表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/51

圏外!砂漠!

「自由だーーー!!」

なんて叫んでみたのは、ほんの数時間前のこと。

サヤカは広大な砂漠のど真ん中で、手元の魔導フォンを掲げながら、絶望的な声を上げた。


「……はぁ!? マジでありえないんですけど! 圏外って何? 圏外って!」


魔導フォンのクリスタル画面には、無情にも「圏外」の二文字が表示されている。


「おい、届かないってどんだけ遠いんだよ……。これじゃ魔導マップも使えないし、インスタ的なやつにアップもできないんですけど!

コニチ、早くアップデートしてくんないと退屈で死んじゃうよーーーー!」


どこまでも続く砂の海は サヤカの声もかき消した。

見渡す限り、映えそうなスポットはゼロ。

「マジ……ここどこ……!? もう歩くのダル。あたり砂だけで、何にもないんですけど……」

最初は解放感に浸っていたサヤカだったが、数十キロも歩けば足元は砂まみれ、ツインテールには砂塵が混じり、テンションは地の底まで叩きつけられていた。


「亜美ちゃんの特大パフェ食べたい……。もう、誰か…デリバリーしてくんないかなぁ……」


独り言も限界に達した頃、ようやく一本の古びた看板を見つけた。


『スター・ダストまで 残り123キロ』


「…………百、二十、三? 無理ゲーなんですけど。

日没までにスター・ダストに着きたいなー……なんて、やっぱり無理だったか……」

サヤカは力なく肩を落とした。

やがて、太陽が地平線の向こうへと沈んでいく。

砂漠の夜は、容赦なくその牙を剥いた。


「しょうがない。今夜はここで野宿か……。マジ、人生初のキャンプが砂漠でソロとか、笑えないわ」

日が傾くと、気温はぐーーんと下がり、凍えるような寒さが襲いかかる。

だが、サヤカが身震いした瞬間、彼女に宿る「魔王の能力」が自動的に発動した。

サヤカの周囲だけ、まるで透明なドームに包まれたかのように、快適な温度へと調整されていく。


「あー……。あったか。魔王の資格、こういうとこだけは超便利……」

けれど、体温は保てても、心の寒さまではどうにもならない。

漆黒の闇の中、何もない砂漠でポツンと一人。


「……寂しい。寂しすぎるんですけど……」

サヤカは膝を抱え、小さく丸まった。

バルおじいに無理難題を言って困らせたこと。亜美ちゃんとパフェを囲んで笑ったこと。勇者アランをからかって遊んだこと。


「……みんな、何してるかなぁ。バルおじい、城のペンキ塗り終わったかな……」

頬を伝う涙が、砂の中に吸い込まれていく。

見た目は魔王でも サヤカの中身は人間の女性

資格マニアとして常に上を目指してきたサヤカだったが、今はただ、誰かの声が聞きたかった。

サヤカはそのまま、寂しさと疲れに押し潰されるように、深い眠りに落ちていった。


「おい……起きろ。おい、聞こえるか……」

耳元で、誰かの低い声がする。

サヤカは夢の中にいた。

そこには、亜美が微笑みながら運んでくる、輝くようなパフェがあった。

「んむぅ……。亜美ちゃんの作った特大盛り盛りパフェを食べたあとの……

レンジで簡単チョコ餅は……もう食べられないよぉ……」

サヤカは幸せそうな、それでいて少し苦しそうな顔で、ヨダレを垂らしながら寝言をこぼした。


「こいつ……。死にかけているのかと思えば、何を言っているんだ……」

声の主は、呆れたようにため息をついた。

「それに、こんなに寒い夜だというのに、よくこんな……布面積の少ない服装で。正気か?」

男はサヤカの横に膝をつき、彼女の顔を覗き込んだ。

「……とにかく、ここは危険だ。もう時期嵐が来る…その前に安全な場所へ行かなくては…」

男はサヤカの細い体に手をかけ、ひょいと抱え上げた。


「……重い。この、胸の重力はどうなっているんだ? 呪いか?」

サヤカは、そんな男の困惑など知る由もなく、ガッチリとした腕の中で「チョコ餅……マシマシで……」と呟きながら、爆睡を続けていた。

サヤカを抱えた謎の人物は、月明かりの下、砂丘の向こうへと歩き出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