第10話 クリスマス編:「手が冷たいの、君のせい。」
(夕方・イルミネーションが灯り始めた街)
こなみ「人、多っ。しかもカップルだらけやん……」
わかざいる「そらクリスマスやし」
こなみ「うちら、なんでこんな日に買い出し係になったん?」
わかざいる「知らんがな。サンタの気分で命じられたんやろ」
(ふたり、学校の集まり用にプレゼント交換会のグッズを買い終えて)
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(帰り道・駅までの道)
こなみ「寒っ!手、かじかんできたし」
わかざいる「手袋は?」
こなみ「忘れたんやってば~。見てよこれ。手、赤いやん」
わかざいる「……貸したろか?」
こなみ「……え?」
わかざいる「俺の、片方だけなら。もう片方、俺が我慢すればええし」
こなみ「……それ、付き合ってる人がするやつやん」
わかざいる「じゃあ……仮に、今だけ“付き合ってる風”ってことでどう?」
(こなみ、一瞬固まる)
こなみ「……ほんまに“今だけ”?」
わかざいる「……お前がよければ、ずっとでも」
(ふたり、歩きながら無言で――そっと手をつなぐ)
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こなみ「……なんで手、こんな冷たいん」
わかざいる「お前が温めてくれたらええやん」
こなみ「……ずるっ、ほんま……」
(イルミネーションの光の中、顔が見えないくらい赤くなってるこなみ)
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(駅前・もうすぐバイバイのタイミング)
こなみ「……今日は、ありがとな」
わかざいる「来年のクリスマスは、もうちょいマシなデートにしよか」
こなみ「え、今なんて――」
わかざいる「聞こえたやろ?」
こなみ「……来年の、って……」
(こなみ、小さく笑って)
こなみ「……そのときは、ちゃんと手ぇつなぐ理由、言ってな」
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(ナレーション)
「好きって言葉、まだ出てないのに。
あのとき、ふたりの手が繋がった瞬間――
“恋人”の距離、もうすでにそこにあった。」