表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

オークと呼ばれる俺の人生を救ったのは聖女

作者: りら

※恋愛要素薄いです。


グリーンド村。自然豊かな穏やかな田舎の村だ。この村の特産はリンドュウ。ポーションの材料として使用されることが多い花だが、この村のリンドュウは質がよいと評価され、グリーンドュウという名でブランド化されている。その中でも、竜の雫とも呼ばれる程美しい白いリンドュウは高級品で、それを使ったポーションは王宮騎士団に卸される程だ。しかし、竜の雫は他のリンドュウよりも栽培が難しく、村の花職人の中で選ばれた者が管理者となり徹底的に管理し育てている。


そんな村の村長の息子である俺は、オグリン・グリーンド。村の皆からは「オーク」とか「ゴブリン」とか呼ばれている。


…なにも言わないでほしい。俺だって分かっている。


5歳年上の兄は父に似た温かみのある茶髪にグリーンアイ、母に似て長身でスタイリッシュな容姿端麗な好青年だ。次期村長となる兄は、寮に入り領内で一番大きな学校へ通っている。成績優秀で、学校では生徒会役員も務めてる。休日になると帰宅して、父の仕事を学んだり、父とともに村の見回りや相談会に顔を出したりしている。将来のグリーンド村も安泰だと村の皆から慕われている自慢の兄だ。


それに比べて俺は、父から同じくグリーンアイを引き継いだものの、大柄な体格も受け継ぎ、幼少期はぽっちゃりだった。ここはぽっちゃりといっておく。黒髪黒目の儚げ美人な母から黒髪を受け継いだものの、俺の顔は重ったるく小粒な一重瞼でしかも目つきが悪い。社交的な兄とは反対に性格も内向的で陰気。村長の息子だから表立っては言われないが、兄と比べられ陰で馬鹿にされていた。


俺は次男だから家は継がないけれど、補佐として兄を支えるように幼い頃から言われている。だから、俺も一応同じ勉強をするようにと、もう数年したら兄と同じ学校に通う予定だ。この村のために、この村に住み続けることには特に異論はない。


けれどこんな俺でも一つ夢がある。グリーンドュウの、そして、竜の雫の栽培に関わることだ。ただ、俺がリンドュウ畑に近づくことを村の皆も家族も良しとしていない。昔竜の雫を父と一緒に一度だけ見に行ったことがあるのだが、その後に花が黒斑病にかかったからだ。現実的に言って俺のせいではない。それでも、俺のせいだと村の子ども達が言っていた。その子達の親が言っていたそうだ。

黒斑病にかかるのは原因が分かっているし、過去にも村のリンドュウが患ってしまった年もある。その年は村の収入も激減し、村民の生活に大きな影響が出てしまった。村単体だけでは対応がしきれず、領主にお願いしなんとか事なきを得た。以降、徹底的にリンドュウは管理がなされるようになっていた。大人たちはあの時の苦しみを忘れていない。リンドュウは村の命ともいえる存在だったから。

そして、俺が見に行った年に、よりにもよって竜の雫に黒斑病が発生してしまったことで村民の危機感がかなり高まってしまった。適切な処置により大きな被害は出なかったが、村民からは俺に畑に近づかでないでほしいという要望が多く届き、家族はそれを無下にすることはできなかった。元々村民が俺に対しあまり好意を持ってはいなかったことで、もはや俺はばい菌のように扱われるようになった。


それでも俺はリンドュウが好きだ。

幼いながら、近づけないならば自分で作ればいいと考え、グリーンド家所有の山で、家族には内緒で育てることにした。費用はお小遣いの範囲で、それをほぼすべてつぎ込んだ。花職人たちには聞けないため、図書館で本を読み漁った。土を耕し、内緒で土や肥料を少しずつ買い、土壌をつくるところから苦労した。花の種を手に入れた時はとてもわくわくしたけれど、楽しかった。無事種を植えることができ、そこから芽が出た時はとても嬉しかった。

