、その時だった。
「ムノン大臣! ムノン大臣ーーーーーーーーー!!」
城壁の向こうから、一人の兵士が叫びながら走ってきた。
「見つかりました……! 召喚者、そして本物の魔王様です!」
(……なぬっ!?)
この場にいる誰よりも、サヤカが一番驚いた。
「あのお方こそが、召喚者アルフレッド様と、魔王サヤカ様です!」
兵士が指し示した先。
月明かりに照らされながら、堂々と歩いてくる二人の影があった。
一人は、禿げ上がった頭にゴツゴツとした筋肉の鎧を纏った、威圧感の塊のような巨漢。
そしてもう一人は——。
「私が、魔王サヤカよ。この国、スターダストを統べるために、地獄の底から這い上がってきたわ」
ド派手な紫のドレスに身を包み、高飛車な笑みを浮かべた「自称」魔王サヤカ。
(ええええええええ!? ちょっと待って! 偽物!? 偽物が出たーーー!? しかも名前までパクってるし! 誰よあのアルフレッド! あたしの知ってるイケメンのアルくんと1ミリも似てないんですけど!)
サヤカは目を皿のようにして、自分と正反対の「派手で強そうな魔王」を見つめた。
本物の魔王を道化師と勘違いし、偽物の魔王を本物として迎え入れようとするスターダスト。
「おお……! あれこそが我が国の救世主!」
ムノン大臣たちが歓喜の声を上げる。
サヤカは、自分の胸元の『魔導フォン』を握りしめた。
(マジ……? これ、あたしが本物だって証明しないと、この国、あの詐欺師軍団に全部持っていかれるやつじゃん!)
サヤカは スターダストを守るため…
(嘘 )本当は自分の立身場所を確保する為に、偽者たちと 戦う事を誓った。




