第11話 卒業式編:「お前がおって、ほんまによかった」
(卒業式・教室)
クラスメイト「写真とろー!」「寄せ書き書いてー!」
(こなみ、ちょっとだけその輪から外れて、窓の外を見つめている)
こなみ(心の声)
「なんやろ……この日がくるって、ずっと分かってたのに。
最後って、やっぱりちょっと寂しいな……」
(スカートのポケットに、小さく折りたたんだ手紙が入っている)
こなみ(心の声)
「……結局、渡せへんかったな。
“好き”って、最後まで言えんまま……」
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(廊下の向こうから、足音)
わかざいる「……ここおったんか」
こなみ「……あんたこそ。みんな写真とかとってんちゃうの」
わかざいる「お前の写真が、まだないから来たんや」
こなみ「……そんなん、最後の最後に何言うてんの」
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(少し沈黙)
わかざいる「なあ」
こなみ「ん?」
わかざいる「お前ってさ、
ちゃんと笑うようになったよな、最近」
こなみ「……なによ、急に」
わかざいる「俺、お前の笑い声、好きやからさ。
……この先、簡単に聞けんようになるの、さみしいなって」
こなみ「……」
(こなみ、ポケットの手紙をぎゅっと握る)
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わかざいる「だから――」
(少し息をのんで、こなみの目をまっすぐ見て)
わかざいる「卒業する前に、言いたかった。
俺、ずっと前からお前のこと、好きやった」
(こなみ、驚いて目を見開く)
わかざいる「いつからって聞かれても、正直わからん。
でも、雨の日も、LINEの夜も、
風邪ひいて寝込んでたお前も、全部――
気づいたら、大事になってた」
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(こなみ、涙こらえながら微笑む)
こなみ「ずるい……こんなん言われたら、
うちも言わんとバランス悪いやん……」
(ポケットから、くしゃっとなった手紙を差し出す)
こなみ「これ、渡すタイミングなくて。
でも、見んでもええわ。うちも、言う」
(目をまっすぐ合わせて)
こなみ「わかざいる、うちもずっと、あんたのこと好きやった」
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(ふたり、静かに見つめ合って――)
わかざいる「なあ、手。繋いでいい?」
こなみ「今さら、ええに決まってるやろ」
(制服の袖越しに、手を重ねる。桜の花びらがふたりのまわりに舞う)
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(ナレーション)
「“またな”って言葉じゃ足りない。
“ありがとう”じゃ伝えきれない。
ふたりの想いは、制服のまま重なった。
ここから先も、きっと――一緒に。」