しかし、初めて植えたリンドュウは、翌年・翌翌年も花が咲くことはなかった。俺の管理のせいで花を咲かせることができず、リンドュウの苗に申し訳ないことをしたと、やはり俺はリンドュウの栽培に関わってはいけないんだと、一人蹲って泣いていた。


そんな時出会ったのが、村の花職人、しかも竜の雫の管理人の一人バーグさんの娘のハンリだった。


「大丈夫?」

「っなんでお前がここにいる!ここはうちの土地だぞっ!」涙をぬぐい口を開いたが、泣かれていたところを見られて恥ずかしかったことと、リンドュウのこんな姿を見せてしまったことへの罪悪感・羞恥心から、つい口調が荒くなってしまった。

「…勝手に入ってきてごめんなさい。私あなたがリンドュウを育てていること前から知っていたの。だから、たまに隠れて見に来ていたの」

「…花が咲かなくて笑いに来たのか。それとも、罵りに来たのか。俺なんかがリンドュウに関わるなって」

「そうじゃないよ!そんなことないよ!あなたはいつも頑張ってたし、リンドュウのことを大切に思って育てていたのも見てた。…よかったら私も一緒に手伝わせてくれない?」

「お前はバークさんの娘で、俺のこと嫌っているだろ」

「嫌ってない!お花のことあんなに大事にする人のこと嫌わないよ!あなたのことちゃんと知らないのにひどいことばかり言っているお父さんたちが悪いんだよ!私も少しだけかもしれないけど力になれると思う!一緒にリンドュウ育てて、みんなをあっと言わせようよ。だから、もう、泣かないで?」

「…バークさんに知られたら…怒られるよ、俺なんかに関わるなって」

「お花のことをこんなに大事にしているあなたを馬鹿にするお父さんなんて嫌い。もちろんちゃんと内緒にするから。一緒にお花咲かせよう?」

「でも…」

「とにかく明日も来るから!またね」


翌日、ハンリは本当に来てくれた。翌々日も。しれから毎日。とうとうハンリに負けて、違う、俺が嬉しくて、ハンリと一緒にリンドュウを育ててみたくなって、うん、と言ってしまった。


それから2人で花が咲かなかった原因を調べ、土を改良したり、水やりや日の当たりかたなど環境改善に勤しんだ。そして、とうとう花が咲いてくれた。可愛らしい青いリンドュウ。感動してまた泣いてしまった。ハンリにたくさんお礼を言った。

翌年から、リンドュウは問題なく花を咲かせてくれるようになり、俺の小さなリンドュウ畑は綺麗に咲き乱れていた。

お花は隣村の薬師のおばあさんに内緒でに卸すようになった。商業ギルドは子供だからと相手にしてくれない人がほとんどだったけれど、一人だけ、君の作るリンドュウを見せたい人がいるとおばあさんを紹介してくれたのだ。おばあさんは気に入ってくれて、そこから良くしてくれる。


ある日、おばあさんにリンドュウの珍しい種が手に入ったよと種だった。どんな花が咲くのか聞くも、内緒と指を唇に当てて教えてくれなかった。けれど、少しだけじめっとしたところで育てるとよいとアドバイスしてくれた。俺とハンリは、ちょうどよさそうな場所を探し種を植えた。植える前に2人で種を手で包みこみ、無事咲きますようにと願って。



話は変わるが、この国には魔族がいる。

最近下級ではあるが魔物の発生による事件や被害が増えてきていた。魔王の誕生の前触れだ、と人々は噂していた。そんな中、勇者が誕生したと大々的に新聞に載っていた。それはなんと、うちの領主様の息子だという。王都にある中央教会で神よりお告げがあったらしい。聖女などに該当する人もお告げがあったらしいが、それは一緒に発表はされていなかった。該当者のところに直接国と教会の人が訪ねて来るらしい。過去の例では、聖女や賢者、剣士も勇者と年回りが近く、勇者が住んでいる場所と比較的近くで育っている人間が多かったらしく、うちの村の大人たちも「もしかしてうちの子が」と浮足経っていた。


