ギャル魔王爆誕
「ちょ、ちょっと待って! タイム、タイムだってば!」
私は思わず、目の前で跪くコスプレ軍団(?)に向かって両手をバツ印に突き出した。
「なんなのこれ!? 拉致られたと思ったら、今度は集団コスプレイヤーに囲まれ、しかも魔王様とか……マジ意味不なんですけど!」
すると、一番前で跪いていた、いかにも「側近です」みたいな顔をした渋いおじ様が、顔を上げて恭しく言った。
「……魔王様? いかがなされましたか。その、以前よりも随分と……『盛られた』お姿になられて。その黄金に輝く二つの尾と、指先の宝飾、実に見事でございます」
「盛られたとか言わないで! あたしだって好きでこんなトラ柄着てるわけじゃないし!」
私は自分の胸元を隠そうとしたけれど、あまりのボリュームに手が滑る。
……重い。肩凝る。これ絶対、通信講座の「ダイナマイト盛り」のせいでしょ。
(マジか……。あの『異世界職業通信講座』、本当に実在してたわけ?)
脳裏に浮かぶのは、深夜のテンションでポチったスマホの画面。
【最短3ヶ月で君も支配者に! 魔王資格取得コース(※ギャル盛りオプション付き)】
「嘘でしょ……あたし、資格マニアとして『持っておいて損はないかな』って、漢検レベルのノリで取っただけなのに……」
「魔王様、お疲れのようですな。
で・す・が・
さあ、こちらへ。世界を恐怖に陥れる作戦会議の準備は整っております」
おじいは 険しい表情を浮かべながら言う。
「いや、無理無理! 作戦会議とかマジ勘弁! あたし、明日バイトあるし! そもそもこの爪じゃ、キーボードも打てないんですけど!」
私は必死に訴えるが、周りの魔物(?)たちは
「おお、これぞ魔王様の新たなる咆哮!」と、なぜか勝手に感動して涙を流している。
「詰んだ……完全に詰んだ。これ、履歴書に『前職:ギャル魔王』って書かなきゃいけないやつじゃん。
……っていうか、誰か服持ってきて! 布面が多いやつ! 切実にお願い!」
サヤカ——改め、ギャル魔王サヤカの、望まない異世界生活が爆誕した瞬間だった。




