第6話 ☔️雨の日ふたりきり編:「濡れた制服と、胸の音」
(放課後・外は土砂降り)
こなみ「……傘、ないし。」
(校舎の玄関で雨を見上げながら立ち尽くす)
こなみ「今日に限って……うちのアホ……」
(そこへ後ろから、わかざいる登場)
わかざいる「お前もかよ。傘忘れ組?」
こなみ「なんや、同志か」
わかざいる「しゃーねぇな、教室戻って雨弱まるまで時間つぶすか」
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(ふたり、教室に戻る)
(教室に誰もいない。外はザーザーと雨)
こなみ「……静かやな」
わかざいる「雨の日の教室、嫌いじゃない」
こなみ「……あんた、そういうとこあるよな。たまに詩人ぶる」
わかざいる「お前がうるさいから、静かなときがありがたく感じるだけだろ」
こなみ「おい、地味に失礼やな」
(ふたり、笑いあう)
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(こなみの制服の袖から、水がぽたぽた)
わかざいる「お前、びしょ濡れやん。ほら、これ着とけ」
(自分のカーディガンを、ぽんっと渡す)
こなみ「えっ……」
わかざいる「遠慮すんな。風邪ひくとめんどくさいタイプやろ、お前」
こなみ「……ありがと」
(カーディガンを羽織るこなみ。ぶかぶかで袖が余る)
こなみ「……なんか、借り物感すごいな」
わかざいる「まぁ実際借り物やけどな」
こなみ「うっさい」
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(ふたり、窓際に座って雨を眺める)
こなみ「こういう時間、嫌いじゃない」
わかざいる「へぇ、意外」
こなみ「雨ってさ、なんか……気持ちが落ち着くやん。ちょっとだけ、素直になれるというか」
(こなみ、カーディガンの袖をぎゅっと握る)
こなみ「……今日、あんたが一緒でよかった」
わかざいる「……」
(少しだけ、顔をそらして)
わかざいる「……お前、びっくりするくらい素直だな、雨の日だけ」
こなみ「今のは褒めていいとこやぞ?」
わかざいる「……褒めてるよ。たぶん」
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(ナレーション)
「濡れた制服と、ぽたぽた落ちる雨の音。
静かな放課後の教室で――
ふたりの距離は、また少しだけ、静かに近づいた。」