数日後、国の役人と教会の聖職者、騎士、そして領主様が来村された。父は彼らと話した後、ハンリとバーグさんを自邸に呼んだ。結論から言うと、ハンリは聖女だった。魔王復活に備え修行をするため、王都に来てほしいと依頼されたようだ。依頼という体にはなっていいるが、正直平民であるハンリには拒否権はない。出発は1週間後。村は王都から数日かかる程遠いため、国の役人達はこのまま出発までうちに滞在することになった。


翌朝、まだ日のあがらないうちに俺は山に来ていた。一週間後にはハンリは村を出て行ってしまう。その準備で忙しく、国の役人達もいるため、もうここには来られないだろう。聖女となるからには、もう俺とは遠い存在になる。もう二度と会えないかもしれない。そもそも魔王が復活したら、ハンリは危険な旅に出なくてはならない。俺はハンリにいろんなことをしてもらったのに、支えてもらって、一緒に楽しい時間を過ごせて、リンドュウを育てられられて。俺はハンリに何も返ていない。このままハンリとお別れになるのか。そんなことを考えていると朝日が昇り、それに照らされた信じられないものが目に映りこんだ。



とうとうハンリがくぱする日。村人総出でハンリを見送る。ハンリは純白のドレスを着て、「国のために力を尽くしてきます」と挨拶し馬車に乗り込もうとしていた。


「ハンリっ!」

俺は人目もはばからずハンリを呼んだ。役人達の目は厳しい。村人も何事だと俺を見ている。


「何者だ。無礼者!」

「申し訳ありません。私はグリーンド村長の次男オグリンと申します。ハンリ、いえ、ハンリ様に、これを渡したくて…」

厳しい顔を向けて近付こうとする役人をハンリが止める。

「止まってください!オグリン、旅立つ前にあなたに会えてよかった!あなたに挨拶ができていなかったこと心残りだったの…」

「オグリンだと、あの豚がなんであんなに」村人は驚いている。それはそうだ。あまり村人たちと関わりを持っていなかった俺は、花の栽培に関わっているうちに身体が鍛えられ、ぽっちゃりした体格はそれなりに引き締まっていた。兄のように細身ではないが、毎日の山登りや重労働のため、身体が鍛えられたのだ。残念なのは、顔が怖いのは変わりがないので威圧感が増したことだ。役人達も怪しい奴を見る目で俺を見ている。騎士なんて今すぐにでも俺に切りかかりそうだった。


「ハンリ様にどうしてもお礼を言いたくて参りました。これを受け取ってもらえませんか」そう言って、箱をハンリに渡す。「これは…」箱を開くと、ハンリは目を見開いた。中身は、淡いピンク色の小柄なリンドュウのピアスだった。


そう、一週間前俺が見つけたのはそのリンドュウだった。急いで隣町の工房に行ってアクセサリーへの加工をお願いしたのだ。出発日の朝ぎりぎりで受け取れ、無事間に合うことができた。村人も「あれはなんだ?」「アクセサリー?」「リンドュウに似ているけど何の花だ?」とざわざわしている。


「これ…もしかしてあのリンドュウ?!」

「はい、1週間前に咲きました。本当は咲いているところをお見せしたかったのですが叶わないと思い、勝手ながらピアスに加工させていただきました。このリンドュウが咲いたのは、私がリンドュウに関わることができたのはあなたのおかげです」

「いえ、あなたの努力のたまものよ。それにしても、あの不思議な種の花が咲いてくれたなんて…嬉しい。ずっと大切にする」涙を垂らし、その場でピアスを付けてくれた。

「オグリン、私、村に必ず戻ってくる。だから、待っていてほしいの。私、私ね、あなたのことがずっと」「ハンリ様、ハンリ様は私にとって一番大切な方です。…村のことは、父に、兄に、そして微力ながら私に任せてください!ハンリ様は、聖女として…王都で頑張ってください。そして、必ず、必ず幸せになってください」

「…。オグリン、私あなたのこと一生忘れない。ありがとう」

そう言って、馬車に乗る前にハンリは笑顔を向けてくれた。馬車に乗り王都へ向かう。馬車が見えなくなるまで俺は見送った。彼女の無事を祈って。…と言いたいが内心は、告白されると思ったとバクバクしていた。俺の思い違いかもしれないけど、そうかもと思ったら、ハンリの話を遮ってしまった。そうだったらすっごく嬉しいけど、聖女となるハンリの邪魔には、足枷には絶対になりたくないから。



