ハーレム男の無料タクシー役なんてお断りだよ!
精霊だけが住む精霊界。
その世界の中心であり、全ての精霊の力の源であるマナの泉。
その畔で友達と一緒に花の朝露を集めている時だった。
「人の世界で魔王が復活したらしいよ」
「へぇ~……うぎゃあ!?」
足を滑らせた挙句バシャンと大きな音を立てて泉に落ちたぼくの脳内に、沢山の記憶が流れ込んできた。
「マイカ、大丈夫?」
「う、うん……」
友達の手を借りて泉から這い出ると、水面が落ち着いた頃に泉を覗き込む。
「まじかぁ……」
「何が?」
「ううん、なんでも無いよ。アハハハ……」
ぼく、マイカ・ハイヤーは、マナの泉に落ちた事で前世を思い出してしまったらしい。
「まさか、ぼくに前世があったなんてね」
友達と別れたあと、改めて水面を覗き込む。水鏡に映し出されている顔は、10歳程の人間の子供の物に見えた。その綺麗な顔を見て眉をひそめる。
ぼくの前世は、こことは全く違う世界。人間しか居ない世界だった。
どういう仕組みなのか、水鏡に映るぼくは前世のぼくが遊んでいた『ディア・ストーリー』というRPGゲームに出てくる『マイカ・ハイヤー』というキャラクターにそっくりだった。
『ディア・ストーリー』は主人公が男女の双子で、プレーヤーがどちらかを選択する事で物語が始まる。
封印されていた魔王が復活してしまったので、仲間と共に魔王を打ち倒すという王道ストーリーだ。
各地を巡って集められる仲間キャラクターは全部で11人。ただし、一度のプレイで仲間に出来るのは最大で9人。
戦闘に参加出来るのは4人までだから、残りの仲間は旅の途中で手に入れる城(廃墟になっていた城に巣食っていた魔物を倒してちゃっかり手に入れる)で待機する事になる。
分岐が多い事が売りのゲームで、男主人公を選ぶと女の仲間と、女主人公を選ぶと男の仲間と軽い恋愛イベントを見る事が出来て、好感度によってエンディングも多少変化する。
余っ程のコアなファンでなければ、全てのエンディングを見る事は出来ないだろう。 前世のぼくは2周で飽きてた。
で、ゲームの中のぼくの役どころは主人公の仲間の1人。精霊族の長の子『マイカ・ハイヤー』だ。妖精族の寿命は1000年で、200歳位までは10年で人間でいう1つ歳を取る感じ。しかも自分で決めるまで性別が無いから、もう直ぐ100歳のぼくは10歳位の中性的な人間の子供の姿をしている。
ゲーム中盤で仲間に出来るショタっ子(ロリっ子?)マイカは、兎に角弱い。精霊族はそもそも闘いに向かないのだ。力は弱いし、攻撃系の魔法も得意じゃない。
ゲームのマイカは、契約した精霊獣を操り敵を攻撃する召喚士のような事をしていた。
しかし、その為には世界中を巡って精霊獣を集めないといけないし、集めても精霊獣のパワーアップイベントをこなさないといけないし、精霊獣を最強にしてもマイカのMPが低くて連発出来ないし、という不遇キャラ。
しかしどの攻略サイトを見ても、マイカは出来るだけ早く仲間にするべきだと勧めていた。
その理由は、マイカの精霊獣『シルフィ』だ。
シルフィは風の精霊獣で、背中に4人まで乗せて飛ぶ事が出来る。要するに、便利な移動手段である。
プレイヤーの殆どは、マイカからシルフィを呼び出せる笛を受け取ると、そのままマイカを拠点に押し込めてエンディングまで見向きもしない。
ネット上ではマイカの事を
「個人タクシー」
「ライドシェア」(この2つは名前がマイカー、ハイヤーだから)
「白タク」(シルフィが白いから)
「ロリショタクシー」
「ショタロリタクシー」(この2つは論争が起きていた)
などなど好き放題呼ばれていた。
マイカのイベントを進めるとマイカが大人の姿になる。その姿が妙に色っぽいので
「エロタクシー」
