第5話 体育祭編:「勝ちたい理由、できちゃった」
(体育祭前・競技決めのHR)
先生「リレーはクラス選抜ねー!男子代表は…わかざいる。女子は……こなみ!」
クラス「うぉおお!ガチメンバーきたー!」
こなみ「……え、わかざいるとペアってこと!?」
わかざいる「なんだその嫌そうな顔。こっちが言いたいわ」
こなみ「うちは全力で勝ちにいくからな!?足引っ張ったら許さんで!!」
わかざいる「おうおう、言ってろ。こっちも全力や」
(バチバチに火花)
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(体育祭当日・リレー直前)
こなみ「……なあ」
わかざいる「ん?」
こなみ「バトン、絶対落とさんといてな。うち、信じて走るから」
わかざいる「おいおい…そんなん言われたら緊張するじゃんか」
こなみ「……ええから。今日だけは、うち“あんたのこと”信じてるから」
(ちょっと照れながらも、目を合わせる)
わかざいる「……了解。ぜってぇ勝つぞ」
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(リレー開始・グラウンドに歓声が響く)
実況「アンカーのこなみ選手!続いて男子最後、わかざいる選手が追う!!」
こなみ「(走りながら)っし、いくで……!」
(バトンパス・手が重なる)
わかざいる「ナイス!」
こなみ「任せたでっ!」
(わかざいる、全力ダッシュ)
こなみ(心の声)
「勝ちたい……この人と、勝ちたいって思ってる自分が、なんか悔しいけど――でも」
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(ゴール・結果発表)
先生「クラス対抗リレー、優勝は――3年B組!!」
(わかざいる&こなみ、手を上げてハイタッチ)
こなみ「っしゃーー!!やったーー!!」
わかざいる「……まじで、おまえ速すぎ」
こなみ「ふふん、言うたやろ。信じとけって」
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(競技のあと・ふたりで休憩中)
こなみ「なんか、ちょっとだけ……ほんまに、ちょっとだけ」
わかざいる「ん?」
こなみ「一緒に走れて、楽しかった」
わかざいる「……お前、今まででいちばん素直じゃん」
こなみ「うるさいわ!!もう言わん!!」
(逃げるように立ち上がる)
わかざいる「……でも、オレも楽しかったよ。マジで」
(こなみ、背中向けたままピタッと止まる)
こなみ「……っ、ずるいって。そーいうとこが」
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(ナレーション)
「誰かと走るのが、
こんなに心強いって思える日がくるなんて――
ふたりとも、きっと知らなかった。」