ハンリ達が去った後、「オグリン、先ほどのリンドュウは?」と声をかけられた。村長である父だった。


「リンドュウに関わるなと言われていたのに大変申し訳ありません。どうしてもリンドュウに関わっていたくて、裏山で育てていました。咲いた花は隣村の薬師の方へ個人的に卸していました。その方から頂いた種から咲いたのが先ほどのリンドュウです。ハンリは一人育てている俺を見て手伝ってくれて、力を貸してくれて、一緒に花を育ててくれました。ハンリのおかげで咲いてくれました。これからも皆様のリンドュウ栽培の邪魔は致しません。村の損益になるようなことは致しません。どうか、裏山での栽培を許していただけませんでしょうか」土下座して父に、村のみんなに謝罪する。


「あいつは花を病気にさせたやつだぞ」「あんな可愛らしいリンドュウをあいつが育てたなんて信じられない」「ハンナはバーグさんの子だからな。だから咲かせられたんだ」「オーグのくせにハンナをこき使っていたのか」「あいつがそのまま育てたら、また病気を連れてきて村のリンドュウも…」そんな声がひそひそと聞こえてくる。


「畑を見せてくれないか」そう言ったのはバーグさんだった。


「私は竜の雫の管理人だ。リンドュウのことは知り尽くしている。リンドュウは基本的に春には咲かない花だ。けれど、今君のところでは咲いているという。ハンナの力を借りていたと言っても、ハンナに詳しく栽培の仕方のことを教えたことはないし、畑を見ればある程度のことは判断できる。村長、どうでしょうか」


「あぁ、私も畑を見たい。特に、先ほどのリンドュウが咲いているところを」


「父上、私もご一緒させてください」


「…ご案内します」


「村の皆、私から後で話をしよう。今日はハンナの門出の日だ。今日一日ハンナのためにも、皆には心穏やかに過ごしてほしい」

バーグさんが言うなら、と皆散り散りと去っていった。


俺は、父と兄、バーグさんを裏山に案内する。何を言われるのだろうか、やはり反対されるのだろうか。子供のままごとだと馬鹿にされるかもしれない。不安な気持ちで胸が苦しくなる。2人とも無言で俺についてきており、それも緊張感を高めさせる。


「この先です」そう言うと、足が止まってしまった。怖くて前に進めない。「どうぞ」といい、先を促すと、2人は足をすすめた。

前がみられない。2人の方を、反応を見たくない。怖い。顔をあ経られず、足元に目を落としたまま。図体ばかりがでかくて、相変わらず気持ちが小さい。時間が止まったようにと気が長く感じる。


「オグリン君」気付くと、バーグさんが目の前にいた。


「素晴らしい畑だよ。日当たり良好で風通しもよく立地的に素晴らしい。しかし、それだけではない。土もよく管理されているし、この場所では水やりも大変だっただろう。よく勉強し、毎日の管理を徹底したのだと思う。あのピンクのリンドュウは他のリンドュウとは違って一つの茎から一つの花が咲くようだね。小柄だが生命力を感じるよい花だった。あのリンドュウがポーションの材料としてどうなるかも気になる。君が卸していたという薬師の方に私もぜひ会わせてもらえないか」


「…俺はリンドュウを育ててもいいということですか」


「ああ。私が君の実力を保証する。花へ対する誠意を感じられた畑だった。村の皆を説得しよう。というよりも、一緒にリンドュウ栽培に取り組んでいかないか。」


「本当ですか」


「ああ」


「あ、でも父さんは…」


「私が頼りないばかりでお前には肩身の狭い思いをさせて申し訳なかった。バーグさんがそういうんだ。しっかりリンドュウを育てるように」


「ありがとうございます!!」


俺はしばらく泣いてしまい動けなかった。兄が俺の背中をさすってくれた。後から聞いたが兄は俺の行動を知っていたらしいが他の家族には内緒にしうまく立ち回ってくれていたそうだ。兄には感謝しかない。お礼を伝えると、「良いことを思い付いたからむしろこっちがお礼を言いたい気分だよ」と言って笑っていた。