とも呼ばれていたったけか。
本人であるぼくから言わせてもらうと、最後の呼び名は論外として、まずタクシー呼ばわりが頂けない。
これでもぼくは精霊王の子供だ。人間なんかが便利に使えると思ってくれちゃ困る。
ゲームのマイカが主人公に着いて行ったのは、どうしようも無い理由があったからだ。
そうだ。現実がゲーム通りになるとは限らないけれど、その理由潰しておこうっと。
「母様、人の世界で魔王が復活したんだって」
今日も花畑で呑気に昼寝をしている精霊王は、ぼくの声にうっすらと目を開けた。
「……別に、良いんじゃ……ない……?」
「まって母様、寝ないで」
「ん~……? 人の世界でしょう? 私たちに関係無いじゃない」
精霊界と他の世界を自由に行き来できるのは精霊だけだ。強大な力を持つ魔王ですら、精霊界に勝手に入る事なんて出来やしない。
精霊にとって人の世界は遊びに行ける異世界のようなもので、何が起きようと基本興味は無い。遊び場なら他にもあるしね。
ゲームのぼくたちも、だからこそ魔王が精霊界を滅ぼすまで静観していたのだろう。
「母様、ぼくの父様にベルを渡したままでしょう?」
「ベル……? んー……あぁ、ベルね。確かに渡したわね」
ぼくの父様は人の世界の人間だ。
母様が人の世界に遊びに行った時に出会った小さな村に住む男で、気に入って数年間一緒に暮らして居たらしい。子供を身ごもった母様が里帰り出産をしたのだけれど、「何時でも妻子に会えるように」と精霊界に来る事が出来るアイテム『精霊王のベル』を父様に渡したのだった。
しかし母様が去った父様は速攻で人間の娘と浮気。それを知った母様が「次に顔を見たら殺してやる」と脅したため、ベルは一度も使われる事無く100年が経過している。
魔王はそのベルを使って精霊界に入り込むんだよね。先に回収しておかないと。
「ぼくが返して貰ってくるね」
「マイカ1人で? 大丈夫?」
「ぼくだってもう直ぐ100歳なんだよ? 人の世界に行くぐらい大丈夫だよ」
「せめてシルフィを連れて行きなさい」
「はーい」
シルフィに乗っていけば、目的地であるハイヤー家の屋敷には直ぐに到着した。
そう、ぼくの父様の子孫は随分と出世しているんだ。
「こんにちは。ベルを返却してくださーい」
ダイナミックに2階の窓から当主のお部屋におじゃまします。
父様の子孫らしいおじさんが、ぼくに驚いて目を丸くしていた。
「だ、誰だ!」
「ぼくは精霊王の子供。ベルを返して。それだけ言えば分かるよね?」
じっと目を見つめれば、おじさんは溜息をついて首を横に振った。
「我が家に代々伝わる『精霊王のベル』の事か? あれは我が家の家宝……いや、この国にとっても貴重な物だ。例えあなたが精霊王の子でも、おいそれと渡す訳には……」
まぁそうだろうね。
精霊は人族からすれば神のような存在だ。
父様の子孫がこんな大きな屋敷に住めるようになったのだって、精霊との繋がりがあるからだ。母様には嫌われてるから、実際は繋がりなんてないんだけど。
「ぼくは『返して』って言ってるんだよ。あのベルはそもそもキミのお爺さん……曾お祖父さんかな? に母様が『貸した』物だ。本来ならキミの曾お祖父さんが浮気をした時に返して貰うべきだったんだよ。今まで放置してたのは、単に母様が忘れてたから。キミ達が持っていて良い物じゃ無い」
「う、浮気……?」
「伝承、伝わって無いの?」
ゲームではどう説明されてたかな。覚えてないや。
「まぁいいや」
パフォーマンスで指をパチンと鳴らすと、小さなベルがぼくの手の中に現れた。
小さな精霊に頼んで隠し場所から持ってきて貰ったんだけど、この方が大物感があるでしょ。
「確かに返して貰ったよ」