バーグさんのおかげで村の皆も俺の畑を見にきてくれ、次第に受け入れてもらえるようになった。もう俺をオークだのゴブリンだの言う人はいない。


2年後、俺は学校に通うため入寮した。土日は自宅に帰り畑に行っているが、平日は村のみんなが管理してくれている。

今でも俺は隣の村の薬師のおばあさんに花を卸している。今さらだが、おばあさんの作るポーションはとても有名らしい。効力もだが、おばあさんは花を厳しく選ぶことでも有名らしい。そんな方に卸させてもらっていたなんてと今更恐縮していると、おばあさんはゲラゲラ笑っていた。また、おばあさんは、どこから貰ってくるのかたまに新しい種をくれる。先日もらった種は秋から冬にかけて開花し、垂れ下がった枝から白い花が咲いてくれた。うまくいけば村で、春、夏、秋、冬と一年中リンドュウを育てられることになる。そうすれば、村のリンドュウ生産がより安定するだろう。


ちなみにあのピンク色のリンドュウは愛の雫と呼ばれるようになり、アクセサリー類が大人気となった。村長見習いである兄が主導して、リンドュウをポーションだけではなく装飾品へ加工し販売する事業を立ち上げた。リンドュウを加工したものだけではなく、生花をそのままアクセサリーとして加工する技術も開発したことで、リンドュウの花の魅力をぐっと伝えられるアクセサリーは村の特産の一つとなった。他にも、香水やハーバリウム、ドライフラワーなどの商品もあり、顧客ターゲット層を若年層にも広げることができた。ご貴族様の間でも評判になってくれているらしい。




今日はハンナの結婚式。お相手は勇者であり、領主様のご子息だ。村として、お花をたくさん献上させて頂いた。花嫁のベールはハンナの母親の手作りだ。もちろんリンドュウが刺繍されている。俺は遠くからしかお姿を拝見できなかったが、ハンナは美しく、それでいて可憐で、とても幸せそうな笑顔だったと思う。

勇者様は次男のため家は継がないが、騎士として生計を立てるらしい。王都での修行を一緒に乗り越え仲が深まったと、貴族と平民の真実の愛だと、新聞に大体的に載っていた。そうはいっても、貴族社会に聖女とはいえ平民が足を踏み入れることは簡単なことではないだろう。村としても、もっと領に国に貢献して、少しでもハンナの後押しができればと思っている。



ところで魔王との戦いはというと、起きなかったというか起こらなかった。

「テンセイしたら魔王だったので和平交渉を望みます」と魔王が直々に王のもとに来たらしい。急な来訪で王都は大騒ぎになっていたとこれも新聞一面に載っていた。無事和平交渉は整ったそうだ。ちなみに「テンセイ」とは、別に世界で生きていたものが亡くなって、この世界に以前の人生の記憶を持ったまま生まれ変わった、ということらしい。この世にはなんと不思議なことがあるものだ。



そして来週から俺はついに念願の竜の雫の栽培に携われることとなった。バーグさんの弟子として。

これもすべてハンナのおかげだ。ハンナがいたから俺はここまでこれた。ハンナに出会えなかったら、今の俺はいないだろう。

村の誰にも言うつもりもないがハンナは初恋の女の子だ。このことは墓場まで持っていく。兄やバーグさんは気づいていたと思う。あの時、ハンナの言葉を遮ってなければもしかしたらハンナは村に帰ってきて俺と…と思わないわけでもない。今でもハンナ以上に人を好きになった人はいないし。でも、後悔はない。ハンナには絶対に幸せになってほしいから。こうやって、すてきな旦那様に会えたのだから。



ハンナに永遠の感謝を込めて。ハンナとともに過ごした時間を糧に、生涯をリンドュウのために。



リンドウを元にしましたが、あくまでリンドュウで、リンドウと間違って書いたわけではありません。悪しからず。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