それじゃね、と窓からぴょんっと飛び降りる。待機していたシルフィの背中に着地すると、そのまま精霊界に帰った。
「そろそろかな」
ベルを回収してから数ヶ月。
用意しておいたアイテムを持って、再び人の世界に向かう。もちろんシルフィも一緒だ。
今度の目的地はハイヤー家から近い場所にある森だ。
その森の奥の奥、一番大きな木の上に降り立つと、丁度いい枝に座って彼らを待つ。
それからたったの数日後、彼らはぼくの居る木の下にやってきた。
「『私は貴方に会えた幸運を忘れない。共に過ごす奇跡を永遠に願おう』」
人間の男が、木に向かって愛の告白をしている。
まぁ、あれが『精霊王のベル』を使う為の呪文なんだけどね。父様が母様にプロポーズした時の誓いの言葉らしいよ。
『精霊王のベル』は精霊界に置いてきたから、ただ呪文を唱えたって当然何も起こらない。
繰り返し呪文を唱える人間たちを観察する。
人数は4人。人間が男女1人づつ、ドワーフの女が1人、エルフの女が1人。
全員の容姿には見覚えが有る。というか、間違いなく主人公パーティーだ。
呪文を唱えているのが人間の男だから、男主人公なのかな。
人間の女は主人公の双子の妹。
エルフとドワーフは男女どちらかしか仲間に出来ないけれど、両方女を選んだらしい。仲間キャラとして優秀なのはエルフもドワーフも男キャラの方だから、腐れハーレム野郎だな。
ストンと下の方の枝に飛び移ると、人間達に話しかける。
「精霊界に何か用?」
ぼくに気づいた主人公が、ぼくを見て目を丸くした。
「なんでエロタクがここに……」
小さく呟いたつもりだろうけど、ぼくの耳にはしっかりと届いていた。
アイツも転生者か。しかも、ぼくを最悪な呼び名で呼ぶタイプの。
この時点で主人公に手助けをする気は無くなった。タクシーになるつもりは無いけど、最低限シルフィが居ないとこなせないイベントを手伝ってあげようかなって気持ちはあったんだよ。
「用が無いならぼくは帰るね」
「ま、待ってくれ!」
主人公の叫びに、少しだけ待ってあげる。
「俺の仲間になってくれないか?」
お断りだよ。と声に出す前に、エルフの女が叫んだ。
「何言ってるのよ! ち、違います。私達は精霊様に『聖花の朝露』を譲って頂きたく、こちらに参りました」
「あんたこそ何言ってんのよバカエルフ。アレが精霊なら、仲間にしちゃえば済む話じゃない。アタシだって精霊石欲しいし。トールの言う通り仲間にしちゃおうよ」
エルフをバカにするようにして話すのはドワーフ。
「そうね。私もトールに賛成。精霊族が仲間になれば、国からの支援も受けやすくなるだろうしね」
自分の都合しか考えてないのは人間の女。
あれ、それは全員か。
トールって、男主人公のデフォルトネームだったかな。
ドワーフの女と人間の女は主人公寄りの意見らしい。辛うじてまとも寄りなのはエルフだけか。
「お断りだよ。キミ達の仲間になる理由が無い」
「精霊様、同行者が失礼な事を言って申し訳御座いません。しかし……お願いです。どうか『聖花の朝露』をお譲り頂けないでしょうか。私の兄が呪いを受けて石になってしまったのです」
「そ、そうだ、俺たちを精霊界に入れてくれないか。『聖花の朝露』を取らせてくれよ」
「お願いだからトールは黙ってて!」
「はい、『聖花の朝露』」
『聖花の朝露』の入った瓶をエルフに向かって投げ落とす。
エルフは風の魔法でゆっくりと落ちていく瓶を掌で受け取ると、大事そうに胸に抱きしめた。
「精霊様、本当に有難うございます。対価は……」
「要らないよ。お兄さん治ると良いね」
それ、『聖花の朝露』なんて大層な名前をつけてるけど、マナの泉の周りに咲いている花の朝露だ。ぼくが遊びがてら採った物だから、ただであげちゃう。
涙を流して祈り始めたエルフに比べて、主人公は全く嬉しそうじゃ無い。
「なぁ、せめて精霊界の見学をさせてくれよ。少しだけで良いんだって。ちょっとだけ、精霊界に続く扉を開けてくれればさぁ」
しつこく言い募る主人公を見て、溜め息が漏れる。
「キミ、そんなに精霊界を滅ぼしたいの?」
「はぁ?! なんでそれを……い、いや、違うんだ。俺はただ精霊界が見てみたくてさ」
「今更下手な言い訳されてもなぁ」
トンっと木から飛び降りると、人間の女――主人公の双子の妹の胸に手を当てる。
「何を……」
「こんなモノ、精霊界に入れるわけないだろ」
一気に力を放出して、人間の女の身体に流し込む。
今のぼくの力であれば、人間の中に巣食った異物なんか簡単に追い出すことが出来る。それも、復活したばかりで力を取り戻し切れていない魔王なんてね。
ドサリと音を立てて人間の女が倒れると、その体から滲み出るように黒い霧が広がり、小さく纏まったまま空高く飛んで行ってしまった。
やっぱりトドメは刺せないか。魔王を滅ぼすには聖剣が必要だからね。仕方ない。
「なんで……エロタクがこんなに強いはず……」
思わず出そうになる舌打ちをすんででこらえる。
ゲームのマイカが弱かったのは、精霊界――その力の源であるマナの泉が枯れ果てていたからだ。
そして、その原因は主人公の妹(ゲームで女主人公を選ぶと主人公の兄)の中に隠れている魔王の仕業。精霊王のベルを使って精霊界に入り込んだ魔王が、泉を汚し枯らしたからなんだ。
転生者である主人公が『精霊界に入れろ』って言うのはさ、要するに『精霊界を滅ぼさせろ』って言ってるのと同じって事。
解っててやってるんだから、もはや魔王の仲間だよね。
「もう精霊界に用は無いでしょ? 帰りなよ」
「ま、魔王はどうするんだよ!」
「えー。ぼくが居なくても何とかなるでしょ?」
実際、主人公兄妹2人旅でクリアするってエンディングもあったぐらいだ。ぼくの加入は必須じゃない。
「……せめてエルフの森まで俺たちを連れていけよ」
「え、やだよ?」
まだぼくをタクシー扱いするのか。
ブレないクズだな。いっそ清々しい。
「世界樹が枯れそうなんだよ。助けに行かないとだろ。世界樹は精霊にとっても大切な木じゃないのか」
確かに世界樹は大切な木だ。あの木があるから精霊がこの人の世界に住んでいられると言ってもいい。
けどさ、なんでその木が枯れそうになっているのかって話だよ。
「それだってキミのせいだろ?」
「はぁ!? なんで俺達のせいなんだよ!?」
「キミ達じゃなくて、キミだよ。世界樹の枝が欲しいからって、枝を勝手に折ったのはキミじゃないか。その傷口から魔物が入り込んで、木の内部から枯らしてるんだよ。キミ以外の誰が悪いの?」
寄りにもよって、一番古くて一番大事な枝を折ったんだ。
その枝を指定したのは主人公の妹に憑依した魔王だけどさ、実行したのは主人公。
それなのに『助けないと』って、マッチポンプにも程がある。
そう言えば魔王が復活したのだって、『決して近付いてはいけない』と言われていた祠に入り込んだ主人公達が、言いつけを破って祠の中に入り込み、魔王の封印を破いたからだったっけ。
物語そのものが盛大なマッチポンプじゃないか。
「あー、もう。わかったよ」
「仲間になってくれるのか!?」
「キミの代わりにぼくが人の世界を救ってあげる。エルフのお姉さん、乗って」
「え、俺達は?」
あほ面の主人公、気絶してる主人公の妹、途中から完全に空気になってたドワーフの女は知らない。徒歩で来たんだから徒歩で帰れ。
エルフの里でエルフの男の呪いを解いて、ぼくとエルフの兄妹3人で世界樹に巣食っている魔物を倒す。
それからドワーフの里に行き、主人公が仲間にしなかったドワーフの男に精霊石と世界樹の枝を渡して剣を作って貰う。
出来上がった剣にぼくがこれでもかと祝福を掛れば『聖剣』の出来上がり。
聖剣さえあれば、あとは簡単だ。
エルフの男に聖剣を持たせて、主人公が封印を解いた祠に隠れている魔王と戦わせれば、あっという間に魔王は消滅してしまった。
こうして人の世界は救われて、ぼくは精霊界に帰る……はずだったんだけどなぁ。
「これ、どうしたら良いんだろう」
シルフィに乗ってやってきたのは、ボロボロの廃城『ルミナス城』。
ゲームの中で主人公が手に入れるお城で、実際つい最近まで主人公達が根城にしていた物件だ。
ぼくたちが魔王を倒した事で人間の世界は救われた。
めでたしめでたし――で終わらなかったのが、主人公の自作自演に巻き込まれた被害者たちだ。
村を半壊され、世界樹を枯らされる寸前だったエルフを筆頭に、様々な町や村から国に陳述書が提出された。
その結果、主人公とその仲間(女ばかり10人。ゲームより増えてるよ)は全員捉えられ、財産没収の上で各地への賠償の為に無償で労働をさせられているらしい。
ま、魔王にいいように操られていただけだから、それ程悪い待遇じゃないんじゃないかな。奴隷に落とされた訳じゃないし、復興が終われば全員実家に帰れる、はず。
そんな訳で、賠償の一部として主人公から取り上げたのがこの『ルミナス城』。どこの国にも所属していない辺鄙な場所にあるコレの扱いに、各国の王も困ってしまった。
主人公から取り上げた以上、誰かが管理しないといけないよな。放置してまた犯罪者の根城にでもされれば、国への非難は不可避だ。だが取り壊すにも修繕するにも面倒でお金も時間も掛かる……そうだ、精霊にあげちゃおうぜ!
誰が言い出したのかは知らないけれど、その案はあっさり通って、今現在『ルミナス城』はぼくの物って事になっている。
何度も断ったのにさ。
「ほんと。これ、どうしたら良いんだろう……」
何度みてもボロボロな城に、何度目かの溜息が出た。
「大丈夫ですよ、マイカ様。東の町に、腕の良い大工が居るんですって」
とエルフの女――リーフが言う。
「大丈夫ですよ、マイカ様。西の町に、腕の良い庭師が居るんです」
とエルフの男――フォリッジが言う。
「城の周りに城下町も作りましょうよ。沢山の人が訪れる大きな町です。マイカ様は王様として、皆を導いてください!」
もちろん王妃は私で、とリーフは続けた。
「城の周りは豊かな森のままにしましょう。精霊が過ごしやすい森や湖を作るんです。マイカ様は女王として、人属と精霊を導いてください」
もちろん王配は俺で、とフォリッジは続けた。
「「マイカ様はどちらに行きますか!?」」
睨み合う2人の間には火花が散っている。
この兄妹、本当に仲が良いなぁ。
このエルフの兄妹は、どうやら2人共ぼくを伴侶にしたいらしい。
精霊族の寿命とエルフの寿命はだいたい同じ位で、フォリッジの年齢が150歳、リーフが120歳くらいだ。おまけに、エルフ族って一途というか、人間と違って浮気をしないんだよね。
寿命的にも年齢的にも性格的にも、ぼくの伴侶としては問題無い。
だから2人のどちらかを伴侶に選んでも良いんだけど……。
シルフィに合図をすると、ぼくとエルフの兄妹を載せたシルフィが北に向かって飛び立った。
「悪いけど、まだ選べないよ」
だってぼくはまだ100歳。結婚なんて、あと80年は先の話だ。
まだ恋も知らない、性別のないぼくに選ぶ事は出来ない。
「取り敢えず、城の修繕の為にドワーフを連れてこよう」
聖剣を作ってくれたドワーフなら、腕も確かだ。
あのドワーフに頼んで城を修復しよう。
その後の事を決めるのは、その後でいい。
でもさ。
「いつかぼくは選ぶよ。そうなったら、もう1人はちゃんと諦めてね?」
だってぼくは、タクシーもハーレムも嫌いなんだからさ